業界特別企画
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80年以上培った鍛造技術を次の市場へ 複雑形状・一体成形に挑む岡田工業
岡田工業株式会社
掲載企業岡田工業株式会社
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主要3品目
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精密型鍛造
熱処理
金型製作及び機械加工
1938年創業の岡田工業株式会社は、80年以上にわたり鍛造に携わってきた鍛造メーカーである。現在は自動車部品を中心に、鉄を加熱し、大型プレスで成形する型鍛造を手掛けている。主力は自動車の等速ボールジョイントを構成する鍛造部品で、約50年にわたって生産を続けている。自動車関連が約95%を占める一方、産業用ロボットをはじめとした新たな分野への展開にも取り組んでいる。
同社が得意とするのは、台座から軸が突き出したような「軸物」と呼ばれる製品群である。さらに、長年培ってきた技術を生かし、複数の軸が突き出したような複雑形状の鍛造にも対応している。また、量産ノウハウと金型を内製できる体制を生かし、部品の一体成形や工程改善にも対応する。既存の自動車部品を安定して量産するだけでなく、「この形状は鍛造でつくれるか」という開発段階の相談にも応えながら、鍛造技術の可能性を新たな市場へ広げようとしている。

自動車部品を約50年生産 量産を支える鍛造技術
同社の主力製品は、自動車の等速ボールジョイントを構成する鍛造部品である。材料となる鉄を約900度まで加熱して柔らかくし、1600~2000トン級の大型プレスで複数回成形することで、ものの数秒で製品形状へと仕上げていく。この部品を同社は約50年にわたり製造してきた。その中で培ってきたのが、軸のある複雑な形状を安定して成形する技術と、量産を支える生産ノウハウである。現在はその技術を生かし、産業用ロボットの関節部に使われる部品なども手掛けている。

量産を支えるもう一つの強みが、鍛造用金型を自社で製作できる体制である。金型製作を含めた生産体制と、長年にわたる自動車部品の量産で培ってきた品質管理や生産管理のノウハウが、同社のものづくりを支えている。主要顧客との長年の取引について、同社が強みの一つとして挙げるのが「小回りのきく対応」である。数量や納期の変更にも柔軟に対応し、顧客の生産現場に近い立場で頼られる存在として、長年にわたる信頼関係を築いてきた。
部品を一体成形し、強度向上と工数削減につなげる
同社が培ってきた鍛造技術が生かされた一例が、産業用ロボット関連部品の一体成形である。従来、この部品は台座と複数のピン部分が別々の部品となっており、後から取り付ける構造だった。同社では、このピン部分を含めて鍛造で一体成形する工法に変更。従来あった接合部分をなくし、一体構造とすることで部品全体の強度を高めるとともに、組立にかかる工数を削減し、製造効率の向上につなげた。


