業界特集
三和メッキ工業株式会社(福井県福井市)
掲載企業三和メッキ工業株式会社
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主要3品目
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アルマイト加工処理 ( 硬質)
硬質クロムめっき
無電解ニッケルめっき
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従業員数
27 人
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年間売上高
- 5.8億円
めっき技術のたゆまぬ進化と顧客の課題に合わせた最適な提案
1956年福井県福井市にて創業、毎年新たなめっき処理を導入している三和メッキ工業株式会社。現在、27人の従業員が26種類のめっき処理を行っている。2000年にはISO9001を認証取得、同年にWebサイトを立ち上げた。その後、インターネット経由での事業者や法人からの受注も相次ぎ、当時は 製造業Webサイト のパイオニアとしてメディアにも注目された。
得意分野は、高精度で硬さの向上と耐食性を高めるめっき処理だ。厚さ1μ~3μの範囲内で処理が可能であり、日本産業規格 (JIS規格)に則った耐錆処理を得意としている。特にアルミニウム用のアルマイト処理において、色付け、硬化、滑りの向上、錆防止の4つのメニューを提供している。アルマイト処理設備は北陸地域で最大規模だ。半導体装置の搬送装置、ロケット関連、滅菌製品などの製品を多く取り扱う。主要取引業界は半導体製造機器、ファスナー製造機械、繊維関連機械に関わる。他にも衛星やロボットなどの最先端テクノロジーの一端も担っている。
また、マスキングを施した部分めっきにも定評があり強みだ。最近は全国から多くの案件が寄せられている。特に、Web検索からの問い合わせが多く、Webサイトを立ち上げた2000年から通算して3万9500件の問い合わせ実績を誇る。
めっき処理だけに限らず、関連する治具やマスキングコーティングなどについても、どの方法が最適かを検討・提案している。
同社は数多くの種類のめっきを行うため、社内での技術継承が重要だ。そこでISO9001に則り、文書や動画を残すことで、技術ノウハウの蓄積、共有を行っている。従業員はスマートフォンを使いながら業務中に工程をチェックできるように、常に現場にはスマートフォンを持参するという。あらゆる客層に対応するため、仕様書や図面はアナログとデジタルの両方に精通し、めっきに関する知識が限られる顧客に対しても詳細なアドバイスや技術資料を提供している。他社が施しためっき処理に関連する問題の原因解明といった依頼にも対応している。
個人メッキ加工専門店「必殺めっき職人」も展開しており好評を得ている。最近では自動車やバイク、そしてライター関連のめっき注文が急増しており、特にリストア(修復)の依頼が目立っている。顧客は既製品では手に入らない特定の色合いや、30年以上も昔の当時ならではのめっき加工を求めており、これらの依頼は主に個人から直接寄せられている。メーカー側はめっきに詳しくないことが多いため、めっき専門の同社に直接依頼が出来る仕組みを確立させることで、顧客は具体的な要望を伝えることができ、同社も最良の提案を行うことができる。このことが納品までの時間を短縮し、コストを抑える一因となっているのだそう。近年、DIYやネット検索を通じてめっきについて詳しい個人が増加していることも追い風だ。コロナが明けたことで更なる需要が増え、同時にWebサイトをリニューアルしたことで、電子メールや電話の問い合わせが更に急増した。
成功と失敗からの学び、Webマーケティングの変革と新技術の採用
製造業として早期にWebマーケティングに参戦するため動き出した三和メッキ。2000年、当時Webサイトの設立背景には、ISO認証を広く知ってもらい、既存の企業カタログをWebサイトに置き換えるという発想から立ち上げた。当時は飛び込み営業を盛んに行っていたが、受注成功率は1%未満。更に価格競争が激しかったという背景もあり、Webサイトを立ち上げ全国に広く会社を知ってもらおうと考えた。しかし、当時はWeb普及前であり、訪問者は非常に少なかった。わずか3人程しか訪問されないこともあった。
辛抱強く、Webサイトを続けること5年。2005年にアクセス数が急増したことで、ターニングポイントを迎えた。それ以前はほとんどがリピーターの受注であり、新技術の開発に対する需要がなかったため、Webを介して難しい案件を取り扱う機会に恵まれたことは非常に重要な経験となった。成功だけでなく、失敗も含めてノウハウを蓄積したことは、現在の三和メッキの基盤となっている。
Webマーケティングを通じて、営業方法だけでなく、同社におけるめっき事業の在り方も変わることで、新技術の採用が増加、試作開発が量産につながり始めた。初期では提供できる技術のみを提示していたが、顧客の要望と問い合わせをWebサイトに反映していき、現在は充実した 内容に進化している。Webサイト立ち上げ時期からSEO対策にも非常に力を入れていて、Webマーケティングへの本気度がうかがえる。
現在は、AIチャットボット(AIによる自動チャットプログラム)を使用して、Webサイトからの問い合わせに即時対応することを大事にしているという。チャットボットが最終的に「詳しくはメールへ!」と誘導することで、担当者の負担の軽減と相談者の心理的ハードルを低くしている。問い合わせ窓口をAIに任せる代わりに、担当者は即レスポンスを徹底。基本的に10分以内の返信を心掛け、見積もりが最短30分、納期は最短2日というスピード対応だ。
社長の清水栄次氏は、最も重要なことは「お客様の視点に立つこと」だと言う。Webマーケティング、対面営業問わず、お客様の必要性や要望に合わせて提案を行うことが不可欠なのだ。常に豊富なレパートリーを用意しておくことで、1つの提案ではなく、複数の選択肢を提供し顧客が選ぶ余地を準備することが大切だという。
製造業におけるWebマーケティングの開拓者的存在であり、数々の試作やノウハウを経験してきた三和メッキ工業株式会社。そんな三和メッキの今後チャレンジしたいことは「特にない!」と言い切る。Webマーケティングに挑戦して20年。さまざまなことにチャレンジしてきた。一度原点回帰して振り返る。「いまは足場を固める時期だ」と清水氏は振り返る。
三和メッキ工業株式会社はこれまでの挑戦で得た高度なめっき技術と巧妙なWebマーケティング戦略を融合させ、堅固な独自性を確立させていくだろう。