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数ミクロンの被膜で切削工具の耐久性を向上―エリコンジャパンが手がける薄膜コーティング 

数ミクロンの被膜で切削工具の耐久性を向上―エリコンジャパンが手がける薄膜コーティング 

エリコンジャパン株式会社

掲載企業エリコンジャパン株式会社

主要3品目
  • PVDコーティング

  • 精密加工工具・金型向けコーティング

  • 耐摩耗・耐熱・耐凝着対策コーティング

 エリコンバルザースは、スイスに本社を置くエリコングループに属しており、リヒテンシュタイン公国を本拠地に、全世界34か国で薄膜コーティングの装置販売および受託加工を手掛ける。現在世界シェア1位を誇るそのコーティング技術の原点は、第二次世界大戦直後に開発された真空薄膜フィルム技術にある。 

 日本法人であるエリコンジャパン株式会社が設立されたのは1986年(当時の社名は日本バルザース㈱)、当初は薄膜コーティング(物理気相成長 =PVD) 用の装置販売が主力事業であったが、コーティングの需要増大に伴い受託加工にも進出。現在では平塚市の本社工場のみならず国内に5つの工場を有する。 

装置販売と受託加工の両輪で製造業を支える―PVD・CVDコーティングとは 

 エリコンジャパンが手がける薄膜コーティングは主に物理真空蒸着法(PVD) 化学蒸着法(CVD)と呼ばれるものだ。PVDでは約200~500℃、CVDでは約1000℃という高温の真空炉の中に膜の元となる金属合金やガスを投入し、金属の粒子をイオン化させ被膜を形成する。「基材(コーティング材料)によって様々ですが、コーティングによって耐久性が倍程度上がることもあります」と寺原氏は説明する。炭素鋼や合金鋼といった一般的な材質向けのほかに、チタンなどの難削材向け、ダイカスト向けなど基材によって膜の種類も様々だ。 

 切削工具や歯車など、耐久性が求められる製品に表面処理は不可欠だ。「日本の大手切削工具メーカーのほぼすべてに弊社のコーティング装置を納入しています」と寺原氏。コーティングの技術進歩に伴い装置も日々進化を遂げており、現在では多層膜に対応した装置なども販売している。 

 装置の導入が費用面で難しい顧客も受託加工サービスを利用することで同社の持つコーティング技術を手軽に利用することができる。「お試しで工具1本などからご依頼をいただくこともあります」と寺原氏。装置の開発元であるという点を生かし、全世界34か国105カ所の拠点で常に最新かつ同じ品質のコーティングを提供できるというのが同社の最大の強みだ。「弊社のグローバルネットワークによって、例えば愛知の三河地区でコーティングをしても、インドネシアでコーティングしても同じ品質を維持できます」。 

切削工具や歯車の耐久性向上に抜群の効果―「BALINIT®」コーティングと「PrimeGear」 

 エリコンジャパンのPVