業界特集

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​​クリーンでサステナブルな動力源を自在に制御―空気圧サーボ技術で社会を支える​ 

​​クリーンでサステナブルな動力源を自在に制御―空気圧サーボ技術で社会を支える​ 

ピー・エス・シー株式会社

掲載企業ピー・エス・シー株式会社

主要3品目
  • 油圧・空気圧サーボ機器の開発・製造・販売

  • サーボシステム装置の開発・製造・販売

  • サーボ制御に関わるコンサルティング

​​空気圧を精密に制御し、クリーンな動力を作る―空気圧サーボ弁とは​ 

 ​​ピー・エス・シー株式会社は愛知県尾張旭市に本社を構える空気圧サーボ機器メーカーだ。前身となる会社から空気圧機器事業部が独立する形で、2002年に創業した。製品ラインナップの大半を空気圧サーボ機器が占めるが、油圧サーボ機器やこれらを駆動するコントローラーも手がけている。​ 

 ​​同社の主力製品である空気圧サーボ弁とは何なのか。​​電磁弁​​などのON-OFF弁との最大の違いは、圧力や流量の精密な制御が可能な点だ。一般的に空気圧は細かな制御が難しいとされるが、空気圧サーボ弁では内部に設けたセンサーやメカニカル機構からフィードバックを行うことで、緻密な制御を実現する。このため、空気圧サーボ弁を搭載したアクチュエーターは電動アクチュエーター並の細かな位置決めを行うことができる。​ 

 ​​空気圧という動力源は大きなポテンシャルを持つ。まず、クリーンであるという点だ。圧縮すれば大気から無限に手に入り、油も使用しないため清浄な環境でも使用できる。さらに、機構が比較的シンプルなのも大きな特長だ。このため、小型・軽量化が要求される分野で大きな実力を発揮する。このほかにも空気が持つ圧縮性の高さにより、デバイスの前後で振動を伝えにくいことなども空気圧の利点だ。​ 

​​サブミクロンの動作精度や高い耐久性で、半導体業界や鉄道車両でも活躍―
ピー・エス・シーの空気圧サーボ技術
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 ​​高度なメカトロニクス技術を必要とする空気圧サーボ弁とそれを用いたアクチュエーターは、全世界でも数社程度しか開発・製造していない。ピー・エス・シー株式会社はそのパイオニアとして、20年以上にわたり空気圧サーボ技術を磨いてきた。同社が支える主な業界は、半導体と鉄道。この2つで、同社の空気圧サーボ機器売上の大部分を占めるという。​ 

 ​​半導体ではエアステージや除振装置など、製造装置内の中核となる機構に同社の製品が使用されている。エアステージは、ナノプロセス化に伴いサブミクロンやさらにその1桁下の位置決め精度が求められる。加えて、露光装置内部に組み込まれるためモーターなど磁性のある機構は使えない。同社では長年培った空気圧サーボ技術をフル活用​​し​​、空気圧が従来苦手だった「高い精度でぴたっと止める」ことを可能にした。​ 

 ​​同社の空気圧サーボ技術は鉄道の高速化にも寄与する。カーブを高速で通過するために車体を傾ける「振り子式」車両の台車に、同社の空気圧アクチュエーターが搭載されている。振り子式車両では、カーブの曲率に応じてどれくらい車体を傾けるかをアクチュエーターで緻密かつ高速にコントロールしなければ、乗客の乗り物酔いに繋がる。加えて台車内はスペースが限られる上、常に振動に晒される過酷な環境だ。このような厳しい条件下でも安定的に動作する軽量コンパクトな機構としても、空気圧サーボには大きなアドバンテージがあるのだ。振り子式車両のアクチュエーターの他にも、同社では車両の左右方向の振動を抑え乗り心地を改善させるアクチュエーターや「空気バネ傾斜式」車両の車体傾斜装置なども手掛けている。​ 

​​空気圧サーボでさらに多くの課題解決を目指して―
ピー・エス・シーが目指す次の業界
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 ​​空気圧サーボ弁を構成する部品は真円度を中心に高い精度が必要となる。シビアなものでは1μm変わると特性に影響が出るほどだ。ピー・エス・シー株式会社では本社工場の1階に高精度の加工設備を保有し、自社で部品の内製から手掛けている。高い品質を実現するため、設備投資は積極的に行っているという。また組み立てにも細心の注意を払い、コンタミを防ぐためにクリーンベンチ内で作業を行っている。これほど手間をかけて生産していながら、多い機種で月産700個ほどの出荷能力を有するというから驚きだ。​ 

 ​​鉄道、半導体とその採用範囲を広げてきた同社の空気圧サーボが次に目指す業界はどこなのか。同社取締役の佐々木氏は「試験機にも応用できるのではないかと考えています」と語る。摺動部がない空気圧サーボは、同じ動作を長期間繰り返しても内部に摩耗などが発生せず精度が落ちにくい。この特性を活かし、クリープ試験など同じ動作を繰り返す試験機を中心に空気圧サーボの採用を目指すという。このほかにも、​​アニマトロニクス向けの小型空気圧サーボ弁の活用も見込んでいる。空気圧サーボの適用可能性がある業界に積極的にアプローチし、動力源としての空気圧の活用を促進していく「提案型企業」となることが同社の描く理想像だ。​ 

 ​​今後は京都にも生産拠点を開設し、本社工場との2拠点体制とすることで生産能力を拡充していくというピー・エス・シー株式会社。クリーンでサステナブルな動力源である空気を自在に、そして緻密に制御する同社の唯一無二の技術は、社会の課題をこれからも解決していく。​ 

製品情報

  • 直動型空気圧サーボ弁 【静圧軸受による高精密制御】

  • ノズルフラッパ型空気圧サーボ弁 【空気圧で微細制御を実現します】

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