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【座談会】日本の金型産業を持続可能な産業にする事業

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日本金型工業会は3期をつとめた小出悟前会長(小出製作所社長)から、 新たに山中雅仁氏(ヤマナカゴーキン社長)へと代替わりが行われた。

金型工業会は「日本の金型産業を持続可能な産業にする」というスローガンを掲げ、金型産業戦略会議を設置した。
今後の金型産業はどうあるべきか。 前会長、新会長に話を聞いた。


小出 悟 氏
株式会社小出製作所
代表取締役社長

山中 雅仁 氏
株式会社ヤマナカゴーキン
代表取締役社長
モデレーター
横田 悦二郎 氏
日本金型工業会学術顧問・
日本工業大学客員教授

山中 株式会社ヤマナカゴーキンは冷間鍛造金型を主に製造しております。冷間鍛造というのは非常にニッチで、主に自動車のエンジン足回りに使われております。現在のEV化の流れは当社にとっては逆風です。そこで最近は金型にセンサーを取り付け、不具合を検知するサービスを提供しています。もう一つ大きな商材はDEFORMというCAEソフトウェアです。国内には現在、本社の東大阪のほかに千葉、東広島の三工場。従業員は210名。海外工場は中国とタイで、当社の金型を使って現地で冷間鍛造品を製造しています。

横田 小出前会長が戦略会議を始めた理由はなんだったのでしょうか。

小出 私たちの業界として弱いところ、逆に言えば強いところを論じながら金型産業のヴィジョンを考えていくきっかけにしたいと思いはじめました。金型業界は仕事を生み出すことができません。お客様があって初めて生きられるというとても弱い環境にある中で、金型を持続可能な産業にするために、どのような状況を自分たちで作ればいいのかをお互いで考え抜いて行こうというのが戦略会議です。

横田 山中新会長になっても、この戦略会議は継続し続けますか?

山中 もちろんそのつもりです。取引条件然り、戦略会議の中身は非常に奥深く広く、これをやることで業界の活性化につながると感じました。改めてしっかりと受け止めてやっていきたいと思います。

横田 魅力ある金型産業にするには、どう業界をP Rするかに関わってくると思われますので、新会長にはそこにぜひ期待したいところですね。戦略会議に参加して痛感したのは、業界をワンボイスにすることが大切ではないかということです。

小出 特に公の人に意見を言う際には、統一感がないとなんの力にもならないというのは感じます。先ほどPRの話が出ましたが、世間一般に対しても一つにまとまった表現がされている方がわかりやすい。下請けの呼称を辞め、イコールパートナーになりましょうという新しいガイドラインが国会で取り上げられたように、ワンボイスにしていくことで動かなかったものが動き始めるのではと期待しています。

山中 全く同感です。下請ではなくパートナーという、一番わかりやすく誰もが賛同するフレーズをピックアップして全面的に押し出したというのが大きかった。業界として会員同士のプレゼンスや結束を高めて行くべきだと思っております。

横田 金属材料等の値上げなどを、受注先に価格転嫁していくべきであるという世の中の流れが、金型の取引条件の改善を訴えていくのにちょうど良いタイミングではないかと思われますが、いかがでしょうか。

山中 この流れは今後も大事にしていきたいですね。いつ何時また変わるかわかりませんので、今しっかりこの流れを掴むように工業会としても努力していく必要があると思います。

横田 戦略会議の中で一番重要なテーマが産業や企業の持続性を保つことですが、金型企業はこれまで利益追求を第一義にしてこなかったという点があります。お二人はいかがお考えでしょうか。

小出 金型業界がお互い仕事を作り出すことができない弱さが、安さを優先してしまった原因の1つです。気が付いたときには手の施しようがなくなってしまった。やはり今本腰を入れて立ち向かわなくてはならない。ちょうど潮目が変わってきたこのタイミングを逃さず、やるべきことは矢継ぎ早にやるべきだと思いますね。

山中 あくまでも適正な利益を頂くことをモットーにしてやっていかなくてはと思います。世間では中小企業はどんどん生産性が落ちていると言われます。ですが中小企業も3%くらいはきちんと成長している。でもそれを大企業が吸い取ってしまっている現状を何とかしなくてはと思っています。小出前会長に作っていただいたイコールパートナーという下地をしっかり推進する。そして二桁の営業利益率を目指す。この高い目標をどうやって達成するかというのが、我々として智恵を出し、行動していくところだと思います。

小出 協業と競争の境目をはっきりさせていくことが重要だと思いますね。

山中 私はデータを蓄積していくことが競争力になると思っています。たとえばいろんな金型メーカーと協働してデータを収集して活用することで、生産性を高めていくことが今後できるかもしれない。ヨーロッパでは規制が厳しくなりできなくなりつつありますが、日本ではそうではありません。

横田 今後は企業同士が競争関係から、共創関係として同業者を見ていく工業会であってほしいなと私は思っています。

小出 生成AIなど技術の革新が、その答えを持っているかもしれませんね。同業者で協力してデータを作り上げ、金型工業会で生成AIの原型のようなものを作り上げて使えるようにすれば、金型工業会に入った方が得だという状況にもなります。新しい世代の方たちに、5年10年先の計画性を持ちながらやっていただきたいと期待しています。

株式会社小出製作所
株式会社ヤマナカゴーキン
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