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国内最高峰の材料研究機関「NIMS」が民間事業者と共創する、新時代の材料開発 | 最先端の研究設備を低価格で利用できるパッケージとは? 

国内最高峰の材料研究機関「NIMS」が民間事業者と共創する、新時代の材料開発 | 最先端の研究設備を低価格で利用できるパッケージとは? 

掲載企業国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS(ニムス))

軽量・低コストを目的としたマルチマテリアル化の台頭や、電池材料や半導体素子を中心に加速する世界競争など、ものづくりを支える材料・素材の開発にはかつてないスピード感と高度化が求められている。このような環境の中で素材・材料領域に携わるメーカーに求められることは、ハイレベルの素材研究をスピード感を持って進め、いち早く社会実装まで進めていくことだろう。そしてそのためには高度な設備やデータ資源を駆使して、効率的な研究開発を行うことが不可欠となる。 

材料研究分野で国内最高クラスの規模と実力を誇る国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS:以下略称で表記)では、材料業界を取り巻くこのような課題に対し、産官学で連携できる枠組みを複数設けている。本記事では、主に設備や研究リソースの面で産官学連携を支援する「技術開発・共用部門」の活動と、その民間事業者向けの利用パッケージ「ARIM」「NOF」について紹介する。民間にも門戸が開かれている国内最高峰の材料研究拠点とは、一体どのような場所なのだろうか?同部門 材料創製・評価プラットフォームのプラットフォーム長である川田氏に話を伺った。 

 

【この記事でわかること 】

「使われてこそ材料」を理念に、今年で発足25周年 
─日本の材料研究を「面」で担うNIMSの取り組みと、産業界にもたらした実績 

金属材料技術研究所と無機材料研究所が統合し2001年に発足したNIMSは、今年で25周年を迎える国立の研究開発法人だ。研究における影響力を示す被引用論文数では、国内の材料研究分野で1位、物理分野で2位と、材料・物理・化学分野で国内最高クラスの実績を誇る。前身から受け継いだ「使われてこそ材料」という研究理念と、「材料で、世界を変える」というビジョンのもと、国内・世界の材料研究トレンドに「面」で対応する。 

具体的には、「電子・光機能材料」「磁性・スピントロニクス材料」など7つの研究センターに700人以上の研究人材(学生含む)が在籍し、セラミックスや量子材料をはじめとした最先端の材料開発を行っている。複数専門領域の研究センターと研究者の幅広さ、さらには国内有数の規模を誇る設備を組み合わせることで、例えば複合材料のように「複数の要素が絡み合う」昨今の材料開発事情にもスピード感を持って対応できるのが強みだ。 

近年の代表的な成果としては、HDDの大容量化を支える高密度記録用磁気材料や、ジェットエンジン向けの耐熱合金、さらにはLED照明に使われるサイアロン蛍光体など、私たちの暮らしの身近なものが数多く並ぶ。いずれも共通しているのは「単なる新素材開発にとどまらず、『使える素材』として社会実装まで見据えた研究開発である」ということだ。産業界との関わりも重視した研究活動を行っている点が、NIMSの1つの大きな特徴と言える。 

産官学連携や技術移転ベンチャーの設立にも取り組んでいる。1対1の共同研究から産官学の3者連携、コンソーシアムなどさまざま形で民間との共創を行っている。例えば、国内4社の大手磁石メーカーとNIMSが結束し作られた「磁石MOP」では、NIMSを中核とした体制で、高性能磁石材料の共通基盤研究を推進した。(※①)。 

また、NIMSでは「研究DX」にも力を入れている。データ駆動型研究の黎明期である2010年台半ばからデータ科学を研究に導入し、材料データの収集・蓄積・活用に取り組んできた。近年では、測定データを蓄積するデータ中核拠点「MDPF」の整備に力を入れており、NIMSが開発した「RDE(実験や測定後すぐに結果をデータ駆動型研究で利活用可能な形式にデータ化するシステム)」と組み合わせることで、現場で創出されたデータを効率的に収集・蓄積している。 

※①:2025年3月31日で終了 

データを「ためる」だけでなく「つかう」ための仕組みづくりも積極的だ。AIとロボットを組み合わせることで、サンプル作成から実験、測定までを自動で行う「自動自律実験」システムを開発。電池の電解質など、スピードが社会実装を左右する研究テーマを中心に利用が進められている。そして、これらのシステムを活用して得られたデータはMDPFに蓄積され、また次の研究に活かされる。このように、データの創出、蓄積、活用3つの組織を持ち、三位一体の体制で「データ活用のエコシステム」が実現している点も、NIMSの大きな強みといえよう。 

