成長企業の経営戦略

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創意工夫の複合加工

創意工夫の複合加工

株式会社モハラテクニカ
代表取締役 茂原 亮太 氏

掲載企業株式会社モハラテクニカ

主要3品目
  • 精密レーザー加工品
  • 精密板金加工と機械加工の複合加工品
  • 半導体製造装置関連部品
従業員数
41人
年間売上高
8億円

プレス加工から板金加工へ

 取材中、現場で社員と語り合う模様を撮影することになった。茂原亮太氏が声をかけると、若い社員がすぐに笑顔でやってきた。「こういう時、社員が躊躇せず積極的に参加してくれる現場の雰囲気をつくりたかったんです」と茂原氏は語る。

 1958年、茂原氏の祖父・宏氏が、プレス加工業の茂原製作所を個人創業。主に自動車のランプ周りの部品の製造を行った。

 74年に法人化し、株式会社茂原製作所となる。プレス加工一本の親族経営に近い会社だった。ところが83年に茂原氏の父・純一氏が入社し、板金加工への転換を進言。宏氏と大ゲンカの末、これを納得させた。そして銀行から金を借り、板金機械を購入する。「白物家電の発注が海外に流れ、仕事が減ってきていたのは確かです。しかし、それより父は、同じ作業を繰り返すプレス加工より、その都度新しく創造する仕事がしたかったんです」。

 純一氏は営業先で、「忙しくて話を聞く時間がない」と言われれば2時間座り込み、仕事をもらえるまで帰らないような粘り強さをみせた。やがて客先も増え、市内でいち早くレーザー加工機を導入。98年、純一氏は社長に就任した。2000年、現在地に新工場を設立し、株式会社モハラテクニカに社名変更した。

 同社の得意とする加工は、精密板金加工と精密機械加工を組み合わせた複合加工だが、その礎(いしずえ)となったのは、プレス加工時代にプレス金型をつくっていた技術である。まさに、宏氏と純一氏が2代で築き上げた技術が根底にあるのだ。

全国の製造業経営者から学んだ営業

 高校生の茂原氏は、将来体育教師になるのを夢見るサッカー少年だった。ところが、大学生の兄が家業を継がないと宣言したことで進路変更を迫られる。

 「祖父と父が築いた会社を放ってはおけませんでしたから」と口にする一方で、夜はいつも外で飲み食いし、高級車を乗り回す父の姿を見て、自分も社長になればあんなふうになれるかも……という邪(よこしま)な考えもあった。

 大学3年の秋からインターンシップによりNCネットワークで修業を開始。ほぼすべての履修単位を取得していた茂原氏は、大学4年次は毎日出社して営業を学んだ。

 「営業先は社長ばかり。その相手に納得してもらい、契約を取らなければなりません」

 腰掛けといえばそうなる仕事だ。けれど、「単純に一番になりたかった」彼は、営業に邁進(まいしん)した。そうして、普通では会うことがかなわない数多くの素晴らしい経営者と言葉を交わす中で大いに刺激を受けた。

 14年に27歳でモハラテクニカに入社。検査部門に配属され、成果品と図面を突き合わせることで図面の見方や公差を学んだ。その後、協力工場と納品先を回る業務に就き、名前と顔を覚えてもらうよう努めた。

 入社してから1~2年はつらかった。経済面がである。純一氏の有無を言わせぬ勧めによって将来自宅を建てるための土地を購入することになった。相手側の条件は、7年で完済することである。結婚し、子どもがいた茂原氏は、給料の大半を返済に充てなければならなかった。こうなったら自分の力を純一氏に認めさせ、給料を上げてもらうしかない。それがモチベーションになった。

 「10年は現場をやれ」と純一氏に言われ、ワイヤーカットをしていると、NCネットワークの営業で知り合った社長から、「これやらない?」と仕事の声がかかった。純一氏に見積もりを依頼すると、「俺だって忙しいんだ!自分でやれ!」と怒鳴られた。

  NC機の前にいると、自分がつくった見積りについて問い合わせの電話が何度もあって、そのたび持ち場を離れなければならない。現場の社員からは、見積りに専念してほしいという声が上がった。茂原氏は営業に集中することとなった。

新工場がオープン

 展示会やWEBサイトによる営業展開で茂原氏が新規に獲得した仕事と、旧来からの仕事は線引きされるようになった。15年には新規の仕事が、全体の売上の3分の1にまでなっていた。

 茂原氏はリクルートにも力を入れた。純一氏からは、「おまえの社員はひとりもいない。今いるのは、みんな俺の社員だ。人を取りたいのなら、自分で面接して自分で取れ」と言われている。

 入社時、23人目の社員となった自分にいちばん近い先輩が30歳だった。早くから求人に携わった茂原氏は、スタッフの若返りを図った。

 純一氏に末期のがんが見つかってからは、2年半をかけて社長業の引き継ぎが行なわれた。すでに半分は茂原氏の営業による新規の仕事になっていたため、現場についてはほぼ必要なく、金融機関などの引き継ぎに多くが割かれた。

 21年、茂原氏が代表取締役に就任。大きな投資の際には、金融機関からの借り入れに自分が最後の印をつく。その責任の重さを実感している。

 本年2月から稼働した第二工場の最上階は、キッチンやシャワー室を備えた社員らのコミュニケーションの場になっている。

 「社員が安心して長く勤められる会社を目指しています。いつか社員食堂をつくって、あったかい食事を出したいと思っているし、若い女性社員も多いので託児スペースも備えたい」と笑顔を覗かせた。

 「それから『創意工夫の精神で新しいことに挑戦し続ける』という経営理念を社員と共有したいんです。会社が目指すべき姿がここに集約されていて、社員みんなが同じ方向を見る指針になってくれるはずです」。

経営者の素顔

 小2の息子がクラブチームでサッカーをしていて、その送り迎えが最優先ですね。あとは会社の近くに温泉を備えたジムがあって、昼休みに通うのが習慣化しています 。リフレッシュしますよ。

掲載会社情報

株式会社モハラテクニカ

株式会社モハラテクニカ

所在地
〒370-0016 群馬県高崎市矢島町 326-1
TEL
027-352-1700
FAX
027-353-0537

製品情報

  • スマホ操作も可能な電気スタンド 板金屋モハラテクニカの精密板金加工

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