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積極的な設備投資で、半導体を戦う

積極的な設備投資で、半導体を戦う

株式会社マルマエ( 鹿児島県出水市)

掲載企業株式会社マルマエ

主要3品目
  • 半導体製造装置部品

  • 有機 EL 装置部品

  • 太陽電池製造装置部品

従業員数

326人 他派遣社員 26名

年間売上高
68.7億円

 「大きな事業のために多額の設備投資を行っていましたが、リーマンショックによって夢のように消えてしまいました」― 株式会社マルマエ代表取締役社長の前田俊一氏は、そう淡々と話した。

 ソーラーパネル大手メーカーから引き合いがあり、巨額の設備投資に動いた矢先の出来事だった。同社は機械加工を主とする企業としては珍しく、株式を公開している。2004年に日本証券業協会によるグリーンシート銘柄への指定、2006年には東京証券取引所マザーズに株式を上場したのは、FPD(フラットパネルディスプレイ)分野の大型化に対応するため大規模な設備投資が必要だったためだ。

 しかし、2008年のリーマンショックの影響を受け、事業再生ADR手続を行った。金融支援を受けながら会社を立て直し、当初5年の計画を3年半で達成。2015年には事業再生計画を終了した。2018年に東京証券取引所市場第二部、同11月には東京証券取引所市場第一部へ上場した。同社は果敢にも更なる設備投資を続け、再成長することに成功したのだ。

 マルマエの再成長を支えたのは、FPDから転換した半導体製造装置の部品加工だ。同社の売り上げ70%が半導体分野、10%程度はFPD分野。同社の真空パーツは繊細な加工技術を必要とする。半導体製造装置の製造におけるプラズマ工程では、些細な要素も品質に大きな影響を及ぼす。つまり同社に求められるのは、量産品であっても全て同じ寸法を実現する品質。そこで同社では、三次元測定機で全ての寸法を測ることで品質を保証している。量産品だけでなく、何種類も作られる試作への対応も行っている。マルマエは複数メーカーの部品を平行して製造しているため、セキュリティ対策には万全を期す。社長ですら、社内に入れないエリアがあるというからその徹底ぶりは驚きだ。こうした半導体に特化した製造環境が顧客の信頼にも繋がり、海外からの引き合いも多い。

 同社では多彩な設備を導入し、さまざまな工程を自社内でワンストップで完結できるのが強みだ。FPD分野では国内最大規模の設備を誇る。トレーラーも自社で保有し、輸送も行っている。リーマンショック以前、同社では多能工化を進めていたが、作業が属人化してしまうことで、品質や作業時間のばらつきが出てしまうことが課題であった。そこで同社では人に頼らない体制へと変化。高い技能を持つ人材の負担を軽減し、有期雇用をうまく使うことで生産量の増減にも対応できるようになった。

 前田氏は語る。「半導体は新規参入の難しい分野です。変動も大きな業界ですが、まだまだこの分野で戦えると思います。人工衛星など新しい分野にもアンテナを伸ばしていくつもりです」。リーマンショックを生き抜いたマルマエは、多少のことでは揺るがない。

代表取締役社長前田俊一氏は元バイクレーサー。機械加工もバイクの部品加工から始まった

製品情報

  • 燃料計流路部品

  • 電極ガス穴テストピース

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