成長企業の経営戦略
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鋳物・ダイカスト加工からギヤ・組立まで 量産技術を武器に「提案型ものづくり」へ
株式会社シンセラ
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鋳物加工、アルミ加工、ギヤ・シャフト、ギヤボックス、さらにはパワーツールの組立まで。株式会社シンセラは、産業機器や建設機械、自動車、船舶など、幅広い分野のものづくりを支える加工メーカーである。現在の主力は、鋳物をはじめとする素形材の切削加工だ。鉄、アルミ、ステンレスなどさまざまな材質を扱い、顧客から提供された図面をもとに部品を製作している。長年培ってきた鋳物・ダイカスト加工の技術に加え、ギヤ・シャフトの製作からギヤボックスの組立まで対応できることも同社の特徴だ。そして現在は、構想や治具設計にも踏み込み、「依頼されたものを作る」だけではない提案型のものづくりへと進化しようとしている。代表取締役社長の廣瀬彰氏に、同社の事業の成り立ちや加工技術、今後の展望について伺った。
鋳物・ダイカスト加工を支える治具設計と量産技術
同社が事業の中心としている鋳物やダイカストなどの素形材加工では、ワークをどのように固定するかが加工精度を左右する。特に異形状のワークでは、クランプ方法が適切でなければ加工中に変形し、加工終了後に歪みが生じることもある。そのため重要となるのが、製品に合わせた治具設計だ。「異形材、素形材の加工では、治具設計の部分が大きい」と廣瀬社長は話す。同社では、専用治具や簡易治具を活用し、ワークを確実に固定しながら変形を抑える加工方法を構築している。作業者個人の経験だけに頼るのではなく、加工ノウハウを治具や標準類に反映することで、誰が加工しても安定した品質を実現できるものづくりを目指している。さらに、量産の中で精度を維持するため、素材、設備、工具、温度なども細かく管理する。例えばアルミの大型部品では、加工前に素材を一定の温度帯に置くことで、熱膨張による寸法変化を抑えている。また、新しい加工設備が備える熱変位補正機能なども活用し、安定した寸法精度の維持につなげている。

工場には多様な加工設備を備え、一部の加工設備は24時間稼働している。現在、数量が最も多いハウジング部品では、類似形状の複数モデルを合わせて月産4万~5万個規模を生産している。

一方で、月に数十個程度を生産する案件や、量産終了後の補修部品などにも対応している。数十個単位から月産数万個規模まで、幅広い数量に対応する。製品の形状や数量に応じて設備や治具、加工方法を組み合わせられることが、同社の生産対応力につながっている。



現在は治具の構想・設計を担う技術部門の強化も進めている。特に、中量産品に適した治具を自社で構想・設計・製作する取り組みを始めており、すでに受注につながった案件も生まれているという。
パワーツール製造で培った、ギヤ・ギヤボックスの一貫生産
鋳物加工を主力とする一方、同社はギヤ・シャフトの製作からギヤボックス、パワーツールの組立まで手掛けている。その背景には、リョービの子会社が手掛けていたパワーツールの製造・組立に携わってきた歴史がある。パワーツール製造で培った加工・組立技術を受け継ぎ、現在ではギヤ・シャフトの製作からギヤボックスの部品加工・組立まで一貫して手掛けている。その強みが発揮された一例が、広島県の食品機械メーカー向けギヤボックスである。相談を受けた同社は、ギヤを社内で製作し、組立・評価まで行える体制を生かして改善を検討した。自社で製作した部品を自社で組み立て、その評価結果を設計へフィードバックすることで、コスト低減と長寿命化につなげた。現在も継続して生産しているという。加工と組立を一社で担い、設計へのフィードバックまで行えることが、納期やコスト、品質面での提案力につながっている。


日本スーパー工業との資本提携を機に、組織と技術を強化
2023年、同社は日本スーパー工業株式会社と資本提携した。背景にあったのは、将来にわたり事業を継続・拡大していくための経営基盤づくりである。現在も両社はそれぞれ異なる顧客を持ち、同社として独立した事業運営を続けている。一方、グループ企業が受注した案件のうち、加工先の確保が難しいものを同社が担うなど、グループ内での連携も生まれている。廣瀬社長は、資本提携によって一気に会社が変わったわけではないとしながらも、ものづくりに対する考え方や管理体制について「徐々に変化をつけている」と語る。

技術部門の組織化も、その取り組みの一つだ。これまで各製造部門で担ってきた治具の構想・設計を組織的に強化し、自社から技術提案できる体制づくりを進めている。また、ここ1~2年では設備保全課を整備し、現在は3名体制で多数の加工設備の維持・保守管理を行っている。設備の安定稼働を図り、継続的な生産を支える体制も強化している。
「受け身」から提案型へ。鋳物加工の新たな顧客を開拓
「以前は、受け身の受注が多かった」と廣瀬社長は振り返る。これまで顧客から求められた仕事に対応してきた同社だが、今後は自社が主導して構想や治具設計から携わり、その技術的な価値まで含めて提案することで、新たな顧客の開拓につなげていく考えだ。その中で、今後も大きな強みとして生かしていくのが、長年培ってきた鋳物・ダイカスト加工と安定した生産技術である。完成した図面を受け取って加工するだけでなく、設計・開発段階から相談を受ければ、取引のある鋳物メーカーと連携し、材料調達を含めた提案も可能だ。また、ギヤ・ギヤボックスでは、部品加工から組立までを一貫して担える体制を生かした提案ができる。


こうした自社の強みを新たな顧客にも知ってもらうため、2026年からは展示会や商談会への参加も本格化した。10月14~16日には福岡で開催される「ものづくりフェア」へ出展予定で、鋳物・ダイカスト加工やギヤ・ギヤボックスなど、新たな案件との出会いにつなげていく。
同時に、技術部門の組織化や設備保全体制の強化を進めるなかで、新たな人材の採用・育成にも力を入れている。廣瀬社長は、給与や福利厚生を含め、求職者から「入りたい」と思ってもらえる会社を目指したいと語る。既存の顧客を大切にしながら、新しい顧客と仕事を開拓し、そこで生まれた利益を従業員や会社へ還元していく。
鋳物・ダイカスト加工で培ってきた生産技術、多様な設備、ギヤから組立まで担える一貫生産体制、そして強化を進める治具設計と技術提案力。それらを生かし、シンセラは「受け身」のものづくりから、自ら価値を提案するものづくりへと歩みを進めている。
