業界特集
株式会社牧野フライス製作所
インサイド営業部 ゼネラルマネージャ 黒﨑 一成 氏
掲載企業株式会社牧野フライス製作所
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主要3品目
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微細 精密加工機 iQ300/iQ500
超精密ワイヤ放電加工機 UPN-01/UPV-3
レーザ加工機 LUMINIZER
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従業員数
4755 人(連結)
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年間売上高
- 2253 億 6000 万 円( 連 結 ) (2024 年 3 月期)
株式会社牧野フライス製作所(以下、マキノ)は多岐にわたる業界に工作機械を提供しているが、中でも需要が急速に高まっているのが半導体関連と電気自動車(EV)関連だ。2021年以降、コロナ問題が少しずつ収束に向かうにつれて戻ってきた受注増に対応すべく、生産効率化や増産といった策を講じながら、増収・増益につなげていっている。その策の一環としては、210億円を投じて山梨県富士吉田市内の新工場建設を進めており、2026年1月の稼働開始を予定している。
金型の複雑化と自動化ニーズに対応する
金型関連で需要が高まるEVにおいては「部品点数の削減」や「軽量化」がトレンドだ。「最近は、E Vのダイカスト金型では、バッテリーケースや、大型車台部品の一体成形技術である『メガキャスト』、プラスチック金型ではライト一体型のバンパー、テールランプ一体型のバックドアといった一体成形や成形品の薄肉化などに対応している」とマキノのインサイド営業部ゼネラルマネージャの黒﨑一成氏はユーザーの動向について述べる。金型が大型化する分で精度が粗くなるわけではなく、むしろ複雑な分割金型で構成していることから精度はますます厳格になる。
こうした複雑な金型部品加工を、限られた時間と人員で、しかも精度や品質を落とすことなくさばかなければならない。特にワイヤ放電加工は、金型加工精度を左右するファクターのひとつでありながら、現場経験の浅い若手オペレーターが扱うことも多い。マキノのワイヤ放電加工機で「U6」は、こうした現場の課題に応えようとするものだ。「大型化した金型の鋳抜きピンやコアピンを装着するガイド部は高精度にワイヤ放電加工で加工する必要がある。加工する部分の厚さは100mm前後であっても金型自体の厚さが400mmまで及ぶ場合、ワイヤ線を拘束する上下のワイヤガイド間の距離が離れてしまい、加工安定性を確保するために真直度が重要」と黒﨑氏。U6は、噴流液圧の自動調整機能や、ワイヤに押し付ける給電板上下をガイドで支える独自方式機構などを搭載(図2)して真直度に徹底的にこだわる。400mm程度の板厚に対するワイヤ放電加工は100分の1mmの寸法精度で行える(「GSカット」:図1)。またU6は、熟練のエキスパート納得の高度な機能と合わせ、オペレーターでも簡単に使いやすいUIや機能も備えており、自動化機能も充実していることが特色だ。
実地とデジタルでマキノのことを広く知ってもらう
実地でのユニークな取り組みが 、2021年から実施している「キャラバントラック」だ。トラックに同社の大型加工機械の加工サンプルを乗せて要望があった工場にトラックで赴き、敷地内に駐車して説明会を開催。工場の現場担当から経営者まで機械を囲んでワイガヤと話をする。「現場の意見をくみあげて設備投資をするお客さまが多い。その場で一気に議論が片付くからなのかほとんど商談につながっている」と黒﨑氏は言う。
コロナ禍で始まった無料オンラインセミナーは、2023年度は毎週2回実施し、参加総数は2万人近く及んだ。大変好評であり、コロナ問題が落ち着いた現在も継続中だ。
X(旧Twitter)やYouTubeなどを活用したマキノファンを増やす活動も行っている。U6の加工精度について、Xではミリではなくあえてセンチ単位で伝えたところ反響が大きかった。またものづくりYouTuber「なんとか重工」とのコラボ動画で面白い加工デモを通じてU6の凄さを分かりやすく伝えるなど、ニッチな世界ならではの情報発信をしている。