業界特集
オリオン機械 株式会社
掲載企業オリオン機械 株式会社
-
主要3品目
-
精密空調機器
チラー
圧縮空気浄化機器・周辺機器
-
従業員数
2,386 名(連結) ※2025年3月現在
-
年間売上高
- 598億(連結) ※2025年3月現在
酪農機器から産業機器分野に派生―水素ステーション向け事業への進出
長野県須坂市に本社を構えるオリオン機械株式会社は、冷熱と精密空調分野で日本屈指のリーディングカンパニーだ。1946年に創業し、1950年代から搾乳機を中心に酪農関連機器を手掛けていた同社だが、酪農事業で培った冷熱、真空技術をコア技術として産業機械分野に進出、現在ではチラー、除湿器、精密空調機、真空ポンプ、可搬式灯油炊きヒータなど幅広い製品を展開している。


そんな同社がここ10年ほど力を入れているのが水素ステーション関連事業だ。同社がこの分野に進出したのは2012年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が横浜と愛知県に開設した実証実験施設のプレクール設備を手掛けたのがきっかけだ。
水素ステーションでは約82MPaという超高圧の水素を、圧力差を利用して燃料電池車(大気圧相当)に充填する。圧力が高いところから低いところに流れる際に水素は膨張して体積が増えるが、ここで水素の厄介な性質が問題となる。それが「常温下で膨張すると温度が上がってしまう」ということだ(注1)。水素は非常に燃えやすい気体のため、温度上昇が事故の原因となるだけでなく、燃料電池車の水素タンクの耐熱温度を超えないように充填速度を下げなければならず、充填効率も悪くなる。そこで充填時に水素の温度を下げる必要があり、それを担うのがプレクール設備だ。プレクール設備では高圧の水素を約-33℃以下という低温まで冷却する。

水素の性質を克服し法令への適合も実現―小型・高強度化のカギとなる「拡散接合」とは
プレクール設備は主にプレクールチラーとプレクール熱交換器の2つの要素で構成される。プレクールチラーで-40℃まで冷却した不凍液(ブライン液)を熱交換器に循環させることで水素を冷却する仕組みだ。熱交換器には82MPaの超高圧水素が流れるため高い強度が求められるほか、ディスペンサー(ガソリンスタンドの給油機のようなもの)の中に組み込まれるため小型化も要求される。また水素は金属を脆くさせる水素脆化という性質があるため、耐水素脆化性の高い金属材料(SUS316L-HiNi)を用いた熱交換器が必要となる。そこで、オリオン機械株式会社が辿り着いたのが「拡散接合」という接合技術を用い一体成型する熱交換器だった。
拡散接合は、真空置換不活性ガス雰囲気で金属同士を加圧しながら加熱することで金属境界面で原子の拡散が生じ、固相のまま金属同士が一体化するという接合技術である。溶接やロウ付けと異なり、境界面に異なる物質が介在しないため、母材の特性を維持できるのが特徴だ。同社はこの特徴に着目し熱交換器を拡散接合で製作することとし、破裂強度400MPaという驚異的な強度を誇るオールステンレス製熱交換器の製品化に成功したのだ。「水素関連製品は国内の高圧ガス保安法に準拠する必要があり、製作工程も含め1点ずつ厳しく審査されます。審査では実使用の4倍もの破裂強度を求められるため、机上の解析だけでなく実際に加圧試験を行って検証も行いました。」と開発担当の中根氏はその苦労を振り返る。当初は拡散接合を外注することも視野にあったが、法令適合のために接合条件を自社で把握する必要があったことから、自社内での製作に踏み切ることにしたという。

同社が2020年に発表したこのプレクール熱交換器は「マイクロチャネル式」と呼ばれるもので、半月状断面の流路が複数形成された厚さ1mm程度の板を積層することで内部に多くの微細流路を持つ構造だ。従来標準であったシェル&コイル式(容器内部に伝熱コイルを配置した形状)の熱交換器と比べ数十分の1のフットプリントを実現したほか、同社のコア技術である熱流体解析技術を用いて高効率化も達成した。国内を中心にすでに100台以上を販売したこの熱交換器だが、今年2025年にはASME(米国機械学会)規格認証も取得、今後は北米向けに販路を広げていく予定だ。
レーザー加工技術を支える製品も展開―レーザー加工機向けの各種ソリューション
オリオン機械株式会社では、レーザー加工技術を支える製品も展開している。代表的なものがレーザー加工機向けの精密空調機とチラーだ。
ピコ秒・フェムト秒レーザーの登場によってレーザー加工の精度は年々向上しているが、加工精度を維持するのに必要不可欠となるのが加工機周辺温度の制御だ。「レーザーが高精度化しても、加工機周辺の温度が上下しないよう管理されていなければ加工精度は出ません」と担当者はその重要性を説く。同社の精密空調機は吹出口で±0.1℃の温調管理ができるため、このような用途に特に適しているという。
またチラーでは、ファイバーレーザーの発振器と光学系の2系統をそれぞれ別の温度に冷却できる「2チャンネルチラー」を展開。従来2台必要だったチラーを1つにまとめ省スペース化に寄与するほか、インバータ制御で省エネ化と冷却の最適化も実現している。


2026年で創業から80年を迎えるオリオン機械株式会社。磨き上げた真空と冷熱の技術で、今後も様々な産業分野の発展に寄与していく。
(注1):すべての気体には分子間力(分子同士の間に働く引力)が存在する。そして気体が膨張して分子同士の距離が広がっていくとき、この分子間力に打ち勝つためにエネルギーを消費する。この時に、気体の温度が低ければ分子間力>反発力となるためエネルギーが減り気体の温度は低下する。逆に高温気体の場合、分子間力<反発力となることでエネルギー収支がプラスとなり、さらに発熱する(これを「ジュール・トムソン効果」という)。そして冷却と発熱が切り替わる温度を「逆転温度」と呼ぶが、酸素や窒素といった一般的な気体ではこれが常温よりも高い。つまり「常温では膨張すると温度が下がる」ということだ。対して水素は分子間力が弱いためこの逆転温度が-80℃と非常に低く、常温では膨張に伴い温度が上がってしまうのだ。この性質こそが、水素をタンクに充填するときに大きな障壁となる。
