成長企業の経営戦略

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製造業と商社の二刀流

製造業と商社の二刀流

二葉産業 株式会社
代表取締役社長 笠間 敦嗣 氏

掲載企業二葉産業 株式会社

主要3品目
  • 絶縁電着塗装

  • カチオン電着塗装

  • 表面処理材・治具設備の販売

従業員数

90 人

年間売上高
56 億円

少年の誓い

 「二葉産業を救うのは貿易しかない!」
――少年時代の笠間敦嗣氏のその思いから、すべては始まった。

 1933年、笠間氏の祖父・竹次郎氏が、神戸のめっき薬品輸入会社から独立し二葉商会を開く。社名の由来は、名古屋城に近い西二葉町が創設の地だったからである。41年には、二葉産業株式会社に改組。戦前から戦中にかけては軍需産業向けのめっき材料を重工業メーカーに卸し、増収増益で駆け上がった。

 ところが戦後の高度成長期以降、公害問題が表面化すると、社を取り巻く状況は一変する。現在、問題はクリアされているとはいえ、当時めっきは有害物質扱いとなり、やり玉に挙げられるようになっていた。大手メーカーはイメージのよくないめっきの内製部門を切り離した。すると、中小のめっき工場が雨後のタケノコのように現れ、急成長した。だが、それまで大型メーカーを客先としていた二葉産業には、中小めっき工場に商業ルートがなかった。

 二代目社長である笠間氏の父・則文氏は、自身が実質的に創業しためっき工場・明光工業株式会社の操業に集中する。明光工業は大きく業績を伸ばしたが、二葉産業は長い冬の時代に突入することとなった。

 だが、笠間少年は感じていた。国際間でめっき材料を取引すれば、二葉産業は復活すると。そのためにはまず、言語能力を磨かなければ。「アメリカ留学したい」と両親に伝えると、かわいい末っ子がなにを言い出したものかと母は猛反対した。すでに2人の兄は、明光工業で働く道筋ができている。だが、母を説得したのは父だった。

 高校をアメリカで過ごした笠間氏は、日本の大学で貿易を学び、卒業後は商社でセラミックの貿易部門に配属された。

製造部門が商社を救う

 99年、笠間氏は勇躍して二葉産業に入社するも、同社はその年が最低の売り上げだった。社員は50代、60代が4人と事務職が2人。

 自分は国際ビジネスができると言ったところで、商売は赤字か黒字かである。下がっていくベクトルに吞み込まれ、なすすべもなかった。

 糊口(ここう)をしのぐため製造業部門を立ち上げることを思い立つが、資金も人材も技術も客もない。そうした中で、電着塗装に着眼した。高い防錆力(ぼうせいりょく)を持つ電着塗装は、めっきと加工技術が似ていた。めっき材料商社であるからには、客先の仕事を取ることはできないが、塗装であれば競合しない。

 すると、電着塗装工場を10人の従業員とともに譲ってくれるという相手が現れた。笠間はこれに賭けた。そして賭けに勝つ。翌年、2,000万の黒字が出た。これを貿易部門にそそぎ、かねてより取引のあった大手メーカーに海外から調達しためっき材料を搬入することに成功する。

うちの会社でよかった

 2006年、笠間氏は31歳で代表取締役社長に就任。09年に現在地に本社・工場・倉庫をオープンさせたほか国内では九州、海外では中国、タイ、韓国に製造販売拠点を置くことで、日本全国およびアジア圏にネットワークを拡大した。

 リーマンショック、東日本大震災、新型コロナウイルス禍といった難局も、その都度一時的な落ち込みはあっても、すぐにリカバリーし、右肩上がりを続けている。

 「ただし」と笠間氏は語る。「電着塗装は後発ゆえに、なにか先んじて技術を高めなければという意識があります。商社ベースだから技術がないのではと思われたくもなかった」

 当初、電着塗装で出た利益を商社部門に投じ復活させたように、今度は商社の利益を技術開発に回すことにした。そうして生まれたのが、同社のオンリーワン技術である絶縁電着塗装である。

 「めっきに通電性があるのなら、電気を止めるニーズもあるだろうと開発したのが絶縁電着塗装です」

 電気自動車や電子部品などに求められる絶縁用の電着塗装なのだが、あまりに新しい技術だけに困りごともある。

 「教科書のない技術で、競合業者もない。反面、絶縁電着塗装自体があまりに知られていないんです。それを広く知らしめてくれているのがエミダスです。Webに乗せるだけで、この技術に興味を持っている人に届く。インターネットを通じた、きわめて現代的な受注形態ですよね。ちなみに、うちで活躍中のエミダス担当窓口は、子育て中で時短勤務の女性職員です。うちの製造業部門には営業マンがいないので、ただひとりでWeb営業を行っているのが彼女ということになります。それでも新規引き合いは途切れもなく来ます」

 同社は、年間休日日数は132日。製造部門は8時間という勤務時間にこだわらず、仕事を終えれば所属長の許可を得て早じまいが認められている。それでもフルタイム働いた扱いになる。間接部門は、7. 5時間のフレックス制だ。30分早く退勤することで帰宅渋滞を避けられるし、17時で受付を終えてしまう病院にも間に合う。給料はより高く、休みはより多く、労働時間はより短くがモットー。「社員が、うちでよかったねと言い合って和ができれば、いい仕事ができます」

 インタビューを終えようとしたら、「私は両利きなんです」。笠間氏が突然そう切り出した。「右投げは速い球、左投げはコントロールがいい。箸も左右両方使えます。国内と海外に拠点があることで為替変動のリスクを軽減できるし、製造業と商社それぞれバランスしながらビジネスを行っている。さしずめ二刀流ですかね」

経営者の素顔

趣味は家族とともに過ごす時間です。妻と仲がいいので、一緒にガーデニングや家庭菜園をします。大学生と中学生の息子とは釣りに行きます。愛犬と遊ぶのも好きです。

製品情報

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