
業界特別企画

SHINJO VIETNAM COMPANY LIMITED
掲載企業SHINJO VIETNAM COMPANY LIMITED
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主要3品目
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四角溶接ナット
六角溶接ナット
フランジナット
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従業員数
52人
ハノイ近郊、フンイエン省の工業団地に拠点を構える新城ベトナム(SHINJO VIETNAM)は、2007年に設立された溶接ナットの専門メーカー。日本の新城製作所が展開する海外生産拠点の中核として、日系・地場を問わず、長年にわたり高品質な締結部品を供給してきた。同社のGeneral Directorである奥田篤志氏に、ベトナム事業の現状とFBC商談会にかける意気込みを聞いた。

100%の画像検査で“不良ゼロ”を実現
主力製品は、冷間圧造で成形される四角溶接ナット。小型ながら、安全性や耐久性を支える要部品で、主に二輪車向けに供給されている。表からは見えにくい存在だが、品質への要求は非常に高い。
こうした市場において、新城ベトナムは100%の画像検査による全数確認体制を構築。量産品であっても品質に一切妥協せず、その姿勢が顧客からの厚い信頼に結びついている。「当社の製品は非常に小さく、かつ膨大な数量がありますが、すべて画像選別機による全数検査を行っています。不良ゼロの実績は高く評価されています」と奥田氏は語る。
同社が採用する冷間圧造技術は、ベトナムではまだ一般的とはいえない。素材を削らず、金型に圧力をかけて成形するこの工法は、大量生産に適し、切削加工に比べて素材ロスが少ない。コストや納期の面でも優位性があり、安定供給を支えるこの技術こそが、同社の大きな強みだ。
販売構成は、ベトナム国内30%、ASEAN地域30%、北米市場30%。国内外の需要にバランスよく応えている。


FBC出展を機に「口コミ」で販路拡大
同社がFBC商談会に初めて出展したのは8年前。それ以来、毎年欠かさず参加を続けてきた。当初は、自社の認知度向上を目的とした出展だったが、継続するうちに販路拡大の手応えも感じられるようになった。
「日本では調達先を探す際、まずインターネットで検索するのが一般的ですが、こちらではZalo(ベトナムで広く使われているメッセージングアプリ)を通じた口コミが大きな影響力を持ちます」と奥田氏は語る。
Zaloには、工業団地や業種、地域ごとのグループチャットが数多く存在し、「こういう部品を探している」「こんな課題がある」といった投稿が日常的に飛び交っている。展示会の場で即座に受注が決まるケースは多くないが、配布したカタログがZalo上で情報源として共有され、後日、新城ベトナムへの問い合わせにつながる例が増えてきたという。
展示会というリアルの接点を起点に、SNSでの情報拡散を経て具体的な商談へと結びつく――そうした流れを見据えるうえでも、FBC商談会への継続出展は有効な手段といえる。
「出展を始めた当初、ベトナム国内の取引先は1社だけでした。それが今では10社にまで広がり、大きな成果を実感しています」
価格競争を乗り越えて、選ばれる品質を磨く
現在、新城ベトナムは日系・地場合わせて17社に製品を供給している。その中には、ベトナム初のEVメーカー・ビンファストの関連企業も含まれる。価格面では中国や台湾製に優位性がある場面も少なくないが、それでも選ばれてきたのは、製品自体の信頼性に支えられているからだ。
「当社では、高い品質基準を満たすため、それに見合った素材を使用しています。その分コストがかさみ、価格面では不利になることもありますが、品質を妥協しない姿勢が評価されてきたと感じています。最初に取引を始めた日系のティア1企業では、当社製品に切り替えた途端、不良率がゼロになりました。これを受けて、完成車メーカーが“ナットはすべて新城に”とサプライヤーに通達を出したと聞いています」と奥田氏は振り返る。
同社では、冷間圧造から転造、画像選別までを1つのラインに組み込んだ「一気通貫方式」により、短納期への対応も可能にしている。
今後は主力の溶接ナットに加え、同じく冷間圧造を活用したフランジナットの製造にも取り組む予定だ。さらに、JIS規格だけでなく、世界的に普及するドイツのDIN規格や、各完成車メーカーの独自仕様にも対応し、製品のラインナップを拡充していく。「扱える規格を増やし、より多様なニーズに応えていきます」と、今後の展望を語った。
揺れる通商環境とどう向き合うか
北米向けの取引は、米国よりもメキシコやカナダが中心となっている。とくにメキシコでは自動車の現地生産が進み、完成車を米国に輸出する構造がすでに定着している。
こうした枠組みの中で、米国がメキシコやカナダにも高関税を課す方針を示した際には、業界全体に動揺が広がった。
「それほど無茶なことはしないのではないか」と、奥田氏は冷静に見ている。
一方、中国企業による迂回輸出の影響で、ベトナムにも警戒の目が向けられている点については、「ベトナムは巧みなバンプー(竹)外交が持ち味。うまく乗り切ってくれると期待しています」と語った。
優秀な実習生との出会いが、ベトナム進出の原点
ベトナム工場の立ち上げの背景には、日本での人材確保の難しさがあった。
2005年、作業環境の厳しさから人材確保が困難になる中、同社は初めてベトナム人技能実習生を受け入れた。当時は制度自体がまだ広く知られておらず、募集には予想を超える応募が殺到。選抜された人材は非常に優秀で、例えばマシニング加工は、日本人なら習得に1年かかるところをわずか3カ月で習得したという。

当時の社長はその能力に驚き、「こんな人材を手放すのはもったいない」と考え、現地工場の設立を決断した。現在も本社には常時10人ほどのベトナム人スタッフが在籍し、実習を終えた人材が現地工場で活躍する体制が定着している。
「今では細かい作業もすべて現地スタッフに任せられる」と、奥田氏は嬉しそうに話す。
最後に、FBC商談会に来場される皆さんへメッセージをいただいた。
「冷間圧造は日系企業でも手掛けるところが少ない技術です。冷間圧造製品をお探しの会社は、ぜひ声をかけてください。当社は基本的に規格品を扱っていますが、規格外の製品にも積極的に挑戦します。冷間圧造のことなら、ぜひお任せください!」