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めっき技術を基盤に、精密電鋳技術とバイオミメティクスの組み合わせで社会課題を解決する

めっき技術を基盤に、精密電鋳技術とバイオミメティクスの組み合わせで社会課題を解決する

スズキハイテック株式会社

掲載企業スズキハイテック株式会社

主要3品目
  • 電動車部品のめっき加工​

  • パワー半導体&アナログ​半導体の外装めっき加工​

  • MEMS精密電鋳・バイオミメティクス電鋳金型

従業員数

267名:(男性:165名、女性:102名)(2026年2月1日時点)

山形県山形市に本社を構えるスズキハイテック株式会社は、1914年創業の老舗企業だ。リヤカー・自転車部品へのめっき工場として創業した同社は、ミシン→オーディオ機器・家電→自動車→半導体と時代に合わせてアイテムを変えながら、創業以来112年間めっき一筋で歩んできた。現在では自動車業界と半導体業界を2本柱に、国内3拠点で直近合計50億円以上を売り上げ、中期計画で100億円企業を目指す実力派だ。近年では多文化共生にも力を入れており、合計267名の社員のうち約4割が外国籍となっている。中には国内の大学で博士号を取得したエリート外国籍社員も在籍するという。

量産規模で東北トップクラスの実力―徹底した自動化とDX化で自動車業界と半導体業界の品質要求にも対応

スズキハイテック株式会社の強みは、自動化とDX化に裏付けられた卓越した生産能力だ。同社が手掛けるハイブリッド自動車向けインジェクター部品のめっき製品は2種合わせて1日に約6万個にものぼるが、これらはすべて本社工場の自動化設備で処理されている。めっきの材質は均一な膜厚管理が難しいとされる硬質クロムめっきだが、同社ではめっきから検査までを自社開発の設備によって全自動で行っており、これらの設備は24時間体制で稼働している。すでにメーカー内グローバルシェアNo.1を誇る同社の電動車部品めっき製品は、今後は生産能力を倍増させることを目指してさらに設備を拡充する予定だという。さらに、大手メーカーの厳しい品質要求にも対応できるよう製品にはすべて2次元コードを印字しており、製造日やロットだけでなくめっきの条件に至るまでトレーサビリティを保証している。

半導体製品の対応能力も他社と一線を画する。のどかな田園地帯に囲まれた尾長島工場の中には20m級の自動化ラインが整然と並んでおり、これらは世界最先端クラスの半導体工場とほぼ同一の物を一部カスタムして導入したものだ。同社が扱うのは半導体の後工程、つまりリードフレームへの錫めっき。100mm幅の大型のものまで対応しており、このサイズに対応した設備を持つ工場は国内でも数少ない。半導体としての信頼性を大きく左右するめっき後の前処理にも力を入れており、従来の電解や浸漬に代わる独自の半導体樹脂バリ取り方式「デラミレスプロセス」を開発。微細化が進む半導体部品のバリ取りも高精度に行う技術を持つのも強みだ。

同社がめっきを手掛けた半導体部品は国内外の最大手半導体メーカーのチップに用いられており、世界的に有名な某電気自動車のパワー半導体にも同社が手がけた製品が使われている。品質の高さも折り紙付きで、自動車向け部品の国際品質規格IATF16949を取得している。

めっき×フォトリソグラフィによる微細パターン作成―MEMS精密電鋳技術で幅広い分野に挑戦

量産メーカーとして圧倒的な実力を誇る同社だが、近年ではめっき技術を活かした技術開発にも取り組んでいる、そのひとつがMEMS精密電鋳技術だ。電鋳とは、微細な形状を持つ母型上のレジスト形成構造の表面にめっきを施すことで、薄板状の金属の表面に形が転写されるというものだ。同社では微細構造の製作にフォトリソグラフィを用いることで、切削やレーザー加工では難しい最小サイズ1μmのパターン作製を可能とした。このフォトリソグラフィと精密電鋳の組み合わせは同社独自のMEMS技術で、母型上の3次元構造のレジスト形成に用いる描画装置も最先端の物を保有しているという(注1)。

