業界特集

公開日: / 最終更新日:

真空プラズマ・大気圧プラズマの両輪で、幅広い業界の課題を解決する研究開発型企業

真空プラズマ・大気圧プラズマの両輪で、幅広い業界の課題を解決する研究開発型企業

株式会社魁半導体

掲載企業株式会社魁半導体

京都市の株式会社魁半導体は、プラズマ技術を強みとする研究開発型企業だ。真空・大気圧両方の幅広いラインナップを誇る同社製品は、エレクトロニクスや材料分野から医療・バイオに至るまでの多様な業界で活躍している。

半導体や医療などの先端技術で活躍―真空・大気圧プラズマ処理装置の両方を手掛ける国内有数の装置メーカー

プラズマ処理とは、材料の表面にプラズマを照射することで、その性質を変化させる表面改質技術の一種だ。プラズマ中にはイオンやラジカルといった活性種(他の物質と極めて反応しやすい分子)が存在しており、これらが材料表面の分子結合に作用することで性質が変化する。具体的には、官能基と呼ばれる「物質の性質を決める特定の部分構造」を表面に付与することで、濡れ性や接合性などを向上できる。また、プラズマによって表面の分子結合を切断し揮発性生成物として除去することで、表面の洗浄やエッチング、微細な粗面化を行うこともできる。このプラズマを用いた表面処理は薬液を用いないドライプロセスであるため、廃液処理が不要となり環境負荷の低減にも役立つ。


プラズマ処理は真空下でプラズマ照射を行う「真空プラズマ」と大気圧下で行う「大気圧プラズマ」の 2 種類に大別される。真空プラズマは処理条件を比較的精密に制御しやすく、高度な表面改質や薄膜形成などに適している。一方、大気圧プラズマは真空チャンバーを必要とせず、連続処理やインライン化に適している。用途に応じて両者を適切に使い分けることで、より適切なプロセス設計が可能になる。この点において魁半導体は、世界でも珍しく真空と大気圧の両方のプラズマ処理装置を開発・製造する装置メーカーであり、その製品バリエーションは同社の強みの一つである。加えて、同社では粉体向けのプラズマ処理装置もラインナップしており、真空・大気圧・粉体向けいずれも研究開発向けから量産現場向けまで各種サイズ・スペックの装置を取り揃えている。このような幅広い製品ラインナップを保有することで特定の業種・業界に偏らない経営を行っている点も、同社の技術開発力の裏付けといえる。
幅広い業界に対応する同社のプラズマ処理装置だが、中でも近年需要が増えているのはエレクトロニクス分野である。半導体プロセスの高度化・微細化や AI・高速通信の普及に伴い、異種材料接合の下処理や微細クリーニングなどのニーズが急速に高まっている。同社でも、この分野での引き合いは増加傾向にあるという。エレクトロニクス以外では、細胞培養関連部材や、血液測定に用いられるマイクロ流路部材の濡れ性向上などにも活用されている。特殊なものでは、航空宇宙分野における摺動性向上コーティングへの応用事例もあるという。

プラズマ処理効果の経時変化を最小化―ドライプロセスによる SAM 膜の形成とは?

多様な用途があるプラズマ処理だが、一般的に改質効果は時間とともに減衰してしまう。このため容器やノズルのコーティングなど、付与した機能を長期間維持したい製品においては、この経時変化をいかに抑えるかが課題となっていた。
これに対し同社は「自己組織化単分子膜(SAM 膜)」という解を提示する。これは分子が表面上で自己配列し、1 分子層として形成される極めて薄い膜で、膜厚は数 nm 程度だ。SAM 膜自体は従来から広く知られてきたが、その形成方法は複数台の大型装置と溶媒・触媒を用いたウェット処理であるため実用的ではなかった。これに対し同社は、プラズマ処理で表面を活性化し、気化させたガスを導入して化学反応を起こすことで、ドライプロセスで SAM 膜を形成する手法「PE-MBF 法」を独自に開発。一連の膜形成工程を装置 1 台で完結できる。これによって溶媒・触媒を用いずに SAM 膜を形成できるようになったほか、膜の形成にかかる時間も大幅に短縮(従来比約 1/4)することに成功したのだ。


SAM 膜を形成する際には、用いる分子の構造に応じて材料表面に現れる末端官能基を選択することができる。これにより、表面機能の設計自由度を高めることが可能となる。形成する SAM 膜の分子に機能性官能基を持たせることで、通常のプラズマ処理だけでは導入が難しい官能基についても、用途に応じて表面へ付与できる。また、反応性官能基を有する SAM 膜同士を対向させることで、接着剤を用いない接着(ダイレクトボンディング)も可能となる。


改質効果を長期間維持しやすい点も、SAM 膜の大きな特長である。材料表面に結合した分子は、時間とともに材料内部に潜り込もうとする性質(内転)があるが、SAM 膜を構成する分子は比較的長いため、その移動が起こりにくい。そのため改質効果を長期間にわたって維持することができる。例えば親水化処理では、従来法の場合、処理対象の材質によっては数時間から数日程度で効果が減衰する。SAM 膜の形成では、原理的に長期間にわたって安定した効果の維持が期待できるという。
同社の SAM 膜形成技術は様々な現場で利用されている。液体を滴下するノズルに撥水性の SAM 膜を形成することで液だれを抑えられるほか、1μL 以下の正確な液滴制御も実現できる。これらは極めて正確な滴下量を要求される半導体レジスト塗布ノズルなどに用いられている。また、同社では粉体向けの SAM 膜形成装置もラインナップしており、分散剤レスで粉体の液中分散性を高める用途などに用いられている。

技術力で更なるイノベーションを起こす―学生起業から始まって 24 年、
今後も頑張りたい人が頑張れる場所の提供を続ける

単なる装置開発にとどまらず、このように新たな表面改質プロセスの開発まで行う同社の技術力の源泉は、その成り立ちによるところが大きい。同社の創業は 2002 年のこと、代表の田口氏が京都工芸繊維大学発の学生ベンチャーとしてスタートしたことがきっかけだった。このような背景から、同社は「研究開発型企業」となっているのだ。同社には大手企業からの出向者も在籍しており、アカデミックな知識と大手企業在籍者のノウハウを組み合わせることで、より確かな根拠に基づく製品開発を行っている。
さらに同社が大切にしているのは、技術開発そのものだけではない。「頑張りたい人が頑張れる場所をつくること」も、同社が掲げる重要な価値の一つだ。挑戦意欲を持つ人材が力を発揮できる環境を整えることで、新たな技術や事業の芽も育まれていく。
今後について同社担当者は、「半導体や医療機器の生産ライン向けにオファーをいただいており、この分野はさらに伸びていくと考えています」と見通しを語る。現在は海外進出に向けた検討や大学・企業と産学官で連携した研究開発なども行っており、このような「事業の柱をより強固にする取り組み」を今後も続けていくという。
真空・大気圧の両方式を軸に、あらゆる分野で活躍する魁半導体の装置とプラズマ技術。
同社が今後どのようなイノベーションを起こしていくのか、目が離せない。

掲載会社情報

株式会社魁半導体

株式会社魁半導体

所在地
〒600-8897 京都市下京区西七条御前田町50番地 SAKIGAKEビル
TEL
075-204-9589
FAX
050-3488-5883
URL
https://sakigakes.co.jp/
こちらの記事もおすすめ
pagetop