ニュース
公開日: / 最終更新日:
キャステム、純銅ヒートシンクで米国鋳造コンテスト総合優勝──鋳造の高度化がもたらすGPU冷却性能の新境地
株式会社キャステム
掲載企業株式会社キャステム
-
主要3品目
-
ロストワックス( 量産 / 鋳造 )
金属射出成形(MIM)( 量産 / 鋳造 )
少量対応( 量産 / プラスチック )
-
従業員数
300名

精密鋳造の国際舞台で示した日本の技術力
株式会社キャステムの米国子会社 Castem Technology Laboratories(以下、CTL)が製造した純銅ヒートシンクが、北米の精密鋳造協会 Investment Casting Institute(ICI)主催の北米最大級の鋳造エキスポのコンテストにおいて、ファイナリスト7点の中から総合優勝を獲得した。極めて微細な形状を高い寸法精度で鋳造し、熱伝導性に優れる純銅での一体成形を成し遂げた点が評価され、日本の鋳造技術が精密鋳造の本場・米国の舞台で存在感を示した結果となる。

微細ピン752本を一体鋳造した高性能ヒートシンク
今回受賞したヒートシンクは、52×28×13mm・64gという小型ながら、直径1mm・高さ4mmのピンが1.15mmピッチで752本並ぶ構造を持つ。液体に浸してGPUを冷却する「液浸型冷却装置」の熱交換部品として設計され、高度化するデータセンターのGPUが発する膨大な熱を効率よく冷却液へ伝達するための表面積を最大化した形状が特徴である。AI処理や高速計算領域(HPC)で深刻化する熱問題に対して、純銅と微細構造の組み合わせで応える部品として期待が高まっている。

鋳造だからこそ到達した複雑形状と寸法精度
林立する1mm径のピン構造は、切削や溶接を前提とした組み立てでは実現が極めて困難だった。途方に暮れた客先からの相談を受けたCTLは、樹脂3Dプリンターで作成した犠牲型を用いた石膏鋳造を基盤とし、減圧溶解や加圧鋳造を組み合わせるプロセスを採用することで、一体鋳造による極めて複雑な形状の再現に挑んだ。無酸素銅は凝固が著しく速く、鋳造条件の見極めには試行錯誤が続いた。初期段階では良品率が1割に留まったが、形状設計の見直しや鋳造パラメータの改善を重ねたことで、安定した生産体制を確立するに至った。 鋳造後の仕上げは、統合したポート部分を中心に最小限の加工にとどめ、全体で±0.5mm以内の寸法精度を確保した。柔らかい銅材でありながら多数の微細ピンが立ち並ぶ形状は、型からの取り出しで最も破損リスクが高く、職人による丁寧な手作業の脱型が製品品質を支えた。鋳造という工法の可能性を最大限に引き出し、複雑部品の単一パーツ化を実現した事例である。
GPU液浸冷却への応用と今後の展望
本ヒートシンクは実験用の小型モデルとして製作されたが、AI処理を担うデータセンターのGPUを冷却する液浸冷却システムにとって、熱交換部品の微細化と高効率化は不可欠な課題である。今回の成果は、GPU冷却の高度化に向けた鋳造技術の有効性を示すもので、次世代冷却インフラの発展を支える重要な技術的進展と位置付けられる。 試験データの蓄積をもとに、より大型のヒートシンクへの展開や冷却性能向上の新設計が見込まれるほか、精密鋳造によって複雑形状を高効率に一体成形できる利点は、今後多様な電子冷却部品へ広がる可能性を持つ。伝統的な鋳造技術と最先端のGPU冷却ニーズが交わることで、新たなものづくりの価値創出につながる事例として注目される。
記事は見つかりませんでした。
