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ファイバーとクロスフローの両翼展開で、板金加工自動化やDXも実現

ファイバーとクロスフローの両翼展開で、板金加工自動化やDXも実現

三菱電機株式会社
FA システム事業本部 産業メカトロニクス事業部 事業部長 田代 勝 氏

掲載企業三菱電機株式会社

主要3品目
  • 板金レーザ加工機
  • 放電加工機
  • 数値制御装置
従業員数
14 万 9655 人(連結)
年間売上高
5兆36億940万円(連結)

 レーザー加工機メーカーブランド「MELLASER」を展開する三菱電機株式会社は 2022年、同社レーザー加工機における新戦略「GX-F Ever-next Strategy」を発表。同社 2 次元レーザー加工機におけるフラッグシップモデル「GX-F」シリーズにおける新しい取り組みであり、装置導入後においても日々開発されリリースされるソフトウェアやハードウェアのアップデート実装に対応していく。従来は装置本体を買い替えるしか術がなかった最新機能アップデートが、それをせずにかなうようになるという加工機業界としても画期的な取り組みだ。そして 2024 年 2 月、満を持して、GX-F Ever-next Strategy を標準としたファイバーレーザー加工機「GX-F シリーズ 2024 モデル」をリリースした。

ファイバーも クロスフローも、そしてDXも ※クロスフロー:CO2 レーザー、同社独自のビーム発振構造

 三菱電機のMELLASERは、二次元および三次元レーザー加工機、自動化システム、CAD/CAMシステムなど幅広く展開する。加工機内キーコンポーネンツが内製であって、レーザー発振器や数値制御装置にいたるまで自社開発するなど、総合電機メーカーならではの利点を生かしていることが特色だ。
 同社のレーザー加工機の歴史は約45年におよび、1979年に日本で初めてクロスフローレーザー加工機を製品化。2012 年 からは、同 社 初となるファイバーレーザー方式による二次元レーザー加工機 「NX-F」シリーズをリリース。それ以降は、ファイバーレーザー方式の新機種を積極的に市場投入してきた。

 「とまらない加工機」をうたう、三菱電機におけるレーザー加工技術を全集約したファイバー方式二次元レーザー加工機「GX-F」は、自社開発のファイバーレーザー発振器や、連続加工、高信頼性を導くAIアシスト(※)などを搭載する。国内外で定評があるGX-Fではあるが、環境問題対応や積極的な自動化推進などを背景に「欧米市場ではファイバーレーザー方式であるGX-Fが中心」と三菱電機株式会社 FAシステム事業本部 産業メカトロニクス事業部の事業部長である田代勝氏は述べる。

 G X – F に お け る 発 振 器 出 力 は 現 在、12kWが最大であるが、「今後は16kWや20kWの機種をリリース予定。2023年9月にアメリカ・シカゴで開催されたFABTECH 2023では、GX-F シリーズの20kWモデルを参考出品した」と今後の新製品の開発状況について明かした。20kWの機種を含むGX-Fシリーズでは、窒素ガスのみの切断に比べ高い加工品質を確保しながら同等の加工速度を実現する、また窒素ガス消費量を大幅削減し、ランニングコストも低減できる技術を搭載する。

 三菱電機においてはクロスフローの開発は今後も基本的に継続する方針だ。その理由について、「日本国内市場のニーズも強く、我々の独自技術を発揮していることと、クロスフローではないと切断できないものもあるため」と田代氏は述べる。「特に国内ユーザーは加工品質に厳しく、当社のクロスフローレーザー技術もその品質を評価していただいてきた面がある」という。

 三菱独自開発のクロスフローレーザー発振器搭載の二次元レーザー加工機の主力モデルで、特に日本ユーザーに根強い人気なのが「HV2-R」シリーズである。

 「日本国内の工場は敷地も限られていることから、省スペースで、操作性、多様な加工に対応できる加工機が望まれる傾向」(田代氏)。薄板から厚板まで、箱物やパイプ加工など、多種多様な材料や加工に対応。調整作業は自動化されており、段取りから加工まで効率よく行うことが可能だ。また窒素切断時の加工ガス消費量削減など省エネや環境配慮面にもしっかり取り組んでいる。

DX や自動化のニーズへの対応

 「レーザー加工機の自動化へのニーズは、日欧米市場を中心に徐々に増加している」と田代氏。三菱電機は2018年に仕分け装置を開発していたスイスのA S T E S4を買収し、完全子会社化。ASTES4は、レーザー加工機と連携することで、材料搬入からレーザー加工(切断)、端材の搬出、部品仕分けまでの一連の生産工程を自動化できる。新型レーザー加工機とASTES4とで自動作業する場合、従来機で仕分け作業を人が行う場合と比較をすると、トータル加工時間で約60%削減可能だ(同社比)。
 さらに三菱電機が提供する加工機リモートサービス「iQ Care Remote4U」を活用すれば、GX-Fシリーズでは発振器のリモート稼働監視や予防保全までが可能。板金DXに対応する機能も万全だ。

インフラ建設関連向け中厚板分野に注力

 今後、三菱電機のMELLASERでは、「中厚板・厚板領域に対応する加工機に、注力していく計画。高出力化や新大形ファイバーレーザー加工機機にも積極的に取り組む」と田代氏。現行の光走査方式の二次元レーザー加工機「XL-F」シリーズについては、GX-Fシリーズで培った高信頼性と最新技術でファイバーレーザー大形加工機のリニューアルを計画。高出力発振器、最新制御装置、AI技術を搭載し、厚板切断性能および加工安定性を実現する。

 「今はマーケティングが非常に難しい時代であるが、今後も建機、造船、建材・橋梁などインフラに関連する鋼材業で国内生産のメリットがあることは変わらないと見ている」(田代氏)。同社が提案する大形レーザー加工機では、例えば「5×10サイズの材料を並べて作業できる利点がある。さらに厚板切断技術のMz-Powerでは加工安定性や歩留まり向上などのユーザーメリットに貢献できる」と言い、今後の市場拡大を視野に入れて新機種を計画していく方針だ。

※三菱電機の AI 技術「Maisart」により、加工中の音と光から AI が加工状態を判断し、AI によるレーザー加工条件を自動調整する機能。

レーザー加工事例:密閉性の高い加工エリアにより作業者への粉塵曝露、工場雰囲気の改善に貢献

掲載会社情報

三菱電機株式会社

三菱電機株式会社

所在地
〒100-0005 東京都千代田区丸の内 2-7-3
TEL
08024556097

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