業界特別企画
公開日: / 最終更新日:
「自動化は、品質が安定して初めて成り立つ」 | BUNRIの精密濾過フィルターコンベア「BAL」が支える、航空機エンジンの重要部品製造
BUNRI導入事例:株式会社ウラノ 長崎工場
掲載企業
航空機エンジン部品と半導体部品の精密加工を手掛ける株式会社ウラノ 長崎工場。同社の「稼ぎ頭」とも言える主力設備が、複数台を1台の搬送ロボットが結ぶ、24時間稼働の自動化ライン2本だ。
だが、その足元では長らく「クーラントタンクの清掃」が生産を止め続けていた。解決の切り札となったのが、ブンリの精密濾過フィルターコンベア「BAL」。高い濾過性能によってコンベアのメンテナンスそのものを無くし、従来設備比で97%という費用削減効果を実現した「BAL」の実力とは、一体どのようなものなのか。装置の導入を決断した岸川氏と、実際に現場で運用する黒川氏に話を伺った。
◇導入以前の状況と、導入に至った背景
1台を掃除するために、複数台も止める
—ロボット自動化ラインの生産効率アップを阻んでいた「クーラントタンク清掃」
同社長崎工場の自動化ラインは2本。先に立ち上がった第1ラインのクーラントコンベアには同じくブンリ製の「ローリングフィルターコンベア SAL」が導入されていた。「SALの特性と我々が作るアイテムの材質・切削条件がマッチしなかったのだと思います。濾過後のクーラントが入るクリーン槽側にスラッジ(切粉の残留物)やスカム(ヘドロ状の汚れ)が混入していました」と黒川氏は当時を振り返る。
対策として大小2つのフィルタを追設したが、いずれもすぐに詰まった。その度に、1回30分ほどかかる交換作業を行い、これが大小それぞれ月に9回、18回。交換にかかる人件費とフィルター代を合わせると、決して小さくない出費だった。
次に打った手はクーラントタンクの清掃だった。「タンク内のスラッジやスカムをあらかじめ吸引し、フィルタの交換頻度を減らそうとしました。しかし、1回20分以上かかる作業を5〜6時間に1回行う必要がありました」と岸川氏。自動化ラインは24時間稼働のため、1台あたり1日に平均3回の作業が発生。汚れたクーラントの清掃には手間がかかり、現場の作業者からの不満も大きかったという。「人工ベースで考えると、吸い取りのためにラインに作業者1人を雇っている状況でした」。
さらに生産効率低下に拍車をかけたのが、量産に特化したライン構成だ。「複数台のマシニングセンタにワークを搬送するため、1台のタンクを清掃するだけでもロボットを止める必要がありました」と黒川氏。ロボットが止まれば、複数台でも加工済みワークの取り出しと段取りができない。この状況が複数台それぞれのタンク清掃のたびに発生することで、ラインがフルパワーで製造能力を発揮できる時間が大幅に短くなってしまっていたのだ。
品質基準を満たすために、妥協はできない
—「工程凍結」という航空業界特有の事情も
同社がクーラントの清浄度にこだわるのは、厳しい航空業界で信頼を勝ち取るためだ。スラッジやスカムが加工部に流れ込めば、切粉が刃に詰まり、傷や寸法不良を招く。人命を預かる重要保安部品を作る以上、品質の安定は絶対条件なのだ。
航空業界特有の事情もある、それが「工程凍結」だ。航空機部品の製造において、すべての工程は発注元への申請と承認に基づいて厳格に管理される。そして、一度審査・承認された製造工程は、たとえクーラントの銘柄ひとつ、周辺装置の構成ひとつ変えるだけでも2ヶ月以上の審査が必要となる。このような事情から、スラッジやスカムの発生に対して、その都度場当たり的な対処を行うのも難しい。
「アラートが出てから対応すればいい、という考え方もあるでしょう。ですが自動化というのは、システムが安定して動いて、ようやく品質向上や効率化といった恩恵が生まれる。そのための予防保全であり、改良保全なのです」と岸川氏。自動化の恩恵を削ぐ要素は、システムの作り込みで排除するしかないのだ。
◇導入後の状況
