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摺動面を加工エリアの上に配した「ベッドレス構造」で、ガラスやセラミックスの精密加工に挑む  | ホーコス株式会社が新たに展開する、汎用脆性材料加工機

摺動面を加工エリアの上に配した「ベッドレス構造」で、ガラスやセラミックスの精密加工に挑む  | ホーコス株式会社が新たに展開する、汎用脆性材料加工機

ホーコス株式会社

掲載企業ホーコス株式会社

主要3品目
  • 工作機械

  • 環境改善機器

  • 建築設備機器の製造販売

広島県福山市のホーコス株式会社は、1940年創業の老舗工作機械メーカーだ。自動車業界向けの専用機やセミドライ加工「iMQL®」に強みを持ち、量産現場で多くの実績を上げてきた。このような専用機で名を馳せる同社だが、実は近年は汎用機にも力を入れ始めている。 

その代表例が「脆性材料加工機」だ。ガラスやセラミックスなどの割れやすい材料の加工に特化した加工機とは、一体どのようなものなのか。そして、それを支える同社の「ベッドレス構造」とは―。本記事では、JIMTOF2026の新製品も交えながら紹介する。 

ガラスやセラミックスを加工する「脆性材料加工機」 
―グラインディングセンタ、超音波加工機の2種類を展開 

脆性材料の加工に用いられる機械は、大きく2つのタイプに分けられる。ひとつは、マシニングセンタ(MC)をベースに、研削工具を取り付けられるようにしたグラインディングセンタ。もうひとつは、主軸に取り付けた工具に超音波振動を与えて加工を行う超音波加工機だ。 

いずれもガラスやセラミックス、シリコンといった「硬くて脆い」材料の加工に適しており、昨今の情勢を受けて、半導体業界を中心に需要が増大している。そうしたなか、同社は来たるJIMTOF2026で、新作のグラインディングセンタを、超音波加工機と共に披露する。 

目玉となるのが、グラインディングセンタの「NMG70」。大きな特徴は、高価なワークを安全に出し入れできるよう設けられた、開閉式の天井カバーだ。こうした設計には、半導体業界などからのニーズが多く取り込まれている。このほかにも、「スラッジ」と呼ばれる脆性材の微細な切粉が駆動部に入り込むのを防ぐ二重構造の内部カバーや、サビに強いステンレス製内部カバーなど、長期の信頼性を担保する工夫も多数施されている。 

超音波加工機の「NSU20」も注目だ。超音波加工では振動子を内蔵したホルダを用いるのが一般的だが、この方式では工具の本数分だけ超音波ホルダを用意しなければならず、初期費用がかさみがちだった。これに対しNSU20では、超音波振動子を加工機の主軸側に内蔵。振動子を1つに集約したことでコストを抑えられるほか、大型で出力の強いものを搭載できる。高出力を生かし、φ200mmクラスの大径のコア抜きにも対応する。 

横型マシニングセンタを倒立させたような構造の「ベッドレス構造」 
―自動車部品の高速連続加工から、脆性材料加工機に展開 

そして、NMG70とNSU20の両機種に共通する最大の特徴が、「ベッドレス構造」だ。これはXYZすべてのスライドを加工エリアより上側に配した同社独自の構造で、立型MCの一種でありながら、形は横型マシニングセンタを倒立させたものに近い。 

一般的なシングルコラムのMCにおいて、工具がワークに切り込む際に発生する加工反力は、ベッド→コラムと伝わってまた主軸に戻る。これを「力のループ(応力経路)」といい、この力のループによる筐体のわずかな変形の蓄積が、いわゆる加工誤差を生む。 

この点において、ベッドレス構造は大きなメリットがある。スライドが加工点の周辺にコンパクトに配置されることで、力のループが短く済み、剛性が高くなるのだ。わずかな誤差がワークの破損を招く脆性材料の加工などにおいて、これは非常に適した構造と言える。 

