業界特別企画

公開日: / 最終更新日:

【対談】工作機械メーカーのトップが語る2026年、日本製造業の方向性

シギヤ精機製作所×ブンリ

株式会社NCネットワーク代表取締役社長 内原 康雄 氏 (以下、内原) 本日は、円筒研削盤の専業メーカーとして100年以上の歴史を持つシギヤ精機製作所、そして切粉処理装置の分野で国内唯一の専門メーカーであるブンリのトップのお二人にお話を伺います。産業が複雑化・多角化する今、工作機械の専業メーカーとして何を拠り所に生き残ってきたのか、そしてこれからどこへ向かおうとしているのか。

本企画では、『工作機械メーカーのトップが語る2026年、日本製造業の方向性』と題し、現場と経営の両面から語られる実体験を通じて、読者の皆さまと一緒に日本製造業のこれからの在り方を考えていきたいと思います。ファシリテーターを務めます内原です。お二方、本日はよろしくお願いします。

それぞれの会社について教えてください

経営の危機はありましたか?

田代氏 昭和40年代のオイルショックの時期には、機械の注文がゼロになりました。そこで日常の業務を生かしてできる牛舎や豚舎、軽量鉄筋アパートの建設などでつなぎました。また機械の注文が入ってくるようになり、そのまま建設業を続けるか、機械に戻るかを考えたときに、やはり機械から始まったのだから機械へ戻ろうということで戻ってきました。今でもちょっとしたものならば自分たちで作ろうという精神が脈々と受け継がれています。

鴫谷氏 当初は汎用機を製造しておりましたが、1980年代ごろから自動車メーカーともお取引が始まりました。そのころから汎用機ではなく、ご要望に合ったカスタマイズを行った専用機を開発・製造する形態に徐々に変化していきました。工作機械というのは本当に山、谷があります。苦しい時代も当然ありましたが、日本の自動車産業の隆盛と共に、当社も少しずつ規模を拡大してまいりました。

海外展開はされていますか?

鴫谷氏 さまざまなニーズに応えることで、非常に機械の種類も増えてきました。種類を増やすだけでなく、より多くのお客様に届けたいという気持ちから、1990年代はアメリカ、2000年代に中国、2010年代にはタイと販売会社を設立しています。2016年には台湾に製造工場も設立し、製造・販売を行っています。

田代氏 当社はタイにオフィスがありますが、アジアだと中国、タイ、韓国が多い。最近はインドも増えています。アメリカとインドのコンベヤメーカーとライセンス契約を結び、それぞれの事情に応じた製品の技術供与という形で展開しています。今後も双方にとってメリットのある形で続けていければと思っています。ヨーロッパは付き合いの長い会社との関係を大切にされるとのことなので、新規参入は難しいと感じていますが、どうにか伝手をつくれないか挑戦しているところです。

現在の市場動向や、課題について教えてください。

鴫谷氏 2020年位までは自動車関連のお客様が売上の多くを占めていましたが、自動車のEV化の影響で受注は減少しており、新しい分野の開拓が必要となっています。今一番忙しいのは、ロボット用減速機部品の加工に使用される研削盤です。当社が担っている部品は、CX制御によって非真円部を加工する高度な機械です。また精度とスピードの両立が求められるので、それを可能とするメーカーは限られます。ロボット関連はまだまだ市場が拡大すると考えています。またアメリカではデータセンター向け小型発電機のニーズが上がっていますね。他にもテーブルトラバースタイプの長さ8mサイズを加工できる円筒研削盤がありますが、この大きさのものを製造できるメーカーが日本には他にないので、需要は高止まり状況にあります。納期が長くなってしまってお客様にはご迷惑をお掛けしております。また、一台で複数工程ができる機種のラインナップを増やしたり、シギヤプラスと言うプラスアルファの技術を提供する試みを行っています。

田代氏 切粉処理というのは、やはり人がやりたくない仕事。製造業の現場は3Kではもはや人が集まりませんので、自動化しなくては成り立たないというのが現状です。環境配慮への意識が高まるにつれ、現在ではより高度な処理が必要となっていますので、機械的だけではなく、化学的な方面にも開発範囲を広げています。どう処理するかは以前よりずっとシビアになっています。加えて、マシンと連動し、切粉やクーラントがどういう状況か、クーラント濃度、ペーハー、液温、汚染度などを検知してアラートを出すようなインテリジェントな機能で付加価値を出していきたいと奮闘しているところです。

鴫谷氏 仰るようにクーラントの廃液処理というのは、すごく手間とコストがかかる。なので、是非画期的な方法を考えてもらって、提案してください。クーラント装置の良し悪しにより、機械への評価もかわるので、一緒に取り組んで頂ければと思います。

田代氏 ワーク材質や加工条件などにより、処理の方法はお客様の仕様によって変わります。現代はさまざまな素材があり、加工内容も高精度の複合加工機などへ進化しており、それに対応するということ。それもお客様が納得していただけるようなレベルで対応するというのが我々のテーマですね。

鴫谷氏 円筒研削盤は、高い寸法精度と真円度、面相度が求められ、加工速度などの要求を達成するには、ワーク材質や剛性、加工条件、ダイヤや砥石の摩耗速度などいろいろな要素が関係します。そのため、開発・設計においてもバランスが非常に重要となってきます。AIを使って、ワークの材質やそれにマッチする砥石などの理想の加工条件を出せないかと数社で協力して取り組んでいましたが、非常にハードルが高いと感じています。

最後に、機械加工メーカーさんに一言お願いします。

田代氏 現代はいろいろな加工が出てきていて、いかに対応できる製品を出していくかが求められていると思います。お客様に納得いただける製品を作っていくためには、やはり一緒に作っていくということも必要だと考えています。製造現場の不具合をゼロにすることで、貢献していければと思います。

鴫谷氏 テクニカルセンターの設備を充実させて、お客様のテストカット要求に応えられる準備をしています。今やっている加工がしっくりこないと考えている企業様は、ぜひ気軽に声をかけてください。当社は販売だけでなく、アフターサービスを重要視していることが強み。そうした姿勢も、ぜひ購入のご判断の材料にしてもらえたら。

内原 本日の対談を通して、専業メーカーとして積み重ねてきた技術や判断が、確実に次の成長につながっていることを強く感じました。市場や製品は変化しても、現場に向き合い続ける姿勢や、お客様と一緒に最適解を探る姿勢は変わらない。その中で、海外展開や自動化、環境対応、AI活用といった新たな挑戦にも着実に取り組まれている点は、多くの製造業にとって心強いメッセージだと思います。本日の話が、読者の皆さまが自社の強みを見つめ直し、次の一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しく思います。田代社長、鴫谷社長、本日はありがとうございました。

 

こちらの記事もおすすめ
pagetop