業界特集
株式会社ヒキフネ(東京都葛飾区)
掲載企業株式会社ヒキフネ
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主要3品目
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装飾めっき ( 金めっき・黒色めっき・クロム(3 価・6 価))
精密めっき ( 無電解ニッケル・潤滑めっき・複合めっき )
光ファイバへの金めっき
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従業員数
125 人
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年間売上高
- 18 億円
株式会社ヒキフネは昭和7年、東京都墨田区で創業した老舗めっきメーカーだ。昭和42年に現在の葛飾区に新工場を構え、92年目を迎える現在も東京下町でめっき事業を続けている。町会と共催している「ヒキフネまつり」など地域との関わりを深めているのも、どんな会社であるかを近隣住民に知ってもらうためだ。同社はめっき加工だけでなく、一部製品では製品受注という形式で、金型や鋳造の工程から協力会社の一元管理を行うこともある。品質管理を一貫して行うことで、責任の所在を明確にしにくい表面加工、二次加工のトラブルを防いでいるのだ。
同社の手掛けるめっきは装飾めっき4割、機能めっき3割、光ファイバ1割、試作開発1割と幅広い。特に同社の顔でもある装飾めっきはハイブランドにも選ばれるほど評価が高い。国際情勢の影響を受け、一時期大きく売り上げを伸ばしていた光ファイバ関連は縮小方向だが、同社が開発した800℃という超高熱まで耐えるコーティング技術により、センサリング用途という新たな市場を開拓している。
また装飾めっきは海外メーカーらの安い価格設定に押されるが故に利益率が低くなっていることが課題であった。そこで同社では、コロナ禍で一時期仕事が半分に落ち込んでしまった時期に、現場を1つにまとめて効率化を図った。価格の見直しも実施したことで利益率が大幅に改善。「めっきはやり方次第で、利益を上げることができると考え方が変わる契機となった」と代表取締役社長の石川英孝氏は語る。
装飾めっきには前工程の研磨が欠かせない。しかし研磨を行う人材の確保は難しく、協力工場も高齢化し、後継者もいないという問題に直面していた。そこで同社は、自動バフ研磨機を開発し、今期から稼働させている。立ち上げの歩留まり率も上々だという。人手が多くかかるめっきやその前処理工程は全自動というわけにはいかない。しかし人材不足が喫緊の課題である今、省力化やAIなどの活用を進めていく予定だ。
SDGsに関連して、「遠方ではなく、身近なところでものづくり」(石川氏)が再び注目されることになれば、町工場を中心とした日本の製造業が大きく変わる時期に来ている。めっきは排水など、環境負荷に対する規制が年々厳しくなっているが、めっきは今後も日本の製造業を支える業界としてなくなることはない。
石川社長は今後の展望を語る。「装飾めっきのラインも50年経つので、新しいラインを構想中です。また、新技術の開発を専門に行うセンターを作り、まだまだめっきが活躍できるフィールドを広げていきたい」――創業100年が目前になお、株式会社ヒキフネは新たなチャレンジを続けていく。