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​​「燃やせない時代」の混合廃プラ処理に挑む ―ケミカルリサイクルの普及で資源循環型のものづくりを目指して​ 

​​「燃やせない時代」の混合廃プラ処理に挑む ―ケミカルリサイクルの普及で資源循環型のものづくりを目指して​ 

AC Biode 株式会社

掲載企業AC Biode 株式会社

主要3品目
  • ケミカルリサイクル

  • 触媒

​​AC Biode株式会社は、化学技術で環境問題の解決に寄与すことを目指して研究開発に取り組む、技術スタートアップ企業だ。かねてから環境問題に関心があったという代表取締役の久保氏を中心に、2019年にイギリスと日本で同時に創業した。その後、新型コロナのロックダウンをきっかけに国内(京都)にラボを設立、現在では欧州2拠点と京都、東京の両輪でビジネスを行っている。​ 

​​同社がここ数年主力事業として取り組んでいるのが、同社のコア技術である触媒技術を活用した混合廃プラのケミカルリサイクルだ。

​​他のリサイクル法で対応できない廃プラをどう処理するか 
―プラスチックを一度分解して原料に戻すケミカルリサイクルとは​ 

​​廃プラスチックのリサイクルには大きく分けて3つの手法がある。1つ目が破砕・溶解して同じプラスチック原料として再利用するマテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル)、2つ目が燃料として再利用するサーマルリサイクル、そして3つ目がプラスチックを一度原料まで化学的に分解するケミカルリサイクルだ。​ 

​​3つの中ではマテリアルリサイクルが最も環境負荷が小さいものの、リサイクル材の品質を保つためには厳密な分別や洗浄(不純物の除去)を行わなければならず、適用範囲が小さく、品質上の限度もある。アパレル製品や雑貨・家電など身の回りの多くのアイテムは複数の樹脂材料を組み合わせて作られており、現実的にはマテリアルリサイクルが難しいものも多い。次に考えられるのはサーマルリサイクルだが、これは最終的にプラスチックを燃やすため、温室効果ガスの削減や資源循環という点では寄与しない。実際に、EUではすでにサーマルリサイクルはリサイクルとはみなされてはおらず、今後規制が大幅に強化されていく見通しだ。

このような場合に有力となるのがケミカルリサイクルだ。ケミカルリサイクルでは化学反応によって一度低分子量の有機化合物やモノマーに分解して、それらを化学原料として再利用する。このため汚れや異物の付着があってもリサイクルが可能となるほか、リサイクル材の品質もバージン材(新品の材料)と同等にできるメリットもある。

​​混合廃プラも250℃の低温で分解可能
―高いエネルギー効率を実現し、ケミカルリサイクル普及の壁を突破する「Plastalyst」​ 

​​メリットの多いケミカルリサイクルだが、国内での普及率は3%(見方によっては1%とも言われる)と依然として低い。これにはケミカルリサイクルが持つ2つの大きな課題が関係する。それが「エネルギーコストの大きさ」と「リサイクルできる混合廃プラの種類の狭さ」だ。​ 

​​プラスチックの分子鎖(C-CやC-Hなどの分子の結合)は強固な結合によって結びついているため、これを切断し分解する(≒解重合する)ためには大きなエネルギーを加えなければならない。そのため現在普及しているケミカルリサイクル手法の多くは600℃以上の高温で分解を行う方式となっており、多大なエネルギーコストがかかる。​ 

​​このような課題を解決するのが、AC Biodeが開発したケミカルリサイクル手法「Plastalyst(プラスタリスト)」だ。同社では特許取得の触媒と亜臨界水の溶媒を用いることで、250℃という低温でのケミカルリサイクルを実現した。「何百とあるレシピの中から実験を繰り返し、最適な触媒を見つけました。実はこの触媒材料は既存の材料でしたが、まだ誰もケミカルリサイクルに使っていないものだったので周辺材料を含め特許を取得しました。」と久保氏は説明する。この触媒はレアメタルや貴金属も用いておらず、材料コストの面でも大きなアドバンテージがある。​ 

