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低抵抗切削工具でロボットマシニング加工の常識を変える

低抵抗切削工具でロボットマシニング加工の常識を変える

株式会社イワタツール

掲載企業株式会社イワタツール

従業員数

36 人

年間売上高
10 億円

会社を超えてロボットの未来をつくる「ロボット加工技術研究会」

 「ロボットで加工がしたい」。顧客と距離が近い工具メーカーには、そんな声が聞こえてくる。しかしロボットマシニング加工は、「弱くて、遅くて、精度が低い」。機械加工を長く続けてきた者ほど、「ロボットでは工作機械の代わりは務まらない」「機械加工分野では使い物にならない」そんなイメージを抱いている。切削工具メーカーである株式会社イワタツールの代表取締役社長 岩田昌尚氏もかつてはそう考えていた一人だった。トライエンジニアリング株式会社がロボットマシニングの取り組みを聞いたときも、「無理ではないか」という感想を抱いたという。だが今、その不可能を可能にするところまできている。

 トライエンジニアリングは世界初のロボットヘミング加工の特許を持つなど、ロボットでの機械加工システムを開発してきたノウハウも持つロボット SIer 会社だ。しかし現状のロボットをそのまま使用するだけでは、マシニング加工は難しい。そこでロボットマシニングに必要な要素をトライエンジニアリングが提供し、株式会社安川電機やファナック株式会社が開発に乗り出した。何台もの試作機の評価、改善を行い、ついに高剛性高精度ロボットを開発したのだ。

 今までにないものを作り上げるのに一社だけでは難しい。ロボットマシニングにはロボットの性能だけでなく、加工ノウハウ、アプリケーション、治具、測定器、クーラントさらに CAM などさまざまな技術を組み合わせることが必要となる。それはまさにオープンイノベーションなのだ。

 ロボットマシニングはついに実用化を実現し、普及段階に入った。そこで株式会社イワタツールとトライエンジニアリング株式会社が旗振り役となり、2024 年 7 月にロボット加工技術研究会を立ち上げた。ファナックや安川電機といった大手産業用ロボットメーカーのほか、ジェービーエムエンジニアリング、田野井製作所なども加わり、共同で開発、情報発信を行っている。会員はこれからも増えていく見込みだ。

弱い、遅い、精度が低いを解決する低抵抗切削工具

 ロボットマシニング加工を行う上で、工具メーカーであるイワタツールはどのような役割を果たしたのか。それは低抵抗切削工具の開発だ。なるべく負荷をかけず、ロボットの華奢なアームでもブレずに精度の高い切削加工を行うことが求められる。しかしそれは機械の剛性に頼っていたこれまでの工作機械の工具とは異なる発想が必要とされる難しい課題であった。

 「そこで生かされたのが、2012 年にテレビ番組の企画に参加した際に出たアイデアでした。難しい課題や高い要求に対応すべく、発想の転換が求められたくさんのアイデアが出ていましたが、売り物には使えないと寝かせていました。それが 12 年の時を超えて製品化することができました」と岩田氏は話す。

 こうして完成したイワタツールの低抵抗切削工具「ドリルミル」は、ロボットマシニングだけでなく新たな可能性を生み出したのだ。低抵抗であるということは、熱の発生が少なく、従来よりも高速で使用できる。さらに熱が発生しないため、アクリルのようなプラスチックを溶かすことなく透明加工が可能となった。条件によってはスラストをほぼゼロに近い形で加工ができるということは、薄肉などワークの剛性が低いものでも加工が可能となる。低抵抗切削工具はロボットだけではなく、加工の可能性を大きく広げたのだ。

 JIMTOF2024 では特色ある 4 種の加工実演を行い、大好評を博した。ファナック社製ロボットによるロボットマシニング加工はもちろん、brother 社の小型マシニングセンタSPEEDIO での超高速加工、碌々スマートテクノロジー社の高精度高速小径微細加工機MEGA ではアクリルの鏡面加工、さらに卓上マシニングセンタでも精密な加工が可能となった。今後の展示会情報も要注目だ。

機械加工の新時代を拓く

 ロボットのメリットは自由度が高いことだ。大きなものを大きなまま工作機械で加工することは難しい。ロボットならば、ワークの周りにロボットを置いてアームを伸ばし、下から上方向に加工することも可能だ。材料の出し入れや運搬、ひっくり返すこともロボットならば一台で完結する。自動車や航空機、電車といった大きなワークの周囲に何台もロボットを配置し、同時加工を行うことも可能だ。コストを大幅に下げることが期待できる。全く新しい市場が生まれてくる可能性がある。

 ファナックなどが上市した高剛性高精度ロボットによって、新規参入してくる企業も多い。だが、イワタツールにはロボットメーカーやロボット SIer 会社と共にロボットマシニングに取り組んできたノウハウがある。ロボット内部を知り尽くして工具を開発しているのだ。「あり得ない要求を真面目にやると、全く新しい発想が出てくる。そしてそこからとんでもない新製品が生まれます」と岩田社長は自信を見せる。イワタツールは機械加工の世界に、次はどんなイノベーションを起こすのか。

代表取締役社長 岩田 昌尚氏

製品情報

  • パイロット穴に特化、超精密位置決めドリル「SPセンターZERO」

  • ★9枚刃★ 面取り速度を3~7倍にUP、高速面取り工具「トグロン®マルチチャンファー」

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