業界特集
株式会社旭プレシジョン(京都府向日市)
掲載企業株式会社旭プレシジョン
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主要3品目
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黒色めっき処理
タングステン合金めっき処理
非粘着・滑り性向上表面処理
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従業員数
54人
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年間売上高
- 16.8 億円
株式会社旭プレシジョンは、1964年に旭金属工業株式会社から分離独立した旭金属精機を前身とする表面加工メーカーである。旭金属工業は機械加工と表面処理を行っていたが、現在は主に航空機を取り扱っており、航空機以外の表面処理に関しては同社が担っている。
同社の特徴は特殊なめっき技術に特化し、汎用めっきではなく自社開発のめっき技術を主力としている点である。展示会などでニーズをくみ取り、試作を行いながら機能性めっきで課題解決を提案している。売上比率の半分は食品・包装機器業界、次いで金型関連、残りはそれ以外という。食品・包装機器では、フィルムなどの「滑り」を良くするための表面加工の需要が高い。包装機器の開発・製造段階から入ることもあれば、稼働している機器への表面処理を行うこともあり、さまざまなニーズに対応している。
金型では離型性の需要が高い。靴底などのゴム金型から、ゴルフボールといったスポーツ用品のインジェクション金型に表面処理を行っている。現在の工場は京都にあるが、日本のみならず海外からも引き合いがあるほど、同社のニッチなニーズに寄り添った特殊めっき技術は評価が高い。今後タイのバンコクへ進出予定だ。
代表取締役会長の山中泰宏氏は「表面処理は技能ではなく知識。そして生産技術です」と語る。表面処理には材料をよく理解し、課題をクリアするための探求心が求められる。同社が業界に先駆けて開発した電解ニッケル黒色めっきは、その高い性能が認められ、大型低温重力波望遠鏡 「KAGRA」でも使用されている。光を吸収する性能の高さと真空中で異物を出さない表面処理として、同社の技術力が選ばれたのだ。同社は技術開発に力を入れるだけでなく、めっきのコンサルティングも行っており、大手メーカーへの技術指導および支援を行っている。めっき液だけ提供すれば良いというわけではなく、管理方法や、材料ごとにどう対応していくかが変わってくる。そうした「技術」を提供しているのだ。山中氏は「機械屋がめっきをやるのが手戻りも少なく、精度の面でも理にかなっています」と語るのも、同社がもともと機械加工を行っていた下地が生きているためだ。めっきに関する新入社員教育の依頼も後を絶たない。価格競争ではなく、課題解決のための機能性、高い性能、そして蓄積されたノウハウが同社の強みだ。