​​「Plastalyst」はPE・PPなどを含めたほぼすべてのプラスチックに対応しており、複数種類のプラスチックが混じった混合廃プラでも分解が可能だ。分解が完了すると無機物(金属など)の残渣と、モノマー、エタノール・酢酸・ギ酸・メタノールなどの有機酸が溶けた水や可燃性ガスに分かれ、前者は金属資源などとして回収、後者は蒸留処理をすることで化学原料として再利用が可能となる。触媒も還元処理を行うことで繰り返し使用ができ、廃棄物が最小となるのも大きな特長だ。​ 

​​さらに特筆すべきは、他のケミカルリサイクル手法が反応に多くの熱を消費する「吸熱反応」なのに対し「Plastalyst」を用いた分解反応は「発熱反応」であるという点だ。反応過程で自ら熱を発しながら分解していくため、その分だけ外部から加えるエネルギーが小さく済む。発熱反応でのケミカルリサイクルは国内外でもまだほとんど前例がなく、「Plastalyst」はその点でも先駆けといえる。

​​実証プラントでの検証を進め、数年後の社会実装を目指す 
―サプライチェーン全体でのCO2排出量削減に寄与することを目指して​ 

​​同社がこのような製品の開発に成功したのは、CTOである水沢氏のバックグラウンドが深く関係している。同氏はもともと電池の研究者であったため、化学分野に精通している。電池の反応プロセスと化学触媒作用は共通する部分が多いため、こうした経緯で同社では触媒がコア技術となったのだ。現在では水沢氏を中心に国際色豊かな10名(パートタイムを含めると25名)の研究者を迎え、「Plastalyst」だけでなく吸着剤、交流電池など様々な製品の開発を進める。多くが触媒を中心としたコア技術が活かされている。​ 

​​「我々はベンチャー企業の中では少し珍しく、ニーズありきで売れるものを作るという方針です。また、複数のアイテムを同時に手掛けることでリスクヘッジも図っています」と久保氏は説明する。コア技術を武器にニーズ先行の経営を行った結果、創業7年目ですでに単年度黒字を2度達成した。​ 

​​大企業を中心にScope3排出量(サプライチェーン全体でのCO2排出量)の表示が義務付けられようとしている中、「Plastalyst」に期待する声は多い。現在同社には大企業を中心に多くの企業から引き合いが寄せられているといい、今後の課題はプラントにおける実績作りだという。「技術的には確立していても、プラントで大規模なリサイクルができることを示さなければビジネスにはつながりません。実験室でできたことが規模の大きなプラントではうまくいかないということもよくあるので、しっかりと検証していく必要があります」と久保氏。早ければ年内にプラント2号機を立ち上げ、1年かけて実証を進めていく予定だ。また消費エネルギーについてもさらに改良を進め、各社に広く普及できるレベルのエネルギーコストに抑えていくという。​ 

​​プラスチックのリサイクルの今後について久保氏は「ケミカルリサイクルについては今後3~4年で社会一般に浸透するのではないかと思います。そのような状況の中で、より多くの企業にPlastalystを知っていただいて、巻き込むステークホルダーを増やしていければと思います」と語る。​ 

​​Scope3排出量(※注1)表示義務化や欧州のELV規則(※注2)などによって、サプライチェーン全体で環境問題に対処する風潮が着実に生まれつつある中、製造業の現場においてもリサイクルは喫緊の課題と言える。持続可能なものづくりと循環型社会の実現を目指して、「Plastalyst」の進化は今後も続く。​ 

​​※注1:世界的な温室効果ガス算出基準「GHG Protocol」によって定められた排出量の概念で「自社の活動に関連するサプライチェーン全体における排出量(Scope3)」と定義されている。Scope3にはサプライヤーからの物品の購入やそれらの輸送、産業廃棄物の処理に至るまでのすべての排出量が含まれる。国内でも​​サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)によって​​時価総額3兆円以上の企業を皮切りに開示の義務化が進む見通しで、これらの企業のサプライヤーにとっても排出量削減は急務となる。

※注2:​​使用済み自動車(ELV:End-of-Life Vehicles)の廃棄とリサイクルに関するEUの規則で、廃自動車のリサイクル体制などが明確に示されている。2023年の改正規則では「​​施行から10年後までに​​新車プラスチックの25%以上にリサイクルプラスチックを用いる」などと具体的な指令も示されており、自動車を中心にプラスチックのリサイクルが求められている。​ 

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