この精密電鋳技術を応用して同社が手がけたのが医療向けのネブライザ(噴霧吸入器)向けの金属メッシュだ。パワーが小さい携帯用ネブライザにおいて粘性の高い液体が噴霧しにくいという課題に着目した同社は、山形大学・山形県工業技術センターとの産学官連携プロジェクトとして、最適な穴形状を持つマイクロミスト発生用金属メッシュの開発に取り組んだ。まず同社独自の流体解析技術により最適なミストのシミュレーションが行われ、そこで導き出されたのが“噴霧粒子径3μmの煙のような微細ミスト”だった。続いてこれを実現するための金属メッシュの設計も行われ「すり鉢状の入り口と辺の長さが3μmの三角穴の出口」を持つ金属メッシュが最適と判明。実際の生産過程ではレジストを2段にする離れ業も確立した。「通常の1段レジストでは、穴の径は電鋳加工の極めて高い精度に依存するため、均一な穴を実現するのは難しいです。そこで設計で求めた3次元穴形状を2段レジストで作り出す新たな製造プロセスを開発し、薬液に合わせた最適なマイクロミストを発生できる金属メッシュの製作を可能としました」と同社事業開発本部長の齋藤氏は説明する。これらの研究開発を通して、超微細加工の技術を磨き、貫通穴加工・電鋳金型・電鋳構造体等の様々な市場ニーズに応える微細加工の事業を行っている。

精密電鋳技術をバイオミメティクスにも応用―表面への機能付加や構造色の再現など用途は様々

同社が研究開発を進めるテーマはほかにもある、それがバイオミメティクス(生物模倣)だ。山形大学でバイオ工学を専攻したペトルス氏(インドネシア出身)率いる8人のチームでは、蛾の目やフナムシの脚、そしてモルフォ蝶の羽に至るまで様々な構造をMEMS精密電鋳を用いて再現する試みを行っている。

例えば、フナムシの脚には親水性と疎水性を持つ2つの構造があるが、これを模倣することで液体を狙った方向に自在に瞬時移動させることが可能となる。同社では電鋳による金型製作と樹脂成形の組み合わせでこれを安価に量産する方法を研究中で、将来的にはマイクロ流路などのデバイスに実装することを目指している。さらに、フナムシの脚構造とナメクジのぬめり成分を組み合わせることで素材表面に着雪防止機能を付加する研究も並行して進めており、こちらは自動運転車などのセンサーに応用が期待されている。

令和7年度からは山形大学・山形県工業技術センターとの産学官連携でモルフォ蝶の羽が持つ構造色の研究もスタートした。このプロジェクトは「自然界に生息するモルフォ蝶の翅が発色する光の干渉・回折・散乱等の物理現象を、数値解析技術により誰でも工業的に利用できるような生体模倣技術」という設計指針のもと進められており、自動車分野、化粧品及び一般消費者や産業印刷業界向けの構造色顔料インク、紫外線で退色しない油絵具、その他の加飾業界向けソリューションなど、幅広い分野で利用される環境負荷の少ない着色要素技術を確立することを目指している。このようなMEMS基礎研究と無機・有機積層技術をベースにした革新的なナノテクノロジー技術開発を通して、持続可能な社会における循環型経済の推進に貢献するのが同社の長期的なビジョンだ。

2026年には創業112年を迎えたスズキハイテック株式会社。スローガンである「YES!!ハイテック!!」を合言葉に、100年以上の実績を誇るめっき技術を核に社会課題を解決する同社の道のりはまだ始まったばかりだ。

※注1:フォトリソグラフィとは写真の現像技術を応用した技術で、感光性の液体樹脂(レジスト)に描画装置で光を照射→硬化させ形状を作製するというものだ。半導体の中核技術となるフォトリソグラフィだが、微細な形状を作り出すことができるため近年様々な産業分野で応用が進んでいる。スズキハイテック株式会社では最先端のMEMS研究開発で用いられるマスクレスレーザー描画装置を導入し、μmオーダーの3次元形状を持つ電鋳母型の製作を可能としている。

掲載会社情報

スズキハイテック株式会社

所在地
山形県山形市銅町2-2-30
TEL
023-631-4703
FAX
023-631-4706
URL
https://www.sht-net.co.jp/

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