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100年企業が挑んだ変革 危機を乗り越え、医療・微細成形に活路――タクセル株式会社

100年企業が挑んだ変革 危機を乗り越え、医療・微細成形に活路――タクセル株式会社

タクセル 株式会社

掲載企業タクセル 株式会社

主要3品目
  • 医療機器・理化学向けのプラスチック部品生産

  • 医療機器・理化学向けのプラスチック製品販売

  • プラスチック部品加工(射出成形・組立)

創業100年超、進化を続ける樹脂成形メーカー 

創業100年を超え、日本の樹脂成形産業の歴史と共にあり続ける。そして2015年「多角的専門商社」である高島株式会社のグループとなり、今なお成長を続けている企業、それが栃木県栃木市に本社を置くタクセル株式会社だ。セルロイド製品製造から始まった同社は、日本で最も早くプラスチック射出成形に取り組んだ企業の1つである。 

当初は文具、そして家電や自動車部品、家庭用ゲーム機といったさまざまな製品に取り組み、成長を続けてきたものの、国内産業の海外移転によって大きなダメージを受けた。さらに主力工場が火災によって焼失したのを受け、大規模な事業転換を迫られたという。紆余曲折を経て、現在タクセルが取り組んでいるのはメディカルと微細成形だ。 

現在の売上比率はメディカル、エレクトロニクス、オートモーティブ、ストアファシリティ(産業資材)がほぼ等分とバランス良くなっており、メディカルの比率は30%ほど。大口顧客への依存リスクを下げながら、時には開発期間が10年近くなるという医療機器への挑戦を続ける体力へと繋がっている。 

生産マネジメントシステムをデジタル化したことにより、生産工程や修理などの履歴を明確に残すことが可能になっている。これは医療機器に必要不可欠なトレーサビリティが確保されるだけに止まらない。全社的なシステムを構築したことで医療機器のみに限らず、さまざまな製品のプロセス管理、品質向上に貢献しているという。 

さまざまな製品を成形してきた同社には、18t~1450tと幅広い射出成形機が立ち並ぶ。2018年ころから医療分野に参入し、ISO13485を取得。2021年にはISO Class8 (クラス100,00)のクリーンルームを備えた医療機器専用工場を建設した。現在クリーンルーム成形機は12台だが、2年後には22台体制となる見込み。今後も生産能力を充実させていきたい考えだ。これまで食品容器を製造していた工場に設置されたクリーンルームは、二階部分にラック式の倉庫を備え、クレーンが備え付けられているため最大350tクラスの成形機を置くことも可能。より幅広い製品製造を可能としているのだ。「家電などは製品サイクルが非常に早いですが、医療機器は普及品となれば生産が長く続きます。医療機器と言っても種類はさまざまですが、微細加工、微細成形のポイントとなるのは難易度が高く、工程数も必要で生産量が多いもの。この分野を狙っていきたいと考えています」 

微細成形技術に止まらない、体制構築が医療機器製造のカギ 

例えば、同社が製造している血液検査プレートは、一見するとただの丸穴が開いた透明なプレートだ。しかしその120個全ての丸穴には、超精密旋盤加工で金型を削り出して作られた非常に微細な構造がある。幅16μm、高さ100μm、そして輪郭度が1μm未満の構造が階段状にいくつも配されているこの構造は、血液検査における重要な機能を果たす。120個全てが品質を満たしていなくてはならないという非常に高難度な成形品なのだ。微細成形の難度もさることながら、量産のため金型の長寿命化、安定性の向上が求められる。検査工程においては、顧客による検査と社内の生産が同時進行する綿密な連携を行っている。医療機器にはこうした品質管理体制の構築が必要不可欠なのだ。 

