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装置メーカーとしての設計力と、レーザー技術で実現した次世代の表面改質法―レーザーテクスチャリングがもたらす可能性

装置メーカーとしての設計力と、レーザー技術で実現した次世代の表面改質法―レーザーテクスチャリングがもたらす可能性

株式会社タマリ工業

掲載企業株式会社タマリ工業

主要3品目
  • レーザー溶接機

  • レーザー切断機

  • 微細加工機

従業員数

68名

愛知県西尾市の株式会社タマリ工業は、レーザー加工に特化した装置製作・受託加工メーカーとして20年以上の実績を誇る企業だ。売上の5割以上を占める自動車業界を中心に、重工業、航空宇宙、半導体関連産業など多様な業界にレーザーアプリケーションを提供している。近年ではEV化のトレンドを背景に電池やパワーデバイス向けの材料加工需要が伸長しているといい、切断・溶接といった熱加工に加えて表面への機能付加(レーザーテクスチャリング)まで実現できる同社の技術は業界内で高い評価を受けている。

レーザー加工装置メーカーとして現在その名を馳せる同社だが、1986年の会社設立当初は産業用装置製造メーカーとしてのスタートだった。その後2000年代初頭にファイバーレーザーが登場したことで「装置の中にレーザー加工機能を組み込んでほしい」というニーズが徐々に増加。2004年にはレーザー加工装置に特化した事業ポートフォリオに転換した。レーザー専業としての20余年の歴史に加え、それ以前も含めた長年の機械設計ノウハウの蓄積が同社の大きな強みなのだ。

長年にわたり一点物の装置を数多く手掛けてきた同社は機械加工設備や検査・測定設備も数多く保有しており、装置の設計だけでなく社内で装置製造・品質確認まで一貫対応が可能だ。加えて、様々なレーザー発振器やスキャナヘッド(レーザー光をミラーの動きで走査させる装置)メーカーとの取引があることを活かし、同社が保有しない部品についても顧客からの相談があれば取り寄せて装置に組み込むこともできるという。この対応力の高さが、同社の競争力を唯一無二の存在へと押し上げている。

タマリ工業の保有する実験設備

レーザーで表面に機能を与える「レーザーテクスチャリング」―円筒や曲面にも対応

同社が近年力を入れているレーザー加工技術のひとつに「レーザーテクスチャリング」がある。これはレーザー光で材料の表面に微細な凹凸構造を作成し様々な機能を付加する、いわゆる表面改質の一種だ。レーザーテクスチャリングでは、切断・溶接に用いるレーザーよりもさらに短いパルス幅の、超短パルスレーザと呼ばれる「フェムト秒レーザー」を用いて加工を行う。溶接や切断の数兆倍のピーク出力のレーザー光を、ピコ秒やフェムト秒(1フェムト秒=10のマイナス15乗秒、1000兆分の1秒)という短い時間で照射することで、光子のエネルギーを一瞬に集中させて表面に凹凸を作るという仕組みだ。材料に溶融という温度上昇が生じる前に気化させて加工が完了してしまうため、材質に熱ダメージを与えることなく表面パターンのみを作ることができる(非熱加工)のも大きなメリットだ。

レーザー切断の様子

同社がレーザーテクスチャリングで手がけた製品の代表例が内燃機の部品だ。シリンダーの内面に「ディンプル」と呼ばれる直径数十μmの円錐状の凹み(ディンプルキーをイメージすると分かりやすい)を規則的なパターンで配列することで、潤滑油による滑りを安定させ摩擦抵抗を小さくすることができる。ディンプル加工を施した内面では、通常のシリンダー内面の約半分の摩擦係数になるという。同社では様々な形状に対応した加工システムを独自開発し、Φ86mm~の狭いシリンダー内部でもレーザーによる表面改質が可能だ。

ディンプルパターンの例

このほかにも、照明のガラスにレーザーテクスチャリングを施すことで部品点数を削減しつつ光学特性を変えた例や、セラミック製品で静電チャック用の微小な「持ち手」をレーザー加工で製作した例など、同社では数多くの対応事例がある。コーティングやショットピーニングなど他の表面改質法とは異なり、「狙ったところにだけ」テクスチャリングを施すことができる点もレーザー加工の特長の一つと言えよう。

装置メーカーならではの機械設計力で高速加工を実現―金属3Dプリンタへのノウハウ活用も進行中

画期的な表面改質法ともいえるレーザーテクスチャリングだが、それぞれの凹みをレーザーで1つずつ加工するため従来は加工速度がネックとなっていた。そこで同社では、高速でレーザー光を振り分けることができる「ポリゴンスキャナー」を組み合わせたシステムを開発、最大100m/秒での加工に対応した。レーザーテクスチャリングとしてはかなりの高速加工となるこの速度域において、十分な精度を維持するためには材料を高速で的確に送る必要がある。この課題に対しても、同社は装置メーカーとして培ったテーブル制御・搬送技術で克服した。

同社は近年、金属3D造形機の活用にも力を入れている。まず第一段階として、三菱電機製の「AZ-600」を今年1月に導入。受託のテスト加工を通して金属3D造形のPRを行いつつ、将来的には自社でも金属3D造形機の製造販売につなげていくのが狙いだ。「専門メーカーの造形機は大規模なものが多いため、生産設備の一部分で金属3D造形を活用するような使い方がしにくいのが現状です。小型の3D造形機をモジュールとして組み込んで使用したいという需要は多いので、そこに応えられるような製品を将来的に提供したいと考えております」と同社担当者。レーザー溶接で培った技術を金属の3D造形にも活用しようとしているのだ。

どれほど性能の高いレーザー発振器やスキャナーも、装置が無ければ加工には使えない。40年間鍛えた機械設計力と多様なレーザーユニットを自在に試せる対応力を武器に、株式会社タマリ工業は今後も製造現場の課題を解決していくだろう。

新しく導入された3D造形機
3D造形機による造形サンプル

製品情報

  • レーザー微細加工機(IR&UV)

  • IR&BLUE レーザー溶接機

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