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段取り替え時間を大幅に短縮!|工作機械にAIの”目”を組み込む、長岡高専・東京大学松尾研発の技術ベンチャー 

段取り替え時間を大幅に短縮!|工作機械にAIの”目”を組み込む、長岡高専・東京大学松尾研発の技術ベンチャー 

株式会社IntegrAI

掲載企業株式会社IntegrAI

主要3品目
  • AIソフトウェア

ベンチャー企業「IntegrAI」が手がけるのは、人の「目」を代替するソリューションだ。長岡高専の学生2人のアイデアから2020年に立ち上がった同社は、中堅加工機メーカーにシステムを納めるまでに成長を遂げた。従来数十分要する加工機の段取り替えを、わずか数分にまで劇的に短縮する同社の「AIの目」とは、一体どのようなものなのだろうか? 現・代表取締役の博多氏と、創業者(ファウンダー)であるソドー氏に話を伺った。 

メーター読み画像認識システムから、より汎用性の高い「目」に進化 
AIとディープラーニング技術を駆使した「IntegrAI Solutions」 

同社のコア技術は、カメラで捉えた画像をディープラーニングで分析し読み取るAI技術。この技術を活用したAIソリューション「IntegrAI Solutions」では、液体の色や濁り、さらには設備の稼働状態などの読み取りを可能とした。センサーでは捉えにくいこのような情報をAIの「目」が補完することで、既存のIoTよりもさらに多くの情報を人間に代わり取得できる。

市販のカメラやコンピュータと接続するだけで動作し、処理もオンプレミス(計算のために情報を外部に出さない形)で行われるため、現場でも簡単に導入できるのが同社技術の大きな特徴だ。 

技術の始まりは「工場のアナログメーター読み」だった。高専の活動で地元の工場に出入りしていたソドー氏は、現場での「アナログメーターの読み取りが課題」だと知る。そこで研究に取り組み、機械学習を用いたアナログメーターの読み取り技術を作り上げた。当時はインターネット上のフリー画像から学習データを集めるなど、手探りでの開発だったという。 

その後2019年に、DCON(ディープラーンングコンテスト)に出場し優勝。DCON優勝を通じて受けた創業支援や東大の松尾教授との出会いを経て、2020年にIntegrAIを創業した。「最初の導入先は地元の熱処理メーカーでした。そこでの導入がメディアで取り上げられ、JAXAさんからも声がかかりました」とソドー氏は振り返る。 

しばらくはアナログメーターの読み取りをメインに行っていたが、競合の登場で方針を変更。当初行っていた専用ハードウェアの開発も手放し、より高い汎用性を目指した。こうして生まれたのがエージェントAI「IntegrAI Solutions」なのだ。 

「IntegrAI Solutions」はマルチモーダルに対応し、赤外線カメラや他のセンサからの入力も統合して処理できる。こうした特徴が高く評価され、電力メーター監視、排水処理施設の状態監視、プラントの点検代替などの手段として大手企業でも採用例が相次ぐ。現在寄せられる主要なニーズは「異常検知」「数値チェック」「傾向の監視」の3つで、特にプラント関係は労災防止の観点からも自動化・AIカメラ化を求める声が大きいという。 

中堅加工機メーカーの製品に標準搭載が実現! 
段取り替えを1ステップに短縮した、エージェントAIの実力 

「IntegrAI Solutions」ができることは監視だけではない。捉えた現在の様子から次の状態を予測し、閾値に基づいた警報や信号を送ることもできる。この機能を活かすことで、2026年についに工作機械への標準搭載が実現した。 

「私の前職が商社マンで機械を売っていたものですから、製造業界に人脈がありました。その縁もあって、ある加工機メーカーに生産効率化機能として搭載していただくことになりました」と現・代表取締役の博多氏。そのメーカーこそが、転造機で国内トップクラスのシェアを誇る「三明製作所」だ。「Sanmei Navigation System(Sナビ)」の一部として「IntegrAI Solutions」が採用された。AI機能を搭載した機種には早くも多くの引き合いがあり、中には海外からのものもあるという。 

では、AIは具体的にどう役立つのだろうか?その答えが「段取り替え」だ。転造機では段取り替えを行う際に、ダイス(金型)の位置を微調整する工程が必要となる。ズレを測定しては作業者の経験を頼りに位置合わせを行う。個人差はあるが、この作業は数十分程度を要するものだった。これにAIを用いることで、わずか数分に短縮される。

カメラで読み取ったピッチのズレを元に、転造機のPLC(制御装置)にAIがフィードバック信号を送ることで、ラム(ダイスを押し出す直線運動を担う主要駆動部)の位置補正を実現するという仕組みにより、作業者の繰り返し作業を無くして段取りを行うことが可能になった。 

近年の技術進化によって、LiDARなどを用いなくとも、複数枚の画像だけで立体位置も判別できるようになった。こうした要素を取り入れたことで、「IntegrAI Solutions」はついに製造設備そのものでも活躍できるようになったのだ。最終的には「ボタンを押せば段取りが自動で行われる機能」を目指して、今後も開発を続けていくという。 

AI機能を、メーカーに代わって開発 
研削盤や、工作機械周辺機器への搭載も見据える 

ここまで述べたように、メーター、液体の監視から段取り替えまで、同社のAIエージェントの適用範囲は幅広い。この汎用性を活かし、今後も工作機械へのAIの供給を続けていくという。狙うのが「機械の作り手」だ。大手MCメーカーなどではAIを内製して搭載を進める一方、中堅や小規模の工作機械メーカーでは自社でのAI開発まで手が回らず、一歩遅れをとってしまっているのが現状だ。こうしたメーカーにAIベンダーという立場でAIモデルを提供し、二人三脚で工作機械の機能を底上げしていくのが、同社の今後の目標だという。 

博多氏は、「平面研削盤などは、AIでやれる部分が結構あると思います」と見る。研削盤の当て込み作業は、いまだに熟練者の感覚や勘が要求される難しい作業だ。こうした作業に同社のマルチモーダルなAIを適用することで、画像だけでなく音や温度の情報も取り入れた高機能な自動化を目指す。 

「目」だけでなく「鼻」の実現にも挑む。匂いセンサの性能向上で、AIを用いれば液体の匂いまで嗅ぎ分けられる時代になった。こうしたセンサをAIと組み合わせることで、工作機械からのオイル漏れの検出やクーラントの状態監視などに繋げていく狙いだ。マルチモーダルなAIという特性は、ここでも生きてくるのだ。 

同社では現在、監視用のAIと並行して現場版“ChatGPT”ともいえる対話型AIチャットbotの開発も進めている。現場のナレッジを蓄積した対話型AIと、「目や鼻」を担うモニタリングAIを組み合わせることで、モニタリング・ロギングの先を見据えた開発もニーズに応じて行っていく方針だ。 

「メーカーさんには、ユーザーからいろいろなリクエストが来ていると思います。それらへの対応を『IntegrAIでできるか』と声をかけていただくところから始めたい」と博多氏。高専生の発案から走り出し6年、新進気鋭の「現場型」AIテック企業として、IntegrAIは今後も躍進を続けていくに違いない。 

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