
業界特集

株式会社スギノマシン
掲載企業株式会社スギノマシン
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従業員数
1420人
富山県滑川市に本社を置く、1936年創業の株式会社スギノマシンは高圧ジェット洗浄装置や超高圧水切断装置などを長年開発してきた、いわば「水でモノを切る」プロフェッショナルである産業機械メーカーだ。そして今日の同社には、もう1つ重要な顔がある。ロボットやAI、センシング技術などを活用した自動化技術による製造業DX支援技術の提供だ。
コロナ禍でのDXの気運の高まりを受け、2021年にスギノマシンはRI事業部(Innovation with Robotics and IoT/ICT/AI事業部)を発足。その名が示す通り、「ロボット工学およびIoT/ICT/AIによる革新」によって、顧客の課題解決や付加価値向上を支援することをミッションとする事業部だ。自社製品のコネクテッドロボット「CRb」シリーズを活用したシステムを提供している。CRbは、狭い空間に設置しやすいスリムかつ省スペースな形状でありながら高剛性と優れた直進性が自慢だ。

「切断や抜き、ベンディングなどは以前から自動化されてきたが、その後の工程の溶接や仕上げ、検査では自動化が進んでいません」と大西氏。そこでロボットを投入しようとすると、「作業自体はロボットでこなせるものの、段取りに伴うティーチングが毎回必要になる。特に多品種少量となると、それがかなり頻繁になり、かえって手間が増大してしまう」ということで、ロボットを導入したとしても十分な生産性向上の効果などが得られない。
2024年12月には、「ファイバーレーザー溶接 ロボットシステム」を発売した。1m を超える⾧尺ワークにも対応できるよう、水平軸を備えた壁掛けタイプのCRbを用いている。さらに同社独自のロボット制御とセンシング技術を組み合わせることでティーチングを不要にして、かつワークのバラつきにも対応できるようになっている。このシステムは金属加工業のフジムラ製作所がアドバイザーとして技術協力しており、同社に1号機が納品されている。


ファイバーレーザー溶接ロボットシステムによる作業の様子
ファイバーレーザー溶接ロボットシステムのDX技術
ファイバーレーザー溶接 ロボットシステムには、スギノマシンが開発した「アクティブトラッキング」を搭載している。「この機能では、簡単にワークを置くだけで、溶接中にセンシングをしながら、溶接の経路を自動調整ができる」(大西 氏)
自動ティーチング機能で使われているのが、スギノマシンが開発した産業ロボット用シミュレーションソフト CROROROS(クロロロス)だ。3Dモデルを用いてロボットの動作を仮想検証してからロボットにプログラムを送り込むことができる。ロボット操作の初心者にも使いやすい仕様になっている。
同じく、同社が開発した生産性可視化ツール「ViiNUS(ヴィーナス)」では、CRbの稼働状況や溶接データをクラウド上に収集・保存し、生産性などの分析ができる。さらにリアルタイムで稼働モニタリングも行うことが可能だ。社内で実際に4年ほど使用していた生産管理システムを外販化したものだ。

製造業DXで必須な「メカとソフトの両刀使い」たち
スギノマシンは、2010年代に「インダストリー4.0」の概念が広まり欧州製造業を中心にIoTやAI活用が広まる中で、ロボットやIoTシステムの自社開発に取り組んできた。
「最初、DXやIoTの取り組みの価値を全員に理解してもらうことに時間を要した」と大西氏。同社では、DX推進を全社プロジェクト化し、「生産革新部」を設置して取り組んだ。
その中で、ロボットの自社開発に取り組むとともに、社内でも設備やシステムをネットワークでつなげられるクラウドの生産管理・稼働監視システムを開発・導入してDXを推進した。そこで開発されたのが、ViiNUSの原点となるソフトウェアだ。
「ハードだけではなく、ソフトウェアも自社で手掛けるべき」という方針の下、DX関連の開発を手掛ける同社であり、ViiNUSシステムの開発においても、極力外部のITベンダーの支援は入れず、社内開発で対応した。「一度導入したら長年使用し続けなければならないため、自社でメンテナンスできるようにしたかった」(大西氏)
IoTに必要なITやネットワーク技術は、機械や電気などハード系エンジニアたちが、開発の実践を通じて一から学んだ。その結果として、「メカとソフトの両刀使いエンジニアが社内に育った」と大西氏は言う。それを経て生まれたのが、ものづくりも、DX推進も、全部経験して理解しているRI事業部だ。
「お客様から多くのご要望をいただいており、さまざまなテーマの開発に取り組んでいます。われわれは、これからもティーチングレスという価値をしっかりと提供していくと共に、導入された後も長く使っていただけるよう、開発に励みます」(大西氏)

執行役員 RI事業部長
大西 武夫氏