200台超の最先端装置を民間に開放する「ARIM」「NOF」 
─産官学連携の枠組みと、設備シェアで加速するデータ駆動型研究の最先端 

驚くべきは、このデータ活用のエコシステムはNIMS内だけにとどまらないということだ。それが、NIMSがセンターハブとなって行う文科省事業「ARIM」だ。ARIMは2021年に全国25機関(現在は大学等26機関)が連携して開始したもので、設備とデータの共用を担う10年プロジェクトとして進められている。ARIMは、各参加機関における設備利用時の実験・測定結果を、前述のMDPFに蓄積することで、国内におけるマテリアルデータの収集・蓄積・活用を促進するというものだ。現在ではARIMを通じてNIMSだけでも50万件以上の利用データが収集・蓄積されており、これらのデータを利活用することで、全国の研究機関でもデータ駆動研究を行うことができるという仕組みだ。 

そして、ARIM参加機関が保有する最先端の研究設備は民間にも開放されており、所定の設備利用料金を支払うことで利用することができる(利用に伴い保存されたデータは最大2年間のエンバーゴ期間を経た後、ARIMのルールに基づいて共有)。設備利用時のデータ保存及び利用成果公開に協力することで、民間でも最先端の研究設備を安価で利用できるというのが、ARIMの大きな旨みなのだ。 

このような外部利用できる設備がNIMS内において集約されている場所こそが「技術開発・共用部門 材料創製・評価プラットフォーム」だ。同部門はNIMS内の研究リソースが集約された場所で、200台以上の最先端のものづくり・評価解析装置と、総勢約100名の専門エンジニアやテクニカルスタッフを有している。「表面・バルク分析」「微細加工」など合計9つのユニットで構成されており、これらの設備の多くは前述のARIMやNOF(後述)といった枠組みを通じて外部からの利用が可能だ(※②)。

※②:ARIMで利用できるのは9ユニットのうち5ユニットのみ  

もともとはNIMS内部の研究者が装置を利用するための場所である同部門だが、現在では装置全体の利用の約3割を外部利用者が占めるという。一例として、昨年度の実績ではのべ1650名・約120社の企業が同部門の装置を利用した。「測定の効率化やシステム化などを進めた結果、民間の利用者様にも利用枠を空けられるようになってきました。この取り組みもあって、外部からの利用者数は年々右肩上がりで増加しています」と川田氏は説明する。なお、同部門では企業の研究支援だけでなく、JISやISOに代表される標準化に資する測定も手がけている。 

民間事業者が設備を利用するにあたって、サポートも手厚い。NIMSの共用部門の設備利用では、自治体の公設試験場のような「装置利用のみ」だけでなく、「エンジニアの技術支援付き」「研究者への委託研究」といった形で、ニーズや習熟度に応じて3段階のプランが用意されている。支援にあたるエンジニアは元研究者や元メーカー技術者などが多いため、現場の感覚に沿ったアドバイスが受けられる点も大きなポイントだ。また、間口を広げるために定期的な利用説明会やWebセミナー、さらには民間向けに実機を活用したスクールなども開催されており、年間総計1800名ほど、利用説明会では毎回200〜500名ほどが参加する盛況ぶりだという。 

秘匿性の高い研究を行いたいユーザに対しても朗報だ。同部門の装置利用パッケージには、ARIMだけでなく、成果非公開型のパッケージ「NIMS Open Facility(NOF)」もある。NOFでは成果非公開となるため利用料金は高額となるものの、約款に基づいてNIMSが研究支援を行うため研究内容を外部に公開したくない場合に適する。大手メーカーの利用が多いといい、市場競争が激しい分野での研究に多く利用されている。なお、NOFでは利用できる設備の種類がARIMより多いため、より特殊な設備を利用したいという利用者にもNOFが適していると言えそうだ。 

「ARIM、NOFいずれの枠組みでも中小やスタートアップの企業さま向けには割引価格を設定しているので、大企業でない方々にもぜひ利用いただきたいです」と川田氏は話す。パッケージとプランにもよるが、資本金1億円以下の企業はその他の企業に比べて、利用形態によるが約5割〜8割程度の料金で利用できるという。 

タービンブレードの「一部だけ」を再現する鍛造シミュレータ 
─民間でも活用できる「技術開発・共用部門」最先端設備の例とは 

では最後に、ARIMやNOFで利用できる設備の代表例を紹介しよう。まず1つ目が「1500トン鍛造シミュレータ」だ。これは1500トン・1000℃超の恒温熱間加工が可能な鍛造試験機で、油圧プレス機や加熱炉、冷却装置を組み合わせて作られたNIMSオリジナルのものだ。この装置では、①温度と②歪み速度、③加熱・冷却時間などを正確にコントロールしながら鍛造加工を行うことができる。各要素の緻密な制御によって「実際の加工履歴の再現」ができるという点から、シミュレータと名付けられた。 

「この装置では0.01 mm/sという極めて遅いスライド速度にも対応しています。非常にゆっくりとした速度で精密な鍛造加工ができるため、割れやすく加工条件がシビアなニッケル系の材料開発などに役立っています」と担当者。温度変化や歪みなどの加工履歴を正確に再現できることで、例えば航空機エンジンのタービンブレードを「一部だけ」再現したサンプルなども作ることができるという。 

従来の試験片評価は理想的な条件で作られたサンプルを測るだけのため、実際に加工を行って製品にして初めて、予期せぬ割れや破損といった問題が浮かび上がることが多かった。これに対して、鍛造シミュレータを用いればあらかじめ実機の加工後に近い状態を模擬することができる。このような形で、高い信頼性を求められる材料の開発を効率化できるのが、この装置の最大のポイントなのだ。 

2つ目は「3次元アトムプローブ」だ。この装置はその名の通り、材料内での原子の立体配列を把握できるものだ。これを用いることで、ある材料の中に「どの原子が」「どこにどれだけ」あるかを把握することができる。従来の量だけの分析では見えなかった「組成の偏りや分布」までがわかることで、生産プロセスの改善などに特に大きな効果を発揮する。近年では、電池材料の開発に大きく貢献したという。 

3次元アトムプローブは透過型顕微鏡(TEM)と並んで、NIMSが誇る全国有数の最先端の設備だ。導入以来長らくNIMS内部での成果創出を優先してきたが、今年4月に専用ユニットが発足し外部開放をスタート。現在はNOFで外部からの利用が可能だ。7月には民間の活用を促すためのセミナーも実施したといい、今後の更なる利活用に期待がかかる。 

まとめ:民間事業者が積極的にNIMSの設備を利用することで、巡り巡って国内の材料研究がより豊かに! 

  • 発足25周年を迎えたNIMSは、日本の材料研究のトレンドを「面」で押さえ、自動自律実験やデータ駆動型研究でそのスピード感をさらに高めている。 
  • これらのデータ駆動型研究の核となるデータを集めるのが、NIMSが誇る最先端の共用設備と、それを活用したARIMなどの各種枠組みである。 
  • NIMSが主軸となるARIMやNOFといったパッケージでは、NIMSが誇る現場経験豊富な一流のエンジニアの支援のもと、民間事業者でも日本有数の設備を利用して材料研究が行える。 
  • 民間事業者の設備利用を促進するために、中小・スタートアップ向けの割引利用価格や、実機を用いたスクール、定期的なWebセミナーを開催している。 
  • 成果を公開せずに利用したい利用者は、NOFを用いることで約款に基づいた秘匿性の高い産官連携ができる。 
  • ARIMやNOFでは、鍛造シミュレータや3次元アトムプローブなど国内有数の設備も利用できる。 
  • データ収集にも最適化されたこれらの設備をフル活用することで、マルチマテリアルの時代においてもスピード感を持って材料・素材開発やものづくりができる。 

 

NIMSの共用設備を利用することで、民間企業にとっては「一流のエンジニアと日本有数の設備を、安価に自社の製品開発へ活用できる」というメリットがある。同時に社会にとっては、装置の活用で生まれた測定データ・研究ノウハウが集合知となってNIMSの材料研究を前進させ、日本の産業競争力を向上させる。つまり、ARIMやNOFといったパッケージは企業や研究機関だけでなく、社会全体にも大きなメリットがある仕組みなのだ。 

「現状では中小事業者の利用はまだ1割程度にとどまっているので、もっと活用いただけるよう今後も取り組んでいきます。ぜひ読者の皆様も、お気軽にお声がけください」と川田氏。 

マルチマテリアル時代のものづくりは、1社では超えられない大きな壁が立ちはだかることもある。このようなときに、NIMSは日本屈指の研究力を活かし、設備や研究リソースの共用を通じて民間事業者を力強くバックアップする。材料・素材開発で困った時は、まずは説明会やセミナーからNIMSの扉を叩いてみてはいかがだろうか。 

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