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紙の老舗メーカーが作るリチウムイオン電池セルロースナノファイバーセパレータ 特“種”紙で課題解決に導く

紙の老舗メーカーが作るリチウムイオン電池セルロースナノファイバーセパレータ 特“種”紙で課題解決に導く

特種東海製紙株式会社

掲載企業特種東海製紙株式会社

主要3品目
  • 機能紙

  • 工業用紙

2つの異なるルーツが多様な製品を生み出す老舗紙メーカー

特種東海製紙株式会社は、異なるルーツを持つ2つの紙メーカーが2007年に経営統合して成立した会社だ。古くは所有する静岡の山から木材を切り出し、大井川の流れを利用して運搬、製紙を行っていた東海パルプ。そして当時海外からの輸入に頼っていた特殊紙の国産化に取り組んだ特種製紙。共に創業100年以上を誇る老舗紙メーカー。その2つの流れを組む特種東海製紙は、多様な製品を製造している。

売り上げの4割以上は段ボール原紙やクラフト紙などの産業用紙。次いで20%ほどは特殊紙である。特殊紙とはさまざまな色柄やエンボス加工を施したファンシーペーパーや、さまざまな機能性が付与された紙のことだ。同社が初めて国産化に成功した用紙には、マークシートなどに利用されるOCR(光学文字認識)用紙をはじめ、今では当たり前に使用されている多くの製品がある。

紙メーカーには珍しくクリーンな生産環境を持っていることも強みだ。医療用の滅菌紙など、食品・医療などの用途で多くの実績を持つ。液晶用ガラスの製造工程内で使用される保護紙のシェアは世界トップを誇る。近年注目を浴びているのはノンフッ素の耐油紙だ。総菜、ベーカリー、スイーツなどの包み紙の引き合いが増えており、コンビニエンスストアやスーパーマーケットにも採用されている。他にも商品券などに用いられる偽造防止用紙も得意としており、ホログラムなどを紙に漉き込んで製造するため高い技術力を要する。製紙業で紙原料は「タネ・種」と呼ばれ、特別なタネで製造される同社の製品は日常生活や工業用途で広く身の回りに浸透しているのだ。

クリーン環境の生産工場

紙メーカーがなぜリチウムイオン電池セパレータを生み出せたのか                自社開発技術を生かしたセルロースナノファイバーセパレータ「フィブリック」

一方で、同社もペーパーレス化といった社会情勢の変化に直面している。将来的な紙の使用量の減少を見込んで、同社が新しい事業の柱として注目し、2009年から着手したのがリチウムイオン電池セパレータだ。 当初着手したのが、紙漉きの手法(抄紙法)を用いた方法だ。だが、リチウムイオン電池のセパレータは非常に目が細かく、抄紙法では難しいと判断。1から技術を開発したという。同社は100年以上紙を製造してきた会社だ。自社が持つ高度な叩解技術(紙繊維をほぐす技術)や、現在の会長がかつて研究開発していたミクロフィブリルセルロース(MFC)技術(紙繊維を高度に解繊する技術) を応用することで、他の研究機関や大学などとの連携ではなく、自社開発で研究開発を進めた。初めからセルロースナノファイバー(CNF)ありきで技術開発をしたのではなく、リチウムイオン電池のセパレータにはCNFが適していると判断し、持っている技術を生かして開発したという。大手電池メーカーでの評価には実機相当サンプルが必須であることから、2014年に実証試験機兼量産実証機に投資。そして2022年、リチウムイオン二次電池向けセパレータ「フィブリック」を上市した。

セパレータの製品イメージ

耐熱性・浸透性に強みのセルロース系セパレータ                        独自技術で薄膜化・微細孔に成功

リチウムイオン電池のセパレータのほとんどはPPやPEと言ったオレフィン樹脂系フィルムセパレータだ。同社のセルロース系セパレータの狙いは耐熱性が優れていることにある。樹脂では120℃ほどの高温で収縮・変形してしまうのに対し、セルロースは高温に晒されても安全性を担保することができる。また電解質の濡れ性が良いことで、電池性能が向上したり、素早く浸透することで電池製造時のタクトタイムを低減させることが期待できる。

競合するセパレータはセラミックコーティングによって耐熱性を高めたセパレータだ。同社のフィブリックであれば、同等の耐熱性を担保できる。コーティング工程を減らせることで、工程集約や価格面で対抗していきたい考えだ。さらに抄紙法で作られた不織布セパレータにくらべて非常に薄くできることもメリットだ。セパレータが薄ければ、設計自由度が上がり小型化にも貢献する。同社のフィブリックはセルロース微多孔膜とも言え、フィルムセパレータ並の細孔を持ちながら、セルロースの特性を持つ。これまで細孔径が大きいことでセルロース系セパレータを用いることができなかった用途、またオレフィン樹脂系セパレータには浸透し難い電解液を用いる次世代電池など、ニッチな分野の需要を獲得していきたい考えだ。

現在主流に使用されているリチウムイオン電池では、オレフィン系セパレータが高熱によって変形することを利用し、熱がかかった時に溶けて微細孔を埋めることで電気化学反応をストップさせるシャットダウン性能が電池の設計思想に組み込まれていることが多く、セルロース系セパレータが入り込むことが難しかったという。しかしこの設計思想はマストではない。異なる仕様の電池が開発されれば、耐熱性は強みになる。 電池市場は、現在でも年に15%の成長を遂げている。今後も更なる需要拡大と、技術革新が期待できる分野だ。ボリュームゾーンであるセパレータは低価格帯が主流のため、それよりもよりセルロースセパレータの強みや同社の技術力が生かせる、定置用蓄電システム(ESS)、データセンターバックアップ電源などの大型セル領域を狙っていきたいという。

その他、自社製品

新たな挑戦はアラミドペーパー                                紙で顧客課題を解決する技術力のブランディング強化を目指す

特種東海製紙では、次なるターゲットとしてアラミドペーパーの開発、量産を行っている。アラミド樹脂を繊維状にして作られたアラミドペーパーは、非常に強く、軽く、耐熱性や耐薬品性に優れていることから、重電、インフラ関係の電気絶縁用途に用いられている。アメリカで生まれたこのアラミドペーパーは、現在ではアジアの各化学メーカーでも研究開発が進められている。化学メーカーではなく、紙の会社だからこそ知り得た用途や顧客ニーズからアプローチした技術開発を行っていきたいという。ミクロフィブリルセルロース技術を応用した技術開発など、自社技術も活用していきたい考えだ。

「当社は特別な特殊紙を国内で高品質に作るということがそもそも会社のルーツにある。これまでやってきた歴史と整合性があります。アラミドペーパーは、これから伸びていく期待もあり、チャレンジしています」という。

特種東海製紙は、これまで多くの企業の課題を解決するため、顧客の特殊な用途・機能に特化した技術開発や研究を行ってきた。マーケットインで市場に好意的に受け入れられている製品もあるが、研究成果をアピールできず、非公開のものも多いという。だがこれからは、より発信力・認知度を高めていくことを目指す。

「特別な機能を持った紙で、何ができるかというのをご存じない方も多いと思います。ブランディングすることで、課題に直面したときに、紙メーカーに相談してみようという流れを作っていきたい。そして当社はこれまで通り、ピッタリの紙をご提案していくということはずっと変わりません。今後はさらに一歩進んで、自分たちで市場を作っていくことも目指していきたいですね」

紙一重という言葉はわずかな差を表す言葉だが、あるとないとではその差は歴然。紙1枚が、私たちの生活や製品の未来を変えるかもしれない。

 

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