業界特集
株式会社中村製作所
掲載企業株式会社中村製作所
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主要3品目
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高精度を必要とする精密部品加工
フランジ、スリーブ、ハウジング
チタンなどの難削材加工品や5軸加工
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従業員数
95人
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年間売上高
- 13.8億円
自社の切削技術を生かしてつくった印鑑が、潜水艦になって海を潜り、ロケットになって宇宙を飛び、そして有名テーマパークのアトラクションになって子どもたちの夢を乗せる。そんな現代のわらしべ長者のようなストーリーを実現させたのが、株式会社中村製作所だ。BtoCにチャレンジしている企業は数多くある。しかし同社ではそこから発展させてBtoCtoB、つまり自社オリジナル製品のさらにその先に、本業へリターンを実現させている。
中村製作所はφ200~φ1200の中~大型の丸物加工を得意としている。取引業種は工作機械部品を中心に、産業機械、産業用ロボット、航空宇宙関係、建築関係など、精度を要求される切削加工において実績がある。複合加工機や五軸加工機、研磨機、三次元測定機を揃え、ユニットアセンブリまで含め一貫製作で顧客の要望に応えている。
同社はリーマンショック前まで、ほぼ工作機械メーカー1社に絞る業態を取っていた。しかし売上が大きく落ち込むという打撃を受け、「待ち」工場から攻める工場へ方向転換したのだ。1社に依存する体制を改め、展示会に積極的に参加。エミダスにも登録し、自社の強みを生かせる分野を開拓していった。さらに自社ブランドを立ち上げ、BtoC事業を開始したのだ。だが最初から全てうまくいったわけではない。新たなチャレンジには、保守層からの反発もある。「自社製品で会社が盛り上がるというのは、宝くじを当てるようなもの。むしろこれをやることで会社の変化変革をもたらすものと考えています。必要なのはトップの意思と明確な目的です」と代表取締役の山添卓也氏は力を込める。同社では自社製品をプロモーションと位置づけ、認知度の向上、さらには信頼性を上げるために活用している。知名度が上がったことで採用にも良い効果をもたらし、従業員数も大きく増加した。メディアへの露出も積極的だ。「もう自分はピエロになるつもりで、恥をさらしています」と山添氏は言うが、その姿勢にはゆるぎない信念がある。
2018年、同社のオリジナルブランドMOLATURAの蓄熱調理鍋「ベストポット」はGOODDESIGN賞を受賞。地元である四日市の地場産業である萬古焼と自社の切削技術を融合させた商品だ。現在では自社で萬古焼の設備を導入し、内製している。2023年には製造現場の見学や体験ができるだけでなく、地産地消の食事も楽しめるオープンファクトリーをオープン。地元のメーカーと協力し、文化や技術の交流の場を作り出している。営業を強化し、商社としての機能も拡大中だ。「地元や横のつながりを大事にしながら、文化やものづくりのハブとして存在感を示していきたい。そうしてお客さんに喜んでもらいたいですね」。山添氏の「わらしべ」は、次は一体どんなものに姿を変えるのか。