業界特集
株式会社三松(福岡県筑紫野市)
掲載企業株式会社三松
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主要3品目
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精密板金加工
省人化設備設計製作
工場向けソフトウェア設計
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従業員数
175 人
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年間売上高
- 33.3 億円
株式会社三松の板金部品の多品種少量生産の規模は並ではない。月間生産数12万個のうち、実に7割は生産数が1個というから驚異的だ。同社は葉たばこの乾燥機から始まった。農作物の収穫時期に合わせて機器を生産するため、年間の半分は工場の稼働がストップしてしまう。その間を埋めるためにノリや干物などの水産品の乾燥機の製造に着手。そこで初めてステンレス加工を取り扱うようになると、その加工を厨房機器、半導体と次々と他業種へ展開していった。異なる業種のさまざまな部品を取り扱っていたことから、多品目を効率よく管理する必要に迫られ、自社で生産管理システムを構築し、IoTを取り入れた。それにより部品から完成品までニーズに合わせて製造代行を行う体制を作り上げたのだ。
「近隣で協力工場が得にくい」という環境もあり、同社は社内で塗装からマシニング加工、装置設計、ソフトウェア開発から組立までこなす。西日本最大級の自動塗装設備を持つだけでなく、同社が開発した塗装管理システムは、被塗物のサイズや形状を把握して生産の最適化を図る。コストダウンや省エネの実現から生産性の向上、さらに従業員の考課まで包括したシステムだ。装置設計を担当する従業員は、工場内の省人化や自動化装置の開発まで平行して行ってきた。現場を知る社員たちが開発した生産管理システムだからこそ、生きたシステムが生み出される。こうした自社開発の情報インフラを活用して、他社に対するコンサル事業にもつなげている。
端材の活用から始まった自社ブランド「金属王(KINZOKUOH)」も、同社へ新たな展開をもたらした。デザイナーとつながりを持ったことで、産業機械にデザインという新しい可能性が見えてきた。さらに大学との連携によって生まれた「三松大学」は、三松のブランディング戦略の1つだ。代表取締役社長田名部徹朗氏は、「大学教授にシンクタンクとなってもらい、三松をどうブランド化するのかを模索しています。当社のサービスや技術をどうお客様に分かりやすく伝えるか。それは『技術が社内でどういう形で教育・伝承されているか』ということにもつながる。そこでスタートしたのが三松大学です」と説明する。三松大学はEラーニングによる教育システムで、社内認定制度として優秀な技術者をマイスターとして認定している。同社の短納期プロジェクトを担うのはこのマイスターたちだ。マイスター制度は「客先に安心して任せてもらうための担保」としての役割を果たし、他社へのアピールも兼ねているのだ。独自のノウハウで活用されるMERC加工技術とともに同社の強みとなっている。
大学との連携は同社の事業展開をさらに拡大させている。同社は工場見学を技術交流や連携の場としても活用。新しい出会いが、同社に更なる展開をもたらしていく。