業界特集
株式会社スズキプレシオン(栃木県鹿沼市)
掲載企業株式会社スズキプレシオン
-
主要3品目
-
チタン精密加工
超精密機械加工
微細穴加工
-
従業員数
52人
-
年間売上高
- 10億円
機械加工会社がなぜ倍速スピンドルを開発したのか
自動旋盤で小径ドリルやエンドミルを使用する際、市販の自動旋盤の仕様では工具メーカーの推奨する回転数では加工することができないのが現状である。そこで海外製の倍速スピンドルを導入したが、性能や加工精度に問題があり思ったような結果が得られない。ならば自社で開発してしまおう。――こうして株式会社スズキプレシオンは倍速スピンドルの開発に着手した。大学教員などの研究者の協力によって、ロスが少なく伝達するが発熱は抑えるという理想的な歯車形状を算出したが、特殊な形状であり切削するのが難しい。だが同社は超精密切削加工を得意とする機械加工会社だ。自社の技術を生かし、机上の計算で得られた形状を限りなく再現することに成功した。3年の開発期間を経て、2012年、ついに4倍速回転工具「アイビー・スピンドル」が完成した。
医療機器製造のノウハウと品質管理が強み
アイビー・スピンドルの強みは、確かな技術力で製造された高い品質と性能、さらにシチズンマシナリー株式会社、スター精密株式会社、株式会社ツガミの自動旋盤メーカーで認められた世界で唯一の正規オプション品であるということだ。スズキプレシオンは開発段階からこれらのメーカーとコミュニケーションを取りつつ設計・開発を行い、スピーディーなアフターサービスを提供することでメーカーの信頼を獲得。その確かな品質はシチズンマシナリー社製の自動旋盤に搭載している「標準スピンドル」の委託製造を行っていた実績もある。アイビー・スピンドルは自社の精密部品製造のノウハウを詰め込み、医療機器製造ISO13485の認証を取得している高い品質管理環境によって製造しているのだ。使用方法も簡単で、レンチ1本で標準スピンドルと交換することができ、電源も配線も必要としない。現在では日本国内のみならず、アジア、北米、欧州などで累計6000本を売り上げている。
切削加工の高速化と環境配慮を実現
回転数が上がるということは、それだけ切削スピードが上がるということだ。つまり加工時間の短縮、生産効率のアップ、さらに電気代節約にもつながる。同社は現在も売り上げの70%以上は医療機器の製造を行う切削加工会社であり、アイビー・スピンドルのメーカでありながら一番のユーザーでもある。試算によれば、同製品を使用することで電気代の40%削減に成功した。同製品を使用することで、従来設備の更新をしなくても回転数を上げることができる。まさにイノベーションなのだ。
取締役副社長の鈴木 勲氏 は「まだまだ知られていないことが課題です。自動旋盤を使う多くの会社にもっと知ってもらいたい。使ってもらえれば、良さを分かってもらえるはず」と話す。同社のWebサイトでの生産効率化のシミュレーションや、デモ機の貸出など、導入支援も充実している。また、修理やメンテナンスなどのアフターサービスも短期間で対応している。生産現場の効率改善、作業者の労働時間の短縮は避けて通れない問題だ。さらに燃料代の高騰、カーボンニュートラルといった社会情勢の中で更なる活躍が期待できる。