業界特集
株式会社 スギノマシン
掲載企業株式会社 スギノマシン
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主要3品目
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高圧ジェット洗浄装置
超高圧水切断装置
マシニングセンタ
キャビテーションウォータージェットピーニングとはなにか
ピーニングとは、衝撃を与えることで表面に圧縮残留応力を導入し、疲労強度や疲労寿命を向上させる技術だ。航空機や自動車部品など、高い信頼性が求められる構造物に使用されている。現在は金属やガラス製の小さな球などのメディアを用いるショットピーニングが多く活用されている。
キャビテーションとは温度上昇による液相が気相に相変化する沸騰現象とは異なり、流体の流れの中で圧力差によって減圧され、液相が気相に相変化することで、短時間で発生と崩壊が起きる物理現象である。船舶のスクリュー等には日常的に発生している現象であり、長時間のキャビテーションに晒されると「壊食」と呼ばれる破壊現象を引き起こし、部品寿命を著しく低下させるため、キャビテーション現象は一般的に好まれるものではない。一方で、キャビテーションが発生させるエネルギーは大きく、キャビテーションが崩壊する際にGPa(ギガパスカル)クラスの衝撃力を生ずる。このキャビテーションをコントロールすることで有効に活用することが出来る。株式会社スギノマシンが提案するのは、従来工法のピーニング工法とは異なるキャビテーションウォータージェットピーニング(CWJP)だ。
CWJPは、30~40年ほど前から原子力発電所などで採用されている技術だ。ステンレス溶接部にかかる引張応力が応力腐食割れの原因となることから、水中で高圧水を噴射し、ピーニングを行うことで対策しているのだ。
3~4年ほど前から、原子力発電所だけでなく一般産業部品に応用が進められはじめているという。
水を用いて効果的にピーニング加工
人にも環境にも優しいクリーンな新技術
CWJPは水のみを使用するクリーンな技術だ。通常のショットピーニングで用いられるメディアは、摩耗し最終的には産業廃棄物となってしまう。加工時に騒音や粉塵も発生することから、環境や作業員への負担も大きい。CWJPのクリーンな工法に注目するメーカーも多いという。また、溶剤などの薬品を使用せず、水だけで塗装などのコーティングを剥がすこともできる。単純な加工時間では、CWJPはショットピーニングに比べ長くなってしまうが、洗浄・研磨を必要としないため工程集約が可能。トータルで見れば、加工時間を削減できる。コンタミネーションの恐れもないというのもメリットだ。

またCWJP加工後の表面は「荒れにくい」というのも強みだ。従来のショットピーニングは、メディアを金属部品の表面に衝突させると、表面に圧縮応力層が形成される。例えば、金型の表面に圧縮応力層があることで、疲労破壊の発生を防ぐことができる。この工法は、金型のみならず、航空宇宙・自動車・原子力産業など幅広い業界で使用されている。メディアを使ってピーニングを行うと、処理した材料の表面は隕石が衝突したようなクレーターの縁に起伏を発生させる。このクレーターは疲労破壊や表面粗さを悪くする原因になる。一方のCWJPはクレーターを発生させず、窪みが形成されるだけであり、表面粗さはショットピーニングと比較すると滑らかな表面となる。さらに、CWJPは約1mmの深さまで圧縮応力を付加することが可能で、高い疲労強度を確保して長寿命効果を得ることができる。材料組織構造も大きく変化させないため、靭性を維持したまま硬度を向上させる。またキャビテーションを流体で流し込むことができるため、複雑形状や深い穴であっても、内部にまでピーニング効果を付与することができる。ノズルを動かし処理ムラのない均一な加工が可能となる。スギノマシンにはすでにさまざまな形状に対する適切な当て方の加工ノウハウが蓄積されているという。

金属3Dプリンタや精密金型、金型の冷却水路に活用
CWJPはショットピーニングの代替としてではなく、既存工法では適用できなかった新しい領域の開拓を目指している。その1例が金属3Dプリンタだ。金属3Dプリンタで造形された部品の表面には、未融解粉が付着しており、洗浄を必要とする。インプラントや人工骨で用いられる生体適合表面など、内部に微細な気孔を持つ多孔質構造といった複雑な形状は従来の超音波洗浄では難しい場合がある。CWJPならば洗浄だけでなく、さらに圧縮応力も付与して強度を上げることが可能というわけだ。繊細な表面でも、CWJPならば損傷させずに未融解粉だけを取り除くことができる。

また、CWJPは金型と非常に親和性の高い技術だ。CWJPを施すことで金型寿命が1.5倍~3倍に向上したという実績がある。鋼材の種類や用途にもよるが、特に冷間鍛造金型との相性が高いという。またピーニング工法では加工が難しい従来金型の冷却回路の長寿命化や金属3Dプリンタで造形された金型の流路などの深穴や細穴、複雑形状にも適応できる可能性がある。スギノマシンはさらに精密金型にも挑戦していきたいという。CWJPならばシャープエッジをダレさせることなく、寸法精度を保持したまま長寿命化を達成できるためだ。ダイス鋼やハイス鋼といった金型によく用いられる金属だけでなく、アルミや銅などの他の鋼材でも同様に圧縮応力を付与することができる。

産業界ではまだ新しい技術だが、展示会などでもCWJPの認知が広がりはじめている手応えを感じている。スギノマシンは従来工法では不可能であった領域で実績を積み上げ、想定していなかった分野にまでCWJPを広げていきたい考えだ。今後の需要拡大に期待したい。
