
業界特集

株式会社山本金属製作所
技術開発部 部長 山本 隆将 氏
営業部 課長 松田 亮 氏
掲載企業株式会社山本金属製作所
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主要3品目
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無線多機能デバイス「MULTI INTELLIGENCEⓇ」
微細加工部品(各種材質の対応可能)
医療・医薬機器のアルミ精密部品
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従業員数
320人
工作機械の「見える化」で感覚を数値に
これまで、熟練工にしかできなかった切削加工時の工具管理、異状検知をデジタル化する。そして今までできなかったことを可能にする。そんな加工現場の「見える化」システムがある。それが株式会社山本金属製作所の加工モニタリングツールMULTI INTELLIGENCE®だ。工作機械の回転ツールホルダを切削、研削そしてFSWにそれぞれ適したデバイスに付け替え、工具を取り付けるだけで、より刃先やプローブ先端に近い位置で温度・振動・力をモニタリングすることができる。無線でデータを送るため、リアルタイムでの計測が可能となる。最近の工作機械でもこれらの情報を取得できるものも登場しているが、これらは主軸やモーターなどからのデータであることもあり、より加工点に近いデータを取れるというのがMULTI INTELLIGENCE®の特徴だ。
工作機械は稼働時、クーラントの流量を最大で使用している例が多い。工作機械におけるクーラントポンプ関連の消費電力は大きく全体の50%を占めることもあり、課題となっている。しかしクーラントの適正な流量を知ることは難しく、これまでなかなか着手できなかった。そこでこのMULTI INTELLIGENCE®を用いて、クーラントの流量と温度、切りくずの排出性をモニタリングしたところ、最適流量を割り出すことに成功したのだ。これによって電力量を20%減少させることに成功した。このように、これまではなかなか着手できなかった改善や最適化に、数値という客観的なデータで貢献できるのがMULTI INTELLIGENCE®なのだ。

FSW(摩擦攪拌接合)の工程管理・全数検査をデバイスで実現
FSW(摩擦攪拌接合)は物体と物体を固相状態のまま接合できるという点で、溶接や溶着とは異なる新しい接合技術だ。物理的にかき混ぜるため、異素材同士でも強度が高くなる。アルミなどの非鉄に適しており、自動車などでは広く使用されている。しかしこのFSWは温度管理が繊細であるため、モニタリングが重要になってくる。ここで活躍するのが同社のFSWに特化したMULTI INTELLIGENCE® i-stirだ。同デバイスを用いれば、加工に問題がないか、数値でモニタリングできるだけでなく、全数データを蓄積することで加工しながら全数検査を行うことも可能となり、破壊試験の回数やコストを抑えることができると言うわけだ。現在では自動車関連企業を中心に、大手から中小の工場でも導入が広がってきている。同社ではFSW導入のインテグレーションサービスも行っており、MULTI INTELLIGENCE®をセットで導入することも多いという。


「より少人数に、より小さく」を提案するロボットSIer事業
同社は3Dプリンタとロボット、そして機械加工を融合した製造現場改革にも乗り出している。同社工場内だけでなく、ロボットSIerとして他社からも引き合いが来ており導入の実績もあるという。同社が得意とする製品はそれほど大きくなく、また多品種少量生産も多い。ロット自体もそれほど継続せず、次々に新製品が来るという現場では、ロボットアームは樹脂の3Dプリンタでも強度的に十分である場合も多い。3Dプリンタで作ってそのまま導入できる同社のツールプリセッター自動化システムは、小規模な工場でも喜ばれているのだ。トポロジー最適化したデザインを3Dプリンタで印刷すれば、低価格でより軽量化したアームが作れる。小さいロボットで実装できれば、より小さなスペースを実現できる。ロボットが活躍すれば人の工数を減らすことができ、少人数でも生産性を上げることができる。山本金属製作所には、日本のさまざまな加工現場のニーズに寄り添った提案を行う準備がある。

