業界特集
碌々スマートテクノロジー株式会社
代表取締役会長 海藤満 氏
掲載企業碌々スマートテクノロジー株式会社
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従業員数
170人
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年間売上高
- 50億円
1903年創業の碌々商店を起源とする碌々産業株式会社が、120周年となる2023年10月を機に、碌々スマートテクノロジー株式会社に社名変更して早1年。これまで「MEGA」「Android」「Vision」といった微細加工機の名機の数々を生み出してきた同社であるが、「スマートテクノロジー」というワードを社名に冠することで微細加工のソリューションカンパニーへの進化を宣言した。「機械だけが良くてもダメだと思って。『機械と、工具と、CAMと、環境』、つまり機械(ハード)とソフト、そこにさらに人が融合することによるソリューションを提供しようと考えました」と碌々スマートテクノロジー株式会社 代表取締役会長の海藤満氏は、現在の組織体制に込めた想いを語った。
碌々スマートテクノロジーが次に目指すのは、200周年である。「200周年を迎える時は、私も、今ここにいる人たちも、みんな死んじゃっていませんよね。それでも企業は連綿と続いていくということです。企業が存続するには、カリスマ的存在に頼ってはならない。150年だとまだ私が生きているかもしれないから200年にしたのです」。
頭の冴えた敏腕経営者も、老いという自然現象には逆らえず新しい状況への適用はだんだん難しくなる。成功体験が邪魔をして正常な判断ができなくなることもあろう。事業が延々と続くよう、自分の中に知見を閉ざさず、人から人へつないでいくべき。そのためには、まず一人ひとりが自社と仕事に誇りを持てる企業文化を醸成する必要がある。「まさに今、自分自身がそれに挑戦していますが、なかなか難しいですよね」と海藤氏は言う。
「マシニングアーティスト」とは何か
今、碌々スマートテクノロジーが積極的に行っているのが、社外を対象としたアウターブランディング、社内を対象としたインナーブランディングである。
アウターブランディングの1つとしては、ラジオ出演がある。FM軽井沢の『軽井沢ラジオ大学 ものづくり学部』では、全国の個性さまざまである高専(高等専門学校)の教員や学生とともに、ものづくりの楽しさやすばらしさを語らってきた。この番組の活動を開始して2年が経ち、48校が登場。高専数は国公立・私学の合計で58校(2023年度、文部科学省)であり、既に全校コンプリートに近い状況である。
海藤氏は彼らとの語らいの中で、性別など特定のカテゴリーでくくることなく、感性の鋭いエンジニアを育成しようという機運が高まっていることを感じてきた。まさにそれを育成しようと取り組んでいるのが、微細加工機のオペレーターのための「Machining Artist(マシニングアーティスト)」普及活動とexpert Machining Artist認定制度である。
「微細加工は人が持つ五感をフルに駆使して行う繊細な作業なので、アートの側面があると考えています。その一方で、微細加工で製作するのは工業製品ですから、大量に作り安定した品質を担保するべきです」と海藤氏が言うように、一般的なアーティストのイメージや意味とは少々異なる。繊細な感性と、データ活用や評価ができる理論的視点をバランスよく備えた技術者である。「あくまで啓発活動で、資格試験ではないのです。モノを作っていただいて、当社の認定審査員が『素晴らしい!』と評価すればexpert Machining Artistの認定証を差し上げます」と海藤氏。日頃、思いを込めて業務に打ち込んでいるような人であれば、決して難しくないはずであるとも。現在、認定を受けたe.M.Aは全世界で100人を超えたところだ。
インナーブランディングとしては、碌々スマートテクノロジーの歴史や想い、業務方針などしっかり分かりやすくプレゼンテーションできる人に、「碌々アンバサダー」の称号を与え報奨金を出すようにしているという。「社内の誰かが取ると、俺も取ってみるか! となるみたいですね。現在、9割以上の社員が合格しています」と海藤氏。この評価も海藤氏自身はかかわっておらず、合格した社員が審査をしている。
JIMTOFでは『黒いアイツ』が待っている
新体制になって初のJIMTOFでは、高精度高速小径微細加工機「MEGA-Ⅶ」と超高精度高速微細加工機「Vision-600」と、満を持して、微細複合加工仕様コンセプトマシン「Android III-MT」を初披露する。詳細はここでは語ることができないとのことなので、ぜひ展示会場で聞いてみてほしい。
「展示会ではずっと、当社のコーポレートカラーでもある『黒』のブースで出展してきました」と海藤氏。今回は、さらに黒さを追求するとのこと。「黒いというと、どうも悪いイメージもありますが、当社のイメージは『クール』さ。要は、『カッコよさ』です。もちろんAndroidⅢ-MTの機能も聞いたら皆さんきっと驚かれるかと思いますが、マットブラックのボディにセクシーに映える紫のLED発光にもぜひご注目ください」。