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【第1回】研究者が徹底解説・表面処理のポイント 〜産総研に聞く、表面改質・分析・薄膜の最前線〜

【第1回】研究者が徹底解説・表面処理のポイント 〜産総研に聞く、表面改質・分析・薄膜の最前線〜

掲載企業国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研:AIST)

普段我々が何気なく口にする「表面処理」という言葉には、実に様々な要素が含まれている。例えば洗浄や表面改質処理、そしてコーティングなどだ。これらの技術は製造における利用場面だけでなく、それぞれの役割や処理におけるポイントまで、すべて異なる。つまり、一口に「表面処理」と言っても、それを分解するとかなり奥深い世界が広がっているのだ。 

そこで今回の連載記事では、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研:AIST)の田嶌氏、田中氏にご協力いただき、「表面改質とは?薄膜形成とは?」という技術の基本から「これらの技術を活用することでできること」に至るまで幅広くレクチャーをいただいた。「表面処理」の中に含まれる、表面改質やコーティングとは、いったい何のために行うのだろうか。そして、表面処理に関連して、産総研ではどのような基礎研究やアプリケーション開発を行っているのだろうか。全4回の記事でご紹介する。

 

【この連載でわかること】

第1回】表面処理・表面改質とは? —表面処理の基本概念と表面改質 

第1回となる今回は「表面処理とは何か?」という点について、最前線で活躍する研究者に詳しく伺った内容を元にご紹介する。 

接合・接着特集の記事でもご協力いただいた田嶌氏だが、実は同氏の研究者としての専門領域は「機能性薄膜」だ。産総研入所以来20年以上にわたって、この機能性薄膜や薄膜形成プロセス、そして薄膜形成に必要不可欠となる表面改質、表面分析など、表面処理にまつわる各種テーマについて様々な研究を行ってきた。 

産総研「材料基盤研究部門」の研究体制   
〜AI・ロボット活用の研究DXとは〜 

同氏の所属する材料基盤研究部門(CTMI)には7つの研究グループがある。同氏が研究グループ長を務める「接着・界面研究グループ」の主な研究テーマの1つは接着だが、高品質な接着を実現するためには「界面で何が起きているか」を正確に捉えることや、「狙った界面状態を作り出す」ことが必要不可欠となる。そして、材料表面の上に新たな層を形成するという点で接着と近しい薄膜やコーティングについても、全く同じ考え方ができるといえる。ゆえに表面処理に関する領域も同グループの取り扱う内容となるのだ。 
 

このような研究テーマに対して産総研では、国内トップクラスの最新設備(詳しくは後述)と、協働ロボットやAIを活用した自動実験設備、さらにそれらによって収集したビッグデータを駆使したデータ駆動型研究を組み合わせることで効率的な研究を行っている。日々登場する新素材や新たな接着・表面処理・表面改質、さらにはメカニズム解析・高度分析に関する多様なニーズに対してすばやく課題解決を行い、社会実装を加速させることが産総研の大きな使命だ。

表面処理とは?  
〜表面処理の基本概念と「表面改質」について〜 

表面処理とは? ―その目的と、「表面にだけ効果を与える」という大きな特徴 

まず、表面処理を行う目的とは何なのだろうか。田嶌氏は「材料の表面特性を最適化し、性能や品質、寿命を向上させるのが表面処理・表面改質の目的と言えます」と説明する。表面処理には機械強度向上、接着性・密着性・濡れ性向上、表面への機能付与(撥水性・絶縁性・滑り性など)、外観品質の向上など様々な目的が存在し、目的に応じて最適な手段は異なる。 

いずれにも共通しているポイントは「材料そのもの全体ではなく、ごくごく表面にだけ」効果を与えるという点だ。これが表面処理の大きな特徴といえる。つまり、最適な表面処理を行うことができれば、材料や設計を大きく見直さずとも、後工程の品質向上や新たな機能付加が実現できるのだ。 

表面処理と表面改質の違いとは? ―目的とする機能や性能が発現・向上した状態が「表面改質」 

「表面処理」は大きく分けて、コーティング・メッキなどの「表面被覆(薄膜形成など)」と、プラズマ処理、UV/O₃処理、熱処理、ショットピーニングなどの「表面改質処理」に分類される。この記事では、表面処理を「目的を達成するための手段・プロセス」として扱い、材料表面に何らかの処理を施し、目的とする機能や性能を付与・向上させるための技術全般を「表面処理」と呼ぶ。 

めっき、塗装、蒸着、スパッタリングなどによる薄膜形成やコーティングは、材料表面に新たな層や機能膜を形成することで所望の機能を付与する表面処理方法である。一方、洗浄・脱脂、プラズマ処理やUV/O₃処理、ショットピーニングなどのように、材料表面そのものの性質を変化させるものも、また表面処理の一つである。つまり、「表面処理」の中には「表面被覆(薄膜形成など)」と「表面改質処理」のどちらも含まれるのだ。 

一方、「表面改質」とは、これらの表面処理によって材料表面の化学的・物理的性質が変化し、目的とする機能や性能が発現・向上した「状態」を指す。例えば、プラズマ処理やUV/O₃処理では、表面の有機汚染物質が除去されるとともに、酸素含有官能基の導入などによって表面エネルギーや濡れ性が向上し、接着性や塗装密着性が改善される。また、ショットピーニングやブラスト処理では、表面の微細構造や残留応力状態が変化することで疲労強度や耐久性が向上するほか、ブラスト処理では微細な凹凸形成によるアンカー効果によって密着性が向上する場合もある。このように、表面処理が「手段・プロセス」であるのに対し、表面改質は「その結果として得られる表面特性や機能の変化」を表す点が大きな違いである。 

なお、薄膜形成・コーティング、表面改質ともに実際の現場における事例については本特集の各記事で詳しく述べてあるので、そちらもご覧いただきたい。(特集過去記事の一覧) 

まとめ:表面処理の目的 

表面処理とは「材料表面だけ」処理を施すことで、性能・品質・寿命を高める技術だ。そして表面処理を大きく分けると、めっきやコーティングなどのように表面に新たな層を形成して機能を付与する「表面被覆(薄膜形成)」と、プラズマ処理や熱処理、ショットピーニングに代表される表面そのものの化学的・物理的性質を変化させる「表面改質処理」に分類される。 

それぞれの手法における特性と役割を理解し最適な表面処理ができれば、材料や設計を大きく見直さずとも、後工程(塗装・接着)の品質向上や耐食性・耐摩耗性・接着性などの新たな新機能の付与・向上が実現できる。 

  • 表面処理の目的 = 「表面特性を最適化し、性能・品質・寿命を向上させる」 
  • 最大の特徴 = 「材料表面だけ」に機能を付与する(材料や設計の大幅変更が不要) 
  • 産総研材料基盤研究部門「接着・界面研究グループ」では接着・表面処理・界面の定量把握まで横断的に研究 
  • 国内トップクラスの設備+研究DX(AI・ロボット)で新素材に素早く対応 

 

次回の記事では、表面改質のポイントと最適なプロセスの選び方について実際の実験を交えながら詳しくご紹介する。(第2回記事はこちら)

掲載会社情報

国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研:AIST)

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