正解のラインが隣に誕生
—「BAL」を導入した2ライン目で、スラッジやスカムが大幅減少
このような状況に変化が訪れたきっかけは、第2ラインの新設だった。「生産設備増強の話が持ち上がり、第2ラインを立ち上げることになりました。この時にSALに代わるコンベアとしてブンリさんから提案していただいたのが『精密濾過フィルターコンベア BAL」でした」と岸川氏。
これが「正解」の組み合わせだった。第2ラインではスラッジやスカムの発生が大幅に減少し、ついに清掃という工程そのものが消えた。効果は数字にも明確に表れた。
- 消耗品費・作業人件費の削減効果:月35万円
- ライン停止時間の減少による生産増効果:月49万円
- 改善効果:合計 月84万円
- 費用・時間の削減:月間97%減(タンク清掃人件費は100%減)
「ライン稼働に不可欠なチラー清掃以外のランニングコストは、第2ラインではすべて無くなりました。フィルタ交換やタンク清掃といった、ラインの一部を止める作業が不要となったことで、生産増効果も極めて大きいものとなりました」と、岸川氏は笑顔で当時の様子を語る。改善効果をすべて足し合わせると、84万円もの費用削減が実現した。

数字に表れない恩恵も大きかった。フィルタ交換や清掃が不要となったことで、ラインに常駐する作業者は4人→2人に削減。この人員を他の設備に配置することで、算出できない部分での生産増効果は計り知れないものとなった。「クーラントタンクの清掃が不要となり、現場の不満も消えました」と黒川氏。
◇なぜ濾過精度が高いのか?—BALの強み
BALは、非磁性体の切粉処理に最適な切粉分離装置だ。極めてゆっくりとした流速で、浸透させるようにクーラントを流すことでスラッジやスカムを捕集する。こうすることでフィルタの破損や目詰まりを防ぎ、フィルタが長持ちする。ここが大きな特徴だ。
加えて、フィルタ自体も高剛性の焼結材製で摩耗しにくく、カートリッジフィルターやペーパーフィルターのような消耗品が不要のため産業廃棄物も出ない。濾過精度は20μmで90%以上と高く、2次処理も不要だ。アルミやチタンといった軽金属にマッチしつつ、メンテナンスコストを極限まで低下させた同製品は、本記事の事例のような自動化量産ラインに最適な製品と言える。

◇導入後の展開と今後の運用
問題の1ライン目も「BAL」で設備更新
—自動化の恩恵をフルに活かし、高まる航空・半導体需要を狙う
月84万円という改善効果は、導入費用を2年未満で回収できる計算になる。岸川氏はこの数値を元に、第1ラインも設備入れ替えに合わせ「BAL」へ更新することを経営陣に上申。2本とも「BAL」のコンベアで統一されたことで、現場はついに清掃の負担から完全に解放された。
「SALとBALが隣に並んでいる状態は、決裁を後押ししたと考えています。費用面の改善効果だけでなく、余剰人員の活用や社員の労働環境改善といった目に見えない効果も、現在の生産体制に大きく寄与しています」。
現在同工場では、記事中でも触れたエアバスA320neoシリーズ向けエンジン「PW1100G-JM」の部品に加え、活況の続く半導体業界向け部品を数多く手掛けている。
今後について岸川氏は「半導体は浮き沈みが激しいので、一度受注すれば長く生産が続く航空機部品と合わせ、2つの軸で安定した成長を目指します。自動化ラインをフルに活かすために、今後もブンリ製品を愛用していきます」と語る。
◇取材先(株式会社ウラノ 長崎工場)について
株式会社ウラノは、埼玉県に本社を置く金属部品加工の専門メーカー。難削材や複雑形状を得意とし、チタンやインコネルの加工に強みを持つ。航空宇宙分野へは1990年頃に参入し、旅客機部品や国際宇宙ステーション、H2ロケットの部品を手掛けてきた。県の誘致を受けて20年前に進出した長崎工場では、2本の自動化ラインを基軸に「少品種多量」「多品種少量」の双方に対応し、半導体産業向け部品や航空部品の製作を通じて、国内先端産業を支えている。

