業界特集
株式会社ヤマテック
掲載企業株式会社ヤマテック
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主要3品目
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精密スポット溶接
拡散接合技術を活用した金属接合
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従業員数
23人
パラジウムの接合にも成功―国内では珍しい拡散接合「専業」メーカー

金属同士を溶かさずくっつける技術がある―それが「拡散接合」だ。拡散接合では、高温の不活性ガス中で金属を密着させること内部で原子の拡散が生じるという性質を利用して接合を行う。溶接やロウ付けなどと違い、接合面に異物が混じらないことから母材並みに高い強度が得られるほか、条件設定次第で異種材も接合できるのが特徴だ。しかし、金属を重ねて加温・加圧するという単純な仕組みとは対照的に設備コストが高いほか、条件設定が接合の品質に大きく影響するため非常に難易度の高い加工ともいえる。
東京都西多摩郡瑞穂町に本社を構える株式会社ヤマテックは、この難しい拡散接合を20年以上にわたって「専業」で行っている日本でも数少ない受託加工企業だ。1990年の創業当初はスポット溶接の受託を主業としていた同社だが、ある顧客からのニーズに応える形で拡散接合に挑戦、2001年の本社移転以降は拡散接合一本に注力してその実力を磨いてきた。
同社の最大の特徴はその対応力。金属に荷重をかける加圧シリンダが4本ある大型炉を用いて加工を行うため、数万個単位の大量ロットから大型の1点物まであらゆるサイズ・形状の製品を作り出すことができる。また、接合が難しいとされる材料の組み合わせにも対応しており「ステンレスと銅」「ステンレスとチタン」といった組み合わせのほかにも、パラジウムの接合にも成功したという。技術的な知見を豊富に持ち合わせた技術営業担当がヒアリングから行うため、難しい組み合わせにも柔軟に対応できるのが特徴だ。

結集したノウハウで高機能な部品を製作―世界の半導体産業を支える
株式会社ヤマテックの主な顧客は半導体業界だ。同社が半導体業界向けに供給している製品のひとつに「薄膜用吸着板」が挙げられる。これは半導体製造工程においてウェハや薄膜基板を吸着・固定し搬送するための治具で、50μmというごく小さな穴を数千個開けた板から空気を吸い込むことで対象物を吸着させるというもの。これだけ微細な穴を大量に開けるのは機械加工では不可能に近く、エッチングで加工した板を重ねて拡散接合で一体化するのが最も適しているのだ。50μmの穴の開いた板を30枚ズレないように重ねて接合できるというから、同社の技術力の高さが窺い知れる。

また大型のものでは、樹脂部品を製造する金型も製造している。この金型が通常の金型と異なる大きな点は、内部に立体的な冷却流路を持つということだ。拡散接合を用いることで内部に複雑な形状の流路を簡単に製作できるという利点を活かし、成形物の形に合わせた流路を配置している。こうすることで、切削や鋳造の金型に比べて大幅に冷却効率を高めることができ、射出成型において最も多くの時間を消費する金型の冷却時間が短縮され成形のハイサイクル化が実現するのだ。きちんとした条件で接合すれば母材並みの強度を発揮できる拡散接合では、金型を製作することさえも可能なのだ。



熱マネジメント部品と相性の良い拡散接合―ヤマテックが描く将来像とは
現在、株式会社ヤマテックではこれらの製品製作にとどまらず、拡散接合を用いた工法転換に関する相談も受け付けている。「ロウ付けや接着剤を用いた接着では、界面(接合面)に脆弱な層が生まれやすいため、漏れや強度不足といった懸念が生じます。拡散接合では、同一材料が異物を介さず一体となるため、これらの不具合が起こりにくいのが特徴です」と同社担当者。近年では3Dプリンタなども登場したが、コストや量産性の面では拡散接合が依然として優位だという。同社では接合条件の管理やリークチェックだけでなく、超音波探傷を用いた非破壊試験も実施し万全の品質管理体制を敷いている。
同社が今後目指すところについて代表の坂田氏は「熱マネジメント分野に注力していきたいです」と語る。内部に複雑な流路を形成したり、熱伝導性の異なる異種金属を接合したりすることが可能な拡散接合はヒートシンクなどの発熱対策部品と非常に相性が良い。このメリットを活かし、半導体のみならず、パワーデバイスや電池などの分野にもその適用範囲を広げていくのが同社の狙いだ。
あらゆるものが小型一体化・高機能化する昨今、拡散接合という技術に改めてその価値を見出されようとしている。拡散接合一筋20年以上のパイオニアである株式会社ヤマテックが、その技術力とノウハウで日本のものづくりをリードする日もそう遠くない。
