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試作開発支援から進化する“脱溶接”と“アクリル置換” ― 溶接・板金プレスを原点に持つ浅野の挑戦  

試作開発支援から進化する“脱溶接”と“アクリル置換” ― 溶接・板金プレスを原点に持つ浅野の挑戦  

株式会社浅野

掲載企業株式会社浅野

主要3品目
  • 試作板金部品

  • 樹脂射出成形金型

  • 複合材成形

従業員数

252名(2023年4月1日現在)

創業80年老舗溶接所が取り組む脱溶接 

 「課題解決を前面に押し出したのは、実は最近なんです」株式会社浅野の代表取締役社長 浅野圭祐氏は話す。創業80年、溶接所として創業した同社は、自動車メーカーをメイン顧客とし、支給された図面をもとに試作を行うビジネスモデルだ。自動車に用いられる板金部品は自動車ボディ骨格、外板試作プレス部品、COMP品などほぼ全て実績を持ち、実験用車両など自動車1台まるごと組付けまで行って納品する。しかし近年の試作レスや部品の共有化という情勢の変化から、新技術や工法の開発に加え自動車以外の新分野の開拓、さらに次世代素材にも取り組んでいる。2024年4月に社長に就任した若き新社長は、すでに多くの改革を社内にもたらしている。 

 浅野のコア技術は溶接だ。高いハンド溶接技術に定評がある。だからこそ、溶接を取り巻く環境負荷、人的な健康負荷といった課題を解決していかなくてはならないと浅野社長は話す。熱歪みの精度管理や工数増を背景に溶接を減らしたいという顧客のニーズにも合致する。その結果として、まもなく国際特許を取得する溶接レス工法の技術構築や、日本古来の宮大工の木組みを金属に応用した自社独自の溶接技術の開発を行っている。溶接レスEVプロジェクトの一環として同社が開発したトレッドミルバイクは、移動とエクササイズとサステナブルというコンセプトで、歩く動力を推進力に転換する新しいモビリティである。製造工程で溶接は一切使われておらず、展示会では大きな反響を呼んだ。また、工場内の手段としての活用を視野に入れた商品化の検討も進めている。産官学とのコラボレーションにも積極的に挑戦し、特殊な設計技術も取り入れた製品開発も行っているという。 

溶接を一切使用しないトラッドミルバイク 

プラスチックや次世代金属への代替提案
新たな素材へ積極的に取り組む 

 EV化・軽量化という課題に対し、次世代素材や金属以外の素材の工法開発にも取り組むことでさまざまなアプローチから提案を行っているのだ。射出成形用金型部門を持っているため、これまで金属だったパーツをCFRTP(熱可塑性炭素強化プラスチック)などの新素材に置換。またアクリル樹脂のプレス成形技術の構築など、従来持っていた金属加工技術とプラスチックを融合させた新技術の提案を行っており、自動車業界を始めとして熱い注目を集めている。電装化により高まる電磁波遮断のニーズに応え、シールド効果が高く、軽量な銅箔(0.3mm厚)をプレス加工した電磁波シールは、すでに農業用ドローンなどで導入されている。

 注目の素材はマグネシウムだ。日本では鉄の代替金属としてアルミニウムが有力だ。しかし浅野氏が中国視察に訪れた際に驚いたのが、中国では鉄やアルミに加え、EV車におけるマグネシウムの実用化が進んでいることだ。鉄の1/5、アルミニウムの2/3という軽さでありながら、振動を吸収する特性を持つマグネシウムは、従来の懸念であった耐腐食性も改善され、特に振動がかかる部位に適しているという。マグネシウムは割れやすく取り扱いに技術を要するが、同社では高級カメラの外装部品にマグネシウムを使用していた実績を持つため、その知見をプレスに生かすことで割れない成形品の製造に成功している。ほかにもチタンやインコネルなどの新素材にも取り組む。今後、日本でこうした次世代素材がどれほど浸透していくかは未知数だが、これまでのノウハウを次世代素材・新技術に生かすことができるのが同社の強みなのだ。 

 浅野社長が医療業界に知見を持つこともあり、小児用人工心臓の開発など、会社としては新しい業界の開拓にも余念がない。海外展開も視野に入れている。同社は新工法・技術の開発や試作だけではなく、その先の量産性までを考慮した提案を行う。「お客様のニーズを明確にし、お客様が達成したいゴールを私達の成果として掲げています。我々はモノ作りを活用して、世界や社会が少しでも成長し、発展し、幸せな方向に進んでいくように導きたい。、そしてその過程で、私たち自身もしっかりと我々も幸せになる。そんな会社をつくっていきたい」。浅野氏の言葉には、情熱がある。 

代表取締役社長 浅野圭祐氏 

製品情報

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