「挑戦する製造業」が見る頂上・スマートファクトリーを目指す技術

ドイツの板金加工機メーカーである TRUMPF（トルンプ）は創業 100 年を超え、さらにその日本法人であるトルンプ株式会社も設立 46 年目を過ぎた。長年にわたり主力であった板金加工機の他、近年は半導体製造装置向けプラズマジェネレーター事業も好調だ。日本法人では、半導体生産の加速需要を見込み、仙台市に同社における新しい大型拠点となる「宮城テクニカルセンター」も開業。トルンプ本社においては日本市場を重要視しており、このような大規模な拠点もその顕れの一部である――

　トルンプの板金加工機は特殊で複雑な曲げ加工やパイプ加工、パンチングに強く、さらにパンチングとレーザーの複合加工設備、自動溶接設備なども提供する。同社はレーザー発振器も独自開発しており、かつそれを外部企業に販売もしているが、それも国内市場において売り上げを伸ばしている。

　板金関連だけではなく、同社レーザーの技術を活かした粉末床溶融結合によるアディティブマニュファクチュアリング（AM）製品も有する。このような一メーカーとしての立ち回りの他、スマートファクトリー化関連のコンサルティングなど提供サービスは幅広い。

高付加価値で勝負する現場で活躍するトルンプ

　トルンプの板金加工機は「エッジが効いている」ともいえる数々の機能を有し、ミッドレンジ～ハイエンド板金加工設備を強みとしてきた。ユーザー企業には、「同業他社との差別化を図るべく、加工速度および精度などを突き詰めつつ、高付加価値な領域で勝負している板金企業が目立つ」とトルンプ 代表取締役社長 高梨 真二郎氏は話す。

　同社の 2 次元レーザー加工機の新機種「TruLaser 5030／5040／5060 fiber」は最大24kW のレーザー出力で、複雑な形状カットを高速かつ高精度に行える。最大 60mmの軟鋼やステンレス鋼に対応し、かつその切断速度は従来機種比で約 2 倍。さらに窒素消費量は同比 70％以上節約できる。

　もう 1 つ新製品である、パネルベンディングマシン「TruBend Center 7020」は、曲げ加工時のワークの回転から位置決めまで全自動かつリモートで実施。産業機器の筐体などにおける長尺モノの連続曲げ加工時の作業性を向上させるとともに、安全性も高められる。特に、これからますます需要が増えるだろう配電盤生産の現場 等での活躍に期待できる。

　2022 年リリースのアーク溶接装置「TruArc Weld 1000」およびファイバーレーザー溶接機「TruLaser Weld 1000」は、協働ロボットと自動作業ができる。こちらはロボットの専門知識要らずでティーチングが可能で、担当者がセッティングすれば、あとは自動で作業が行えることが特色だ。安全性にも配慮されており、従来のような危険を伴わずに溶接作業を行える。

「挑戦する製造業」と共に

　こうしたトルンプ製品を駆使すれば完全無人化されたスマートファクトリーまで実現可能である。しかし、いきなり完全スマートファクトリー化を図るのではなく、省人化、半自動化と、企業のおかれる状況やニーズに応じて選べるソリューションを準備していることもトルンプの特色だ。トルンプユーザーにおいては、省人化や無人化への関心が高く、機器導入時にその準備を始めている企業が目立つ。

　先の自動溶接ロボットシステムの件は大手企業の現場の話などではない。人手不足に悩む中小企業の溶接加工現場で導入されている。

　「当社は、マシン単体としての機能・性能を訴求するのみではなく、近年の市場において求められている、デジタル化や省人化、無人化といった課題を解決するためのソリューション提案を行っている。常設のショールームで、実機を見ていただきながら説明する機会を多く設けるようにしている。ぜひ気軽にトルンプに声をかけていただいて、相談していただきたい」と高梨氏。トルンプはわれわれ「挑戦する製造業」の心強い味方だ。