
業界特集

ニッポン高度紙工業株式会社
掲載企業ニッポン高度紙工業株式会社
世界初のセルロース製リチウムイオン二次電池セパレータ
世界初の高性能セルロース製リチウムイオン二次電池(LIB)セパレータ「Cellulion®」。100%セルロース繊維でできているこのセパレータは量産開始から10年以上を超え、車載用電池や産業用電池に広く使用されている。一般的な二次電池用セパレータには、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などのプラスチック製多孔質フィルムや無機塗工フィルムが用いられている。セルロース製はこれらの素材に比べ、耐熱性や高温下での寸法安定性が高い。さらに電解液濡れ性に優れているため電解液を早く吸って均一に保持でき、電池の生産性向上にも寄与する。また、高空隙な構造とすることで、充放電時の内部抵抗を低減でき、急速充放電を可能とする。つまりバッテリーの充電時間の短縮に貢献するというわけだ。EV自動車用駆動バッテリーなど、エネルギー密度の高い分野では強度や遮蔽性に優れたフィルムが選ばれているが、急速充放電を要するといったパフォーマンスが求められる分野を狙っていきたい考えだ。「ニッチで特殊な領域ではありますが、ニーズは確実にあります。フィルムとは差別化する提案をしていきたい」という。
伝統産業と最新エレクトロニクスが融合した「高度紙」
コンデンサ用・電池用セパレータで活路
高知県高知市に本社を置くニッポン高度紙工業株式会社は、もともとは伝統産業である手透きの土佐和紙を原点としている。土佐和紙にビスコース加工をすることで耐水性と耐熱性を高めた「高度紙」の販売を開始した同社は、戦時中の物資不足の中、コンデンサ用セパレータに高度紙が用いられるようになったことでエレクトロニクス分野に進出。以降、コンデンサ用セパレータの製造メーカーとして高いシェアを誇っている。
セパレータに求められるのは、薄くて均一な性能だ。同社の強みは繊維を微細化する技術力、そして不純物を極限まで取り除く管理能力にある。リチウムイオン電池用セパレータはアルミ電解コンデンサ用セパレータに比べ、より薄型化が求められる一方、薄くてもショートしない性能の高さが求められ、同社は高い評価を受けているのだ。
次世代電池として全固体電池が注目され、世界中のメーカーがしのぎを削っている。全固体電池はセパレータを必要としない。だが同社では全固体電池用電解質基材に着目し、支持体の開発に着手している。今後も電池分野での技術発展に貢献していきたい考えだ。

植物由来のセルロース材料でバイオプラスチックに更なる付加価値を
ニッポン高度紙工業の新たな挑戦は、セルロース材料だ。同社が持つ微細化技術を活かし生み出されたセルロースマイクロファイバーは、減プラスチックやバイオプラスチックとの親和性の高さに注目を集めている。比表面積が大きく高アスペクト比の材料で、フィラーとしてプラスチックに添加することで、補強効果が期待できる。一般的なセルロースナノファイバーに比べてセルロース純度が高いため、着色自由度が高く分散性にも優れる。

ガラス繊維と比べるとリサイクル性に優れる点も注目だ。バイオプラスチックを用いた際の懸念となる強度不足や素材のばらつきといった成形性の補助、または発泡体製造時の発泡核材として用いることができる。自動車部品など高剛性・高耐熱性を求められるような部位ではなく、環境配慮といったニーズに適合し、バイオプラスチックを用いた高付加価値な分野で用途拡大を目指す。「当社は成形業界にあまり知見がないこともあり、一緒に新しい可能性を見出してくれるパートナーを求めています。ぜひお声がけ頂きたい」伝統産業を原点に持つ最新技術。セルロースの可能性はまだまだ広がっている。