ベッドレス構造の利点は他にもある。ワークより下に構造物がほとんどないため、発生した切粉が可動部に詰まるリスクも最小限に抑えられる。また、クーラントが機械本体にほとんどかからず、熱変位が小さいのも強みだ。下側のスペースに余裕が生まれるため、大径の回転テーブルを取り付けたり、ワークの大きさの割に筐体を小さく抑えたりもしやすい。微細な切粉の影響を抑えつつも緻密な加工を要求される脆性材料の加工において、このような点も大きなアドバンテージとなる。ベッドレス構造の旨みを取り入れた設計こそが、同社の脆性材料加工機を唯一無二のものにしていると言えるだろう。 

実は、同社のベッドレス構造は、もともとは自動車部品の高速・連続加工のために開発したものだった。それが、この構造を見たある半導体関連企業からの提案がきっかけで、脆性材料の加工機へとつながった。「以前は、一般的なMCの中古機を買って、2〜3年で入れ替えるような使い方をされていたそうです。ベッドレスであれば、切粉の詰まりを無くして長持ちさせられるのではないかということで開発が始まりました」と担当者は振り返る。思わぬニーズを拾い新たな加工機の開発に繋げたことで、革新的な装置が生まれた。 

なお、装置本体と並んで気になる工具についてだが、従来の工具も利用できるという。ただし、担当者は「機械の性能を最大限に引き出すのであれば、専用に作る工具の方が効果を出せる」と話す。脆性材料加工機はまだ歴史が浅く、工具のバリエーションが少ない。増大する需要に合わせて、今後は工具面での進化も期待されるところだ。 

金属切削+AM造形複合機にも広がるベッドレス構造 
―セミドライ加工との組み合わせで、切削後の積層も可能に 

同社のアイデンティティとも言えるベッドレス構造は、他の製品にも広く展開する。JIMTOF2026では前述の2機種に加え金属加工向けの2機種を発表するが、そのどちらもベッドレス構造が採用された機種だ。 

ひとつは、ギヤのスカイビング加工機「NJ80 versionL」だ。ベッドレス構造を生かすことで、切削・旋削・スカイビングを1台に集約しながらも機械幅1150mmを実現。コンパクトな筐体ながら、自動車の減速機ギヤクラスのワークサイズにも対応する。自動車向けのニーズから生まれた製品だが、今後は急速に拡大するロボット市場も見据えていくという。 

そしてもうひとつ、「虎の子」と言えるのが、切削・AM複合機の「NX70 DUO versionAM」だ。ベースは、自動車向け大型アルミ製品の加工などで実績を誇る「NX70」。これにAM(積層造形)の機能を持たせ、切削用とAM用の2つの主軸・ヘッドを備えた大型機に仕上げた。NX70 DUO versionAMでは、回転テーブルでワークを回しながら、切削と積層を自在に行き来できる。こうした自由度の高い加工に、ベッドレス構造の旨みが生きているといえよう。 

そして、NX70 DUO versionAMには、ベッドレス構造と並んで欠かせない要素技術がもう一つある。それがセミドライ加工の「MQL」だ。MQLは「Minimum Quantity Lubrication(最小量潤滑)」の略で、その名の通り、クーラントを使わずに、ごく少量の潤滑剤だけで加工する手法のこと。同社は、主軸の内部でミストを作る独自の方式で基本特許を取得した実績を持ち、これを「iMQL®」として展開している。切削をiMQL®で行うことで、加工面にクーラントがかからず表面の乾燥状態が保たれる。NX70 DUOで切削の後に積層ができるのは、こういう仕組みなのだ。 

