成長企業の経営戦略
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搬送ロボットで世界の半導体工場を支える ローツェが成長を続ける理由とは
掲載企業ローツェ株式会社
半導体ウエハの搬送ロボットで世界トップシェア
市況の移り変わりが激しい半導体業界にあって、右肩上がりの成長を続ける企業がある。クリーンロボットの製品化を実現し、ウエハ自動搬送を世界基準へと押し上げ、今や半導体ウエハの搬送システムで世界トップシェアを誇る。それが広島県福山市に本社を置くローツェ株式会社だ。
ローツェは1985年に設立。設立当時から、「世の中にないものをつくる」という理念を掲げている。設立時の最初の製品はステッピングモータドライバだったという。だが時代は、世界の半導体市場を日本がリードしていた黄金期。創業者であり、現在取締役相談役である崎谷 文雄氏が前職で半導体製造に関わっていたこともあり、顧客からの要望で作り始めたのが半導体ウエハ搬送ロボットだったのだ。
順調に業績を伸ばしていたが、1990年代半ばになるとコストダウンという課題に直面する。ローツェの製品はアルミニウム切削部品が多い。自社でアルミを安く輸入するのは難しく、海外調達を目的に進出したのがベトナムだ。ベトナム人は勤勉で、成果主義が根付いているというのが進出を決めた理由だったという。だが当時のベトナムはまだ日系企業の進出も少なく、現地サプライヤーも十分ではない。自分たちで何もかも全てをやらなくてはならないという状況だった。地元福山市の協力企業たちのサポートを受けながら内製化を進め、当初は機械加工のみであった業務内容をアルマイト処理、溶接、板金塗装とどんどん拡大した。現在では材料・部品さえ購入すればベトナムの自社内で完結できるまでに成長。これが同社の強みでもある垂直統合型生産体制へと繋がっていくこととなる。


なぜローツェの搬送装置は世界中から選ばれるのか
高いクリーン度と壊れにくさへの追求がカギ
ローツェ製品の強みは、非常に高いクリーン度にある。半導体はナノレベルを要求される段階に達し、ホコリ1粒が不良の原因となり得る。開発設計段階からクリーン度を最重要要素と捉え、いかにゴミを出さないかという設計を追求しているのだ。ナノの世界では、ロボットの関節部などモノとモノが接触すれば必ずごみが発生する。それをどのように抑えるのか。そして発生してしまったゴミをいかにウエハに付着させないようにするのか。EFEMという装置には、上部にFFU(ファンフィルターユニット)が付いており、HEPAフィルタ・ ULPAフィルタを通った非常にクリーンなエアによる層流でごみを下方排出し、ごみをウエハに付着させない機構となっている。こうした気流の制御技術を含めトータルでクリーン度を維持する技術力が、他社では太刀打ちできないローツェの強みなのだ。
ローツェの装置は壊れない。非常に高い信頼度を誇る。壊れないということは工場の生産性に寄与するだけではない。装置のメンテナンスのために内部を開けてしまえば、クリーン度を保つことは難しい。メンテナンスフリーで壊れにくいということは、クリーン度の維持にも貢献しているのだ。10〜20年前と比べ半導体はさらに微細化し、加えて計測技術が進展したことによってクリーン度の要求はどんどん厳しくなっている。そうした状況にあって高い技術力と信頼性が認められ、ローツェは半導体ウエハ搬送において揺るがない立ち位置とシェアを確立しているのだ。

「ムーアの法則」の通り、半導体業界では常に微細化が進行していた。現在では2次元方向の縮小化は限界値に達し、費用対効果が合いにくい状況となっているという。そこで現在起こっているのが、3Dパッケージングだ。チップを縦に積み上げ組み合わせることで、より高性能で高機能な半導体の開発がトレンドとなっているのだ。これによって、搬送に求められる機能も変化した。運ぶものは薄くなったり、重くなったり、材質や形状もさまざまで、非常に繊細に積まれているチップがずれないよう、いかに正確に振動しないように搬送するかという技術が求められるようになっている。代表取締役社長 藤代祥之氏は「半導体業界は面白いです。過去に何度も物理的にこれ以上微細化は無理だという話が出ますが、そのたびにあらゆる方法で乗り越えてきたのが半導体業界です。なので、これからもいろんな問題起きるでしょうが、飛躍的なスピードで成長していくと思います」と語る。
半導体業界は非常にスピード感が求められる業界である。納期管理は厳しく、要求事項も厳しい。つぎつぎに新しい技術が生まれ、あっという間に展開されていくダイナミックな業界だ。ローツェでは、半導体工場における工程間のウエハ搬送や順番の入れ替えなどの用途で工場に直接製品を販売する場合と、半導体製造装置メーカーに対しサブモジュールとして納入するパターンの2種がある。いずれの場合でも、顧客ごとにカスタマイズされ、オプション構成も異なる。機械構造、制御ユニット、センサ類からソフトウェアに至るまで、自社グループで一元管理できる垂直統合生産体制を築き上げたことが、業界のスピード感やカスタマイズ需要に対応できるカギとなっているのだ。
半導体製造には非常に多くのプロセスがある。プロセスごとに特化された技術を持つメーカーも数多く存在する。だが、搬送という工程は工場内で常に存在し、しかも複数台必要。マーケットが非常に広いこともローツェが存在感を示すことができている理由だ。

半導体で生かしたノウハウを再生医療分野へ
半導体関連装置だけでなく、新たな分野へも挑戦している。それがライフサイエンス事業だ。半導体で培ったノウハウや経験を生かし、細胞培養装置を開発・製造している。培養において、外部から侵入する菌やカビをいかに防ぐかという点で同社のクリーン技術が生かされているのだ。現在では製薬企業の研究室などのオートメーション化の需要が高まっている。自動培地交換機能付きのインキュベーターがラインナップされており、モバイルロボットなどと組み合わせ、ラボオートメーション化のテストを行っているという。さらに今後、再生医療分野がより広く大規模で行われるようになれば、新しい柱となる可能性も秘めている。再生医療分野は想定より市場規模の拡大は緩やかだと言うが、社会的意義、将来性共に魅力のある分野だ。「再生医療はとても素晴らしい領域。この先長い目で見れば必ず病気、怪我の有力な治療方法になっていくと思います。ただiPSが脚光を浴びて10年以上、残念ながらまだ広く普及するには至っていません。現在はラボオートメーションに注力しながら、創薬のサポートや再生医療市場拡大に貢献していきたい。」と藤代氏は語る。

右肩上がりの成長を促す「フラットな」社風
ローツェの生産現場はベトナムへシフトしている。だが研究開発の拠点は本社のある福山市だ。海外顧客案件も手掛けるグローバルな業務運営を行っている。ローツェは創業当時から役職、上下関係のないフラットな社風を持つ企業だ。藤代氏が社長就任後は役職での呼称もやめたという。「半導体のスピード感に追いつくためにも、いいものを作るためにも言いたいことをフランクに言い合える環境作りは本当に大切だと思っています。ぜひそこにも注目してもらえたら。半導体はずっと倍々ゲームみたいなことをやり続けてきています。今は AI が注目されていますが、テクノロジーによってできなかったことがこんなにできるようになり、社会を変えている。そういう点では、とても面白い業界だと思います。」より良いもの、世界をより良くするものを作るためにどうすればいいのか――急成長を続けるローツェには、気負いがない。フラットに、そして誠実に。自社の強みを追求していくことが何よりの強みなのだ。