複数の部品を後から組み合わせるのではなく、最初から一体の形状として成形できることは、型鍛造のメリットの一つである。特に量産品では、部品点数や後工程を減らすことで、製造工程全体を見直せる可能性がある。一方、型鍛造では金型を製作して量産するため、すべての製品や生産数量でコストメリットが出るわけではない。同社によれば、一つの目安として、1ロット当たり2,000~3,000個以上でメリットが出やすいという。
「部品点数を減らしたい」「組立工程を見直したい」。そうした課題に対して、製品形状や生産数量を踏まえながら一体成形を提案できることは、同社が今後さらに広げていきたい領域である。
約900度の温間鍛造 精度と表面品質、熱処理工程の削減にもメリット
同社では、主力製品を約900度に加熱して成形する温間鍛造を行っている。一般的な熱間鍛造より低い温度帯で成形することで、酸化皮膜であるスケールが発生しにくくなる。また、より高い温度から冷却する場合と比べて収縮量を抑えやすいため、寸法精度を高めやすい。表面をきれいに仕上げやすいことも特徴である。さらに、使用する材料や製品によっては、鍛造後の熱処理工程を省ける場合もある。同社が現在生産している製品の中には、鍛造後に空冷することで必要な硬さを確保し、焼き入れ・焼き戻しを行わずに製造しているものがある。材料や鍛造条件によって適用できる製品は異なるものの、熱処理工程を省くことができれば、その分のコスト削減だけでなく、リードタイムの短縮にもつながる。鍛造そのものの精度だけではなく、その後の工程まで含めて製造方法を考えられることが、発注者にとってのメリットとなる。
「削る」から「鍛える」へ 工法転換という新たな提案
同社が今後、さらに提案を広げたいと考えているのが、切削加工から鍛造への工法転換である。素材から製品形状を削り出す切削加工では、形状によっては大きな材料から多くの部分を削り落とす必要がある。一方、鍛造によって最終形状に近い素材をつくることができれば、その後の切削量を減らし、材料使用量や加工時間を抑えられる可能性がある。一定数量以上を継続して生産する部品であれば、量産性という面でも鍛造のメリットを生かしやすい。
同社が望んでいるのが、製品の設計が完全に固まる前の段階からの相談である。製品形状を検討している段階で相談を受けることができれば、鍛造でつくりやすい形状や、その後の加工まで考えた工法を提案できる可能性が広がる。完成した図面通りに鍛造するだけではなく、顧客とともに量産方法を考える。そうした提案型のものづくりも、同社が今後目指している方向の一つである。
「鍛造できるか」から始まった開発品 量産への入口を支える
一方、すでに開発段階から同社の鍛造技術が生かされた事例もある。同社には、製品が世に出る前の段階で、「この形状を鍛造でつくれるか」と相談が寄せられることがある。量産を見据え、複雑な形状を鍛造で成形できるか検討する段階から相談を受けるケースもあるという。その一例が、高効率化を目的とした特殊なベアリング部品である。複雑な形状で、同社内でも当初は「本当にできるのか」と感じるほど難易度の高い製品だったという。それでも試作に取り組み、鍛造による成形を実現した。現在、その製品は市場に出始めた段階であり、生産数量はまだ多くないものの、今後の拡大が期待されている。
既存の量産品を安定して生産するだけではなく、「この形状を鍛造で量産できるのか」という段階から顧客とともに検討する。約50年にわたり自動車部品の複雑形状を量産してきた経験が、新たな製品の立ち上げにも生かされている。
自動車で培った鍛造技術を、新たな市場へ
現在、同社の仕事の約95%は自動車関連が占める。自動車部品は今後も重要な事業基盤である一方、その中で培ってきた技術を自動車以外へ広げることも、今後のテーマとなっている。すでに産業用ロボット関連の部品を手掛けており、今後は鉄道、建機、建設関連など幅広い分野からの相談を増やしていきたい考えだ。新たな市場を開拓していく上では、価格競争力の強化も欠かせない。同社では、省力化やDXを進め、生産性を高めることで、品質を維持しながらコスト競争力を高めていく方針である。
一方、変えずに受け継いでいきたいものもある。それが、1938年の創業以来、88年という長い年月をかけて積み重ねてきた鍛造技術である。時代とともに製品や求められる技術が変化する中でも、鍛造と向き合い、顧客のものづくりを支え続けてきた。その歴史と、長年の取引の中で築いてきた信頼は、設備や数字だけでは表すことのできない、同社にとって何にも代えがたい財産である。これまで現場の経験や勘、コツとして受け継がれてきた技術を次世代へ伝えられる形に整理しながら、長い年月をかけて築いてきた信頼も未来へつないでいく。
1938年の創業から88年。長い歴史の中で鍛造技術を磨き、約50年にわたる自動車部品の量産を通じて、品質と安定供給への信頼を積み重ねてきた同社。これまで培ってきた技術と信頼を土台に、複雑形状の一体成形や開発品、切削から鍛造への工法転換へと、次の可能性を広げようとしている。歴史を守るだけではなく、その蓄積を新たなものづくりへ生かしていく。「この製品は鍛造でつくれるか」。そんな相談を起点に、同社は鍛造の新たな可能性に挑んでいく。