クランクシャフトの深穴加工を機に、自動車業界に普及した「iMQL®」 
―オイルミスト対策で、現在は水溶性のPRに注力 

iMQL®は、単にクーラントレスなだけでなく、刃先から吹き出す微量のミストを含んだ空気によって切粉の排出性にも優れる。この特徴を生かし、自動車エンジンのクランクシャフトの深穴加工(L/D≒20)によく用いられる。かつてはこのような加工はガンドリルで行っていたが、iMQL®を適用したことで、加工スピードは従来の6〜10倍になった。これがきっかけでiMQL®は爆発的に広まり、今や世界の自動車産業のほとんどの現場でiMQL®を用いるようになったのだ。クーラントを用いないことで周辺機器に与える影響も小さいといい、ロボットによるワークの出し入れとも相性が良いという。 

iMQLロゴ

実は、先に紹介したベッドレス構造が生まれた背景にも、iMQL®がある。iMQL®では切粉をクーラントで洗い流さないため、吹き飛ばすか、下へ落として排出するしかない。高速・連続加工に耐える構造を模索するなかで、切粉排出にも適した構造としてたどり着いたのが、ベッドレスだったのだ。「開発の頭の中には、常にiMQL®ありきの機械構成がある」と担当者は話す。同社を象徴する2つのコア技術は、このようにして密接に結び付いているのだ。 

一方で、MQLには課題もあった。当初主流だった油性の潤滑剤では、工場内にオイルミストやヒュームが漂いやすかったのだ。同社もミストコレクターなどの対策製品を手がけるが、ミストやヒュームの発生自体を抑える抜本的な解決策として、いま「水溶性iMQL®」のPRに力を入れている。一例として、トヨタ自動車北海道の工場では、同社の機械がクーラントを一切使わずに、水溶性iMQL®によって稼働している。オイルミストやヒュームが漂わなくなった工場は、作業者からも好評だという。 

後発工作機械メーカーとして、ニーズに応える中で得た独創性 
―専用機で鍛えた技術力で、脆性材料加工機を汎用機として市場投入へ 

最後に、同社がこうした独創的な製品を生み出せる理由にも触れておきたい。1940年、ポンプメーカーの創業者が、ポンプの部品を加工する小型工作機械を作るために立ち上げたのが同社の始まりだ。しかし創業後まもなく戦争が激化し、戦後もGHQの制限で工作機械を作れない時期が続いた。紆余曲折を経て1960年代に工作機械の分野へ戻ったものの、その頃には主要な工作機械メーカーがすでに出そろっていた。 

そうしたなかで、既存メーカーが手がけないニッチなニーズに応える専用機に活路を求めたことが、今日の同社を形作った。ときに「制御盤の電線の色まで指定される」ほど作り込む専用機のビジネスを通じて、過酷なスペックを要求される量産現場で技術を磨いてきた。他社がやらないことを引き受け、顧客のニーズに応え続けてきた積み重ねが、同社の独創的なアイデア・技術を生んできたのだ。 

ただ、長らく自動車向け専用機一辺倒だった工作機械部門は、業界の投資の波に左右されやすい。EVシフトでエンジンへの投資が一時凍結され、ここ数年は厳しい時期が続いた。こうした背景もあって生まれたのが、脆性材料加工機なのだ。脆性材料加工機については、当面は汎用機として売っていく予定だといい、操作盤も汎用機の文化に合わせ、パソコン感覚で扱えるUIに改めた。 

専用機メーカーとして長らく実績を積んだ老舗がおくる汎用機の「脆性材料加工機」。ベッドレス構造が生み出す新たな可能性を実感しに、JIMTOF2026ではぜひ同社スペース(東2ホール:E2001)を訪れてみて欲しい。波乱万丈の社歴から生まれた独創的なアイデアと、過酷な量産現場で磨いた技術力の集大成が、読者を迎えることだろう。

製品情報

  • JIMTOF2026 出展のお知らせ 2026/10/26(月)~10/31(土) 東2ホール E2001|脆性材料加工機など新製品を初披露

  • 【JIMTOF2026出展・初披露】5軸グラインディングセンタ NMG70|ガラス・セラミックス・シリコンの精密加工

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