業界特集
株式会社豊栄工業(愛知県新城市)
掲載企業株式会社豊栄工業
-
主要3品目
-
金型・精密金属部品
医療機器OEM製品
バイオプラスチック製品・各種プラスチック部品
-
従業員数
62人
-
年間売上高
- 7.5 億円
株式会社豊栄工業は、グローバルな問題解決に寄与するという信念を掲げている。その手段の1つがバイオプラスチックだ。同社は2007年、技術士の小松道男氏とタッグを組み、業界に先駆けてポリ乳酸(PLA)を用いたバイオプラスチックの研究開発、事業化に取り組み、順調に売り上げを伸ばしている。2017年に文部科学大臣表彰科学技術賞(技術部門)、2018年には第7回 ものづくり日本大賞 最高賞の内閣総理大臣賞を受賞するなど、その取り組みは高く評価されている。オリジナルブランドであるトウモロコシを原料としたPLA樹脂製子ども用食器「iiwan」は海外からの評価も高い。環境意識の高まりやSDGsの広がりとともに、自社の事業が「時代とマッチしてきた」と副社長の美和敬弘氏は語る。バイオプラスチックは成形性の問題から石油由来成分と混ぜて成形することが多いが、それでは環境への対応は限定的だ。美和氏によると「バイオベースを基本としたさまざまな材料を掛け合わせ、特性や物性を上げる取り組みを継続しています」という。目先の作りやすさではなく「プラスチックの環境負荷問題を踏み込んで解決していきたい」という思いはぶれることはない。
同社はもともと金属加工一筋であったが、1990年代に入り3D CADを導入。射出成形金型の部品受注から始まり、プラスチックの射出成形事業に参入した。クリーンルーム設備を持ち、ISO13485(医療機器産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格)の認証を受け、医療機器のOEM製造も行っている。「金型を製作するだけでなく、測定してどの程度寸法を直すかという修正にもすぐよく対応できる。さらに金型製作からクリーンルーム内での成形・組付けまで包括でできるということで重宝されています」と美和氏が語るように、小回りが利くことも強みだ。
成形会社としては後発だからこそ、新素材や新技術の研究開発に注力している。バイオプラスチックに適用していたMuCell(超臨界微細発泡射出成形)の成形試作支援も行っている。MuCellとは、米国トレクセル社が開発した技術で、窒素や二酸化炭素といったガスを超臨界流体状態にして樹脂に融解させ、微細な発泡構造を作り出す。これによって肉厚部品の薄肉化が可能となるなど成形品の軽量化、寸法精度の向上、ヒケや反りの防止などが期待でき、その適用範囲は広い。同社では設計、金型製造まで含めた技術支援を行うことで、より効果的な製品設計ができる。このような開発案件をさまざまな業界に広げていくことが今後の目標だ。金属加工から始まった豊栄工業は、新しい分野で更なる挑戦を続けている。