タクセルではクリーンルーム内での組立作業にも対応している。医療機器は特殊なものや小ロット多品種生産が多い。自動生産は難しく、同社では手作業による組立ラインも備えている。感染予防のための針刺し防止機構がついた輸液セットは、在宅医療において必要不可欠な製品であり、売り上げは順調に伸びている。製品の難度としてはそれほど高くないというものの、日本で使用するものは国内生産したいという顧客ニーズに応えるため、組立ラインも自社内に設置しているのだ。 

微細加工工業会と共同で開発したマイクロニードルは、97本全ての微細な突起を3秒で全数画像検査する検査装置を開発。マイクロニードルの生産は月十万個と大量生産が必要となってくるため、要素技術以外にも、その下流の技術開発も必要になってきているのだ。 

「医療機器は年間成長率13%の市場と言われており、これからさらに大きくなっていくことが期待されています。今は再生医療の研究も進み、これまでは治すことが難しかった病気やケガ、さらに美容分野でも活用が広がっていく。そうした治療のお手伝いをしています。これからも微細加工技術を生かせる分野で提案を行っていきたいですね」 

メディカルへの挑戦は、タクセルに新しい可能性を生み出した。医療機器の顧客が海外であったことから、輸出管理規制に対応できるシステムを構築中。海外企業へのPRの機会として、Kショーなど海外展示会への出展も積極的に行い、今後は世界を見据えて事業を展開していきたい考えだ。微細部品は小さく軽いため、輸出にも有利だ。 

またスタートアップ企業と協力して開発した核酸クロマトグラフィーを用いた検査キットは、タクセルが知財を集約。この製品自体は日本の医療業界のブレイクスルーとなるような製品ではないと言うが、緊急時やパンデミックが発生した際には必要となる技術。今後は医療機器の知財などの知見を深めていきたいという。単なる成形メーカーに止まらず、顧客からの要望を具現化する設計開発を目指しているのだ。またこうした挑戦は副次的な効果もある。先進的な製品開発が栃木県の「フロンティア企業」認定の根拠技術となったことから、新たな顧客獲得にもつながっているという。

ヒート&クール成形の生みの親
意匠性向上のために生み出された技術が、微細成形の可能性を広げていく 

微細成形をする上で、より成形品の品質向上に生かされているのがヒート&クール成形だ。成形サイクル内で金型温度をより精密・高速に制御することで、ウエルドやフローマークといった成形不良を改善させるだけでなく、金型転写率を飛躍的に向上させることのできるこの技術は、サブミクロン転写の再現性向上に貢献している。オーディオのスイッチ周りのウエルド対策や、家庭用ゲーム機のピアノブラックを無塗装で実現するなど、広く知られているこのヒート&クール成形技術を開発したのは、タクセルなのだ。「ヒート&クール成形は金型、成形条件、そして温調器の三位一体の技術ですので、システムを取り入れた会社さんの中には難しいと感じる方もいるかもしれません」と自信を覗かせる。技術の元祖とも言えるタクセルには蓄積されたノウハウがあり、それがいま、微細成形の分野で生かされているのだ。 

微細成形の世界は、これからもまだまだ広がりが期待できる。マイクロ流路やフォトリソグラフィによる構造色転写、ホログラム転写や塗装レスでの艶消し、超撥水など、マイクロテクスチャーによる機能性付与はこれからも進化していく分野だ。切削加工やレーザ加工とは異なり、樹脂成形では量産となるため金型のガス・ヤニ対策などさらに踏み込んだ管理技術が必要となってくる。ここをいかに解決し、量産化、実用化に近付けていくかがカギだ。「微細テクスチャーができるなら微細加工はできて当然という裏付けにもなりますし、究極の微細加工の目標は、やはりバイオミメティクス(生体模倣)。微細な表面構造からくる機能性の付与を微細加工・微細成形で実現するために今取り組んでいるところです。」100年を超えるタクセルの長い歴史と苦難を乗り越えた経験が、新たな挑戦を後押ししている。 

製品情報

  • 【マイクロニードル】

  • 【マイクロ流路チップ / ラボオンチップ】

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