
業界特集

NKE 株式会社
掲載企業NKE 株式会社
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主要3品目
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省力化機器製造
搬送機器製造
自動組立装置
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従業員数
156名 (2025年4月1日現在)
魅力的な商品を移動展示車で直接顧客のもとへ―
ブロック化と能動的な提案で拓く工場自動化の道
NKE株式会社は京都市伏見区に本社を抱える工場向け省力化機器のメーカーだ。1968年の創業時から自動機の設計製作を手掛けており、現在では国内だけでなく中国にも現地法人を持つ。
同社の製品ラインナップの大半を占めるのが、「掴む」「運ぶ」といった機能のユニット機器だ。2000種類以上あるというこれらのユニットをブロックのように組み合わせることで、現場に合わせて自在に生産ラインを構築することができる。同社ではこれをBBS(Block Building System)と呼び、豊富な標準品ユニットをベースに必要に応じて細かなカスタマイズを加えることで、あらゆる現場の需要にスピーディーに対応できる仕組みを構築している。

さらに、これらの標準品を単にカタログ販売するだけにとどまらないのが同社の大きな強みだ。キャラバンカーと名付けた移動展示車にこれらのユニットを積み込み、営業マンが顧客の工場を訪問する活動も行う。移動展示車で訪問することで、1つの事業所の中でも複数名の担当者が見物に集まる。この特性を活かし現場のニーズや困り事をより多く集めることで、それぞれの現場に沿ったソリューションの提案ができるという。「我々は標準品のコスト勝負ではなく『困っているけどどうすればよいかわからない』お客様に対して解決方法をご提案するビジネスをしています」と同社担当者。豊富な標準品ラインナップと課題に合わせた柔軟な提案の2つの柱で、顧客の現場ごとにオリジナルの自動機を提供しているのだ。

「面白い」から「喜ばれる」―顧客満足度の高いFA機器を作るための共通言語
困りごとやニーズは顧客だけから発生するものではない。同社では自社の製造現場で発生した課題からも製品開発のヒントを集めている。同社の中村社長は「自分たちが必要だから開発するというのはひとつの勝ち筋のポイントです。自分たちが使って、『便利だ、面白い』と思うものでなければ、お客様に満足いただけるものにはならないと考えています」と語る。この考え方に基づき、実需とは切り離された約30名のエンジニアが日々新規商品の開発に取り組んでいるという。
同社には業務の指針になる「共通言語」がほかにも存在する。それが「NKE Way」と名付けられたフィロソフィー本だ。社長の中村氏が毎月の朝礼で社員に対して呼びかけていたメッセージを体系化したこの本の中では、商品開発の哲学や指針が示されている。この指針に基づいて業務を行うことでエンジニアたちの技術一辺倒を防ぎ、常に「顧客満足」を意識しながら開発できるという。
これらの指針に基づいて開発された同社の製品は、まさに「痒い所に手が届く」ものばかりだ。例えば「立体搬送コンベアモジュール」は、段差の前後でワークの姿勢を保持したまま搬送できる。従来はリフターなどを用いていたこの動きをコンベアで実現することで、連続搬送を可能にした。
さらにコンベア関連では、今年の5月にリリースされた「オートテンション」も魅力的だ。特許取得もしているこの製品は、ワンウェイクラッチとプーリの自重によってコンベアのチェーンテンションを自動で最適に保つものだ。これを利用することで人の手によるテンション調整工数を削減するだけでなく、常に適正テンションで稼働させることができ、コンベアを長持ちさせる効果もあるという。同製品は発注時のオプション選択のほか、既存設備に導入できるようASSY販売にも対応している。このほかに、今秋には従来製品よりも大幅に小型軽量化したエアチャックも発売予定だという。


人工筋肉を使った超小型アシストスーツも開発―
搬送装置のさらに先でNKEが目指すもの
どれほど自動化しても人間が介在する作業は必ず発生するのが現場の常だが、同社はこの課題にもソリューションを提供する。それが「Airsapo(エアサポ)」だ。16本の人工筋肉を編み込んだベルトを腰部に巻き付けることで重量物運搬時の筋肉負担を低減するこの製品は、アシストスーツを作る社内プロジェクトから生まれた。「人が機械に組み込まれるようなアシストスーツは当社の目指す自動化とは違うということでこの形になりました」と担当者。同社の所在する京都府の伝統工芸「くみひも」を取り入れ着用感や見た目にも気を配ったこの製品は、まさに同社のタグライン「Humanized Automation」を体現した「人に寄り添った」自動化製品と言える。



このほかにも同社では、現場環境のモニタリングや記録を行う「WBGTれんら君」を販売しており、製造現場だけでなく幼稚園や介護施設でも利用されている。2025年6月の労働安全衛生規則改正で事業者の熱中症対策が義務化されたのを受け、今後の受注増も狙う。


搬送装置、アシストスーツと続いて同社が次に目指す場所はどこなのか。中村氏は「農業分野のお手伝いをしたいと考えています」と語る。製造業と同じく重労働の多い農業だが、段差解消などの細かな自動化ソリューションで従事者の負担を大幅に減らせる余地も大きいという。
FAソリューションで培った技術を還元し社会の課題解決を目指す株式会社NKE。人と技術の調和を目指す同社の挑戦はこれからも続く。