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非接触・非破壊で表面改質状態を捉える―「オンリーワン」の装置作りで材料評価に貢献

非接触・非破壊で表面改質状態を捉える―「オンリーワン」の装置作りで材料評価に貢献

株式会社アクロエッジ

掲載企業株式会社アクロエッジ

大阪府枚方市に、日本の材料研究を支える装置メーカーがある―AcroEdgeだ。同社は材料に関する高機能な測定デバイスを数多く世に送り出しており、1986年の創業以来、大学や国立研究所、大手メーカーの研究開発部門などから高い評価を受け続けてきた。

顧客のニーズに機動的に対応した装置開発を重視―学会での評価のほか、JIS規格にも認定

AcroEdgeの最大の強みは「オンリーワンにこだわった」製品作りを貫いている点にある。同社では研究開発と知財戦略を重視し、特定の製品や技術に固執するのではなく顧客のニーズに応じて機動的に装置開発を行っている。例えば、大学や国立研究機関から評価の高い引張試験機では、測定対象物によって装置に求められる機械的な特性(引張距離や速度など)が異なることを考慮し、特性に幅を持たせた汎用設計ではなく都度設計で対応している。材料工学の極めて専門的な領域にまで踏み込んだ製品作りを行い、より高度な測定をサポートすることで、業界トップランナーからの信頼につながっているのだ。

そして、このような各種装置作りは単なる一品物の製作にとどまらない。装置開発の過程では産学連携による測定方法の研究も積極的に行っており、同社が確立した測定方法は特許取得や学会での評価のみならず、一部は新たな測定方法としてJIS規格にも認定・追加されている。顧客からの「これ、測定できる?」という生の声から始まる研究開発によって、装置や技術だけでなく、新たな測定手法や市場そのものも生み出しているのだ。

AcroEdgeの提供する製品

蛍光センサーを用いた新たな表面改質測定「Caisits」―非接触・非破壊でインラインの全数検査にも対応

最先端の分野で高い評価を受けるAcroEdgeのデバイスだが、中には量産現場で活躍するものもある。その最たる例が、表面改質センサー「Caisits(カイシツ)」だ。これはプラズマ処理やコロナ処理といった表面改質後の状態を非接触・非破壊で測定できるデバイスで、従来の液滴を用いた接触角検査の代替となるものだ。その手軽さと検査時間の速さから大手企業も含む様々な量産現場で採用されており、対応実績のあるアイテムもフィルム、繊維、ゴム、自動車の車体などと多岐にわたる。液滴による接触角判定では不可能だったインラインでの定量的な全数検査を実現したことで、現場からも高い評価を受けている。

表面改質状態判定装置「Caisits」

Caisitsでは、UVライトと蛍光センサーを用いて改質度合いの判定を行う。対象物にUVライトを照射すると、対象物はその光を吸収してエネルギーが一時的に高い状態になる(励起状態)。そしてその後元の状態(基底状態)に戻ろうとするときに「蛍光」という光を発するが、Caisitsではこの蛍光をセンサーで検出する。この時に出てくる蛍光の特性(色や強さ)は物質の分子の結合の形によって異なるため、蛍光の特性を正確に検出できれば物質の違いを見分けることができる。

ここで表面改質を施した材料について考える。材料にコロナ処理やプラズマ処理を施すと、表面の分子結合の一部が切断され代わりに官能基(※注1)が付与される。表面の分子の結合の形が変わることで、UVライトを当てた時に出てくる蛍光も処理前とは異なる特性となるが、Caisitsではこれを検出することで、非接触で定量的に改質状態を測るというわけだ。物質から発せられる蛍光は非常に微弱なため、高い精度で検出しようとすると外部の光の影響を受けやすくなるが、同社では独自の光学設計でこの問題も克服。通常の工場内であれば問題なく判定が行えるという。

画期的な仕組みのCaisitsだが、完成までには多くの苦労があった。「接触角判定とは全く異なる仕組みで改質の状態を判定するため、測定器として実用化するためには様々な物質でCaisitsのデータと接触角判定でのデータの相関が取れることを示す必要がありました。このデータ取りに3年近くかかりました」と同社担当者は当時を振り返る。地道な研究の末、データによって測定手法としても学術的に確立されたものとなったことから、2026年春ごろには「プラズマ表⾯改質処理装置の性能試験⽅法―プラスチックフィルムの改質度連続測定による評価方法」としてJIS規格にも新たに追加される予定だ。 

非接触・非破壊によるインライン製品検査のイメージ

樹脂の硬化度測定装置やナノ粒子の判定装置もラインナップ―止まらない製品開発で、新たな測定手法の社会実装を推進

細かな仕組みは異なるものの、UVライトと蛍光センサーを用いて物質の状態を判定する装置を同社ではほかにも複数展開している。1つは紫外線硬化樹脂の「硬化度合い」を測定する「Curea(キュレア)」だ。これは樹脂が硬化する際に分子構造が変化する(重合する)点に着目したもので、蛍光を測定することで「樹脂がどれだけ固まった(≒樹脂の中にどれだけ重合した分子があるか)」を判定するという仕組みだ。スマホやカメラのレンズに用いられる樹脂の測定のほか、近年では光ファイバーのコーティング材料開発の現場などでも用いられているという。

2021年には、「ナノライザー」も同社のラインナップに加わった。サポイン(現:Go-Tech)事業によって京都大学との共同開発で開発されたこの製品は、蛍光を用いてナノ粒子の凝集と分散の判定を行うものだ。現在は研究機関や材料メーカーで研究開発に用いられているといい、量産現場での活用に向けて今後もブラッシュアップを進めていく予定だ。

ナノ粒子凝集分散判定装置
「ナノライザー」

同社が先進的な装置を次々と生み出すのは「研究開発は止めたらいけない」という代表取締役社長・中宗氏の確固たる信念によるものだ。「実は蛍光を用いた物質の状態評価自体は30年以上前に先行研究として存在していましたが、産業化が進んでいませんでした。研究に関して手を抜かないという社風と、電気と化学それぞれに精通した技術者たちが社内にいたことで開発ができたと考えています」と同社担当者。研究を重視し、ユーザーの声に合わせて機動的に技術開発を行う経営方針によって、アカデミック領域からメーカーまで幅広いユーザーを獲得したのだ。

今後について同社担当者は「1つのものにこだわらず、今後もお客様のニーズに合わせて製品開発を続けていきます」と意気込む。AcroEdgeは今後も、機動力の高さと研究を重視する社風で測定分野にイノベーションを起こしていくことだろう。

(注1)官能基とは、平たく言えば物質の性質を決める「特定の部分構造」のことだ。例えば高校の化学でも登場する水酸基(-OH)は水素結合を形成するという性質を持つため、この官能基が付与された部分は水に溶けやすくなる。つまり親水性(濡れ性)が向上するということだ。プラズマ処理では水酸基のほかに、カルボニル基(-CO)、カルボキシル基(-COOH)なども用いられる。

製品情報

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