業界特集

公開日: / 最終更新日:

マーケット志向の研究開発力が強みのプラスチックめっき企業|自動運転やAIにめっき技術をいかす――塚田理研工業 株式会社

マーケット志向の研究開発力が強みのプラスチックめっき企業|自動運転やAIにめっき技術をいかす――塚田理研工業 株式会社

塚田理研工業 株式会社

掲載企業塚田理研工業 株式会社

主要3品目
  • プラスチック・エンプラへの装飾・機能めっき(プラメッキ)

  • プリント配線板へのNi-Au・Agめっき

従業員数

266名(2025年4月現在)

プラスチックめっきの歴史と共に歩む企業

「めっきってすごいんです。ほんと、メッキってめちゃくちゃ面白い技術だと思っています」代表取締役社長下島 聡氏は何度もそう口にする。塚田理研工業株式会社は創業60年を超える。世界的に見ても老舗のプラスチックめっき専業企業だ。婦人用洋服のボタンから始まり、カメラやオーディオ、電化製品のスイッチ、自動車へと、日本のプラスチックめっきの歴史は、そのまま同社の歴史と重なる。

塚田理研は装飾めっきから機能めっきまで幅広いプラスチックめっきを取り扱うだけでなく金型から成形、バフ、マスキング、塗装、さらにイオンプレーティングまで、めっきの前後工程・アセンブリまで含めためっきの一貫受注に対応。現在では高級自動車の内外装に多く用いられているほか、プリント配線板の上の最終表面処理としてニッケルパラジウム金メッキも主力となっている。時代に合わせて、さまざまな用途に同社の技術は活用されているのだ。

トレンドは自動運転・AI
アンテナを広げキャッシュアウトできる研究開発を

技術開発にも積極的に取り組んでいる。量産立ち上げ専門の部署を備え、各メーカーの開発部門の生の要望をくみ上げ、技術提案を行っているのだ。「めっきというのは下請け的な要素が大きい。顧客からの仕様通りにやっているとうまくいかないことも多くありました。めっきに関しては我々の方が詳しいですし、提案していく企業にならなくてはと30年ほど前から方針を転換しました」と下島氏。塚田理研があるのは長野県駒ヶ根市。環境にめぐまれたのどかな場所だが、近隣に取引先となるメーカーがたくさんあるわけではない。遠方の顧客から選ばれる会社になるためには、塚田理研にしかできない独自技術が必要なのだ。そこで社内に技術開発チームをつくり、メーカーや大学などと共同研究を行いめっき技術の進化に取り組んでいるという。

今注目しているトレンドは自動運転とAIだ。自動運転は補助的なものではなく、完全に自走する段階に来ており、遠くのもの、見えないもの、そういった障害物を正確に感知するためにはより感度の高いセンサが求められている。アンテナは現在、金属を切削加工して作られているが、今後より普及が進めば軽量化やコスト的な面からもさらに高精度で特殊な樹脂製アンテナが採用される可能性がある。樹脂をアンテナに使うためにはめっきは必要不可欠だが、金属代替として使われるスーパーエンジニアリングプラスチックはめっき難着素材だ。そこで生かされるのが同社の難素材へのめっき技術というわけだ。既に同社の難素材へのめっき技術は国内有数。高い実績を誇る。現在もさまざまな企業と共同研究を行っているという。

エンプラ・スーパーエンプラへのめっき

AIの計算速度・技術が進むにつれ、注目されているのがハイスペックなプリント基板だ。基板の生産規模は台湾などが強いが、レベルで言えば日本も劣らない。プリント基板には非常に繊細なめっき技術が必要となってくる。今後、より消費電力が少なく、計算速度が速いプリント基板を作るためには、やはり高度なめっき技術が必要不可欠というわけだ。「正直に言って、今後自動運転やAIはこの先なくなるはずはありません。より進化していきます。そうした中で、めっき技術の需要というのは案外多い。私たちの技術が世の中に貢献するために用途を広げていくことは、めっき業界全体としてもすごく良いことだと思っています」と下島氏は語る。塚田理研はすでに、あるべき未来に向け、具体的な課題感を持って技術革新に取り組んでいるのだ。

また、サステナビリティ、環境配慮といった時代の流れにも、めっきのはく離や再利用の技術研究を進めている。通常廃棄物として処理されてしまうニッケル廃液から、高純度のニッケルのみを選択的に回収するシステムを独自開発しているのだ。「誤解されがちですが、めっきはリサイクルが可能です。金属もプラスチックもキレイな形で回収することができる。工場内の管理さえきちんとしていれば、リサイクル性の高いめっきは可能。トータルで見ればCO2排出量も少なく済むと考えている」と下島氏。めっき業界全体がより良くなるように、ノウハウを業界全体で共有していきたい考えだ。既に自動車では産業内リサイクルが法制化される。今後はめっきもリサイクル性が重視されていくことは間違いない。

MID(立体成型基板)へのめっき

企業として、ただ自分たちがやりたい研究開発ではなく、キャッシュアウトできるビジネスをしていく必要があるのは当然のことだ。だが研究開発企業にとって、シーズを基点としたプロダクトアウト型を取るか、マーケットインしてニーズをうまくつかめるかに大きな差がある。企業から信頼され、多くの技術開発を行う秘訣を、下島氏はこう話す。「絶対にチャンスというのは、いろんな形で全部転がってきています。いい情報があれば、自分たちでできる技術でどうにかできないかを考える。めんどくさい、他社がやりたがらない仕事は、より深く深掘りして話を聞いて、どんな用途につなげていくかってところまで入り込むと、その縁がいろいろと繋がっていくことがあります。マーケットを見た上で、本当に困っているお客さんがいるかどうか。それが何に使われるかということをキャッチしたら、あとはその会社の感性。そのためにはさまざまな業界の方の情報交換をしてアンテナを貼っておくことが大切ですね」

自社製品でマーケットイン
加飾とプラスアルファの付加価値で大ヒット製品を開発

塚田理研はただ受け身で待つだけではない。SEO対策するだけでなく、メディアやSNSを活用。さらに自分たちからマーケットに入っていく。その1つとして、自社のめっき技術を生かした商品開発にも力を入れている。静電気を吸着拡散する特殊なめっきをほどこしたヘアコームの「ラブクロム(LOVECHROME®)」は、高額商品であるにも関わらず大ヒット。メディアでも数多く取り上げられている。

めっき技術は現在でも加飾用途が多い。だが、塚田理研は加飾性にプラスアルファの価値を付けたことが大ヒットにつながったのだ。「1本1万円のくしが売れるわけがないというのが前評判でした。しかしくしにめっきするということ自体誰もやっていない。こういう価値があって、こういうふうに使ってもらえるとこんな風にできるっていうのを、うまくマーケットにアピールできた事例だと思っています。こういう製品を今後も増やしていきたいですね」(下島氏)

特許技術「JP CHROME-TECH®」で表面処理されたヘアコーム ラブクロム

製品情報

こちらの記事もおすすめ
pagetop