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人手不足を「金型」から変える 自動脱型とバリレスで成形現場の省人化を支える井本精機 

人手不足を「金型」から変える 自動脱型とバリレスで成形現場の省人化を支える井本精機 

有限会社井本精機 

掲載企業有限会社井本精機 

主要3品目
  • インジェクション用ゴム金型(全自動成形)

  • エラストマー用金型

  • LSR(液状シリコン)用金型

製造業で深刻さを増す人手不足。自動化・省人化というと、産業用ロボットや大規模な設備投資を思い浮かべることが多い。しかし、成形工程には「金型」から変えられる作業もある。愛知県名古屋市に拠点を置く有限会社井本精機は、ゴムやシリコン、エラストマー製品の金型を手掛ける金型メーカーである。中でも強みとしているのが、金型とあわせて設計・製作する「自動脱型装置」と、成形時に発生するバリを抑える「バリレス」の技術だ。人が製品を取り出す。人がバリを取る。そうした成形現場に残る手作業を、金型メーカーの立場からいかに減らすか。同社は約50年にわたり培ってきたノウハウを生かし、成形現場の省人化を支えている。 

自動車向けを中心に、ゴム・シリコン・エラストマー金型を製作 

同社が金型メーカーとして歩み始めてから50年以上。現在、3代目となる井本裕文社長のもと、ゴム製品用金型を中心に、シリコンやエラストマー製品の金型を設計・製作している。案件の7~8割を占めるのが自動車関連である。自動車産業が集積する愛知県という立地も背景に、量産部品を支える金型を数多く手掛けてきた。顧客側で生産される製品の中には、月産10万~20万個規模になるものもあるという。

一方、海外メーカーとの競争が激しくなる中、自社が長年培ってきた技術やノウハウで差別化を図る方針だ。その代表的な強みの一つが、金型と一体で考える「自動脱型」である。 

金型と自動脱型装置を一体で設計 人による取り出し工程を減らす 

ゴム製品には、ジャバラやブーツなど、内部が空洞になった複雑な形状がある。こうした製品では、成形後、そのままでは金型の芯から製品を抜き取ることが難しい場合がある。

そこで同社では、製品を膨らませる、引っ張る、ねじるといった動きを組み合わせ、成形品を金型から自動で取り出す装置を設計・製作している。特徴は、装置だけを後付けするのではなく、金型と自動脱型装置をセットで設計することにある。井本社長によれば、愛知県内でも金型と自動脱型装置の双方を手掛ける企業は限られているという。 

同社が自動脱型に取り組み始めたのは最近のことではない。無人化・省人化、大量生産へのニーズを背景に、50年近く技術を積み重ねてきた。発注者にとってのメリットは、人手を減らせることだけではない。人による作業のばらつきを抑えやすくなり、24時間の連続稼働にもつなげられる。また、産業用ロボットと比較して安価に構築できることも特徴だ。同社の自動脱型装置は、ロボットのような複雑な三次元動作を行うものではない。シリンダーなどを使い、「押す」「引く」「つかむ」といった比較的シンプルな動きを組み合わせることで脱型を自動化する。必ずしも高額なロボットを導入しなくても、製品や成形条件によっては省人化を実現できるケースが多い。 

実際に、「他の金型メーカーでは断られた製品を自動化できた」という声が寄せられたこともある。別の事例では、従来は4個取りだった製品を12個取りに増やし、あわせて自動化を実現した。単に金型を製作するだけではなく、「この製品をどうすれば効率よく量産できるか」まで考える。それが同社のものづくりである。 

バリ取りの手間と不良リスクを、金型から減らす 

もう一つ、同社への問い合わせのきっかけとして多いのが「バリレス」である。ゴム成形では、金型の合わせ目などから余分な材料がはみ出し、バリが発生する。成形後にはこれを取り除く必要があり、製品によっては現在も人が一つひとつ手作業で処理している。問題は作業工数だけではない。細かな穴などにバリが残れば、取り忘れが不良につながる。特に品質要求の厳しい自動車業界では、不良品が一つ見つかったことで全数を再検査しなければならないケースもある。場合によっては組立工場まで出向いて検査することもあり、発注者にとって大きな負担となる。同社では、金型の構造を工夫することで、特定の形状や部位についてバリの発生を抑える技術を培ってきた。同社のバリレス技術には、バリを抑えた状態を長く維持できるという特徴もあるという。バリ取りにかかる人手を減らすだけでなく、取り忘れによる不良や、その後の再検査といった負担の低減にもつながる。 

ただし、井本社長は「すべての製品をバリレスにできるわけではない」という。 

製品形状や成形条件などによって対応できる範囲は異なる。そのため、問い合わせを受けた際には顧客の製品や課題を確認し、実現可能性を検討したうえで金型を設計していく。 

「何でもバリをなくせる」のではない。だからこそ、実際の製品と成形条件に向き合いながら、どこまで改善できるかを考えることが同社の役割である。 

ゴム金型の発想をエラストマーへ 新たな市場を開拓 

同社が今後さらに伸ばしていきたい分野の一つが、エラストマー金型である。エラストマーは、プラスチックに近い性質を持ちながら、ゴムのような柔軟性や伸縮性を持つ材料だ。同社が打ち出すのは、「ゴム金型メーカーが作るエラストマー金型」である。 

ゴム製品の脱型では、その柔軟性を利用して製品を膨らませたり、変形させたりしながら金型から取り出すことがある。同社は、こうしたゴム金型特有の脱型ノウハウを、エラストマー金型にも生かしている。現在の取引は自動車関連が中心だが、井本社長は医療分野や日用品など、幅広い分野への展開にも期待を寄せる。 

これまで同社はゴム業界を中心に事業を展開してきたため、プラスチック業界との接点はまだ多くない。だからこそ、自社の技術を知ってもらい、これまで出会えなかった企業との接点を広げることが今後の課題でもある。 

「省人化=ロボット」だけではない 成形工程を金型から変える 

少子化や人手不足が進む中、井本社長は「自動化」のニーズは今後さらに高まると考えている。一方、すべての現場が高額なロボットを導入できるわけではない。同社が目指すのは、ロボットメーカーと同じ領域ではなく、あくまで金型メーカーとして成形・脱型工程を自動化することだ。現在、自動脱型装置は年間数十件ほどを手掛けており、今後はさらにその比率を高めていきたいという。ただ、自動脱型は装置を取り付ければ完成するものでもない。 

使用する成形機の仕様や製品形状に合わせて設計し、実際の成形現場で動きを確認しながら調整していく必要がある。顧客と一緒に試行錯誤しながら、最適な脱型方法をつくり上げていくことが欠かせない。 

人が製品を取り出す。人がバリを取る。これまで当たり前だった作業を、本当に人が担い続ける必要があるのか。「省人化=ロボット」だけではない。金型と、その先の脱型まで見直すことで変えられる工程がある。50年近く培ってきたゴム金型と自動脱型のノウハウを武器に、井本精機は人手不足に悩む成形現場へ、新たな選択肢を提案していく。 

掲載会社情報

有限会社井本精機 

有限会社井本精機 

所在地
〒468-0053 愛知県名古屋市天白区植田南3-815
TEL
052-801-5519
FAX
052-801-5919

製品情報

  • ゴム金型技術で高品質を実現|愛知県 井本精機

  • エラストマー金型の不良対策と改善事例|打ち抜き・反り・シワの原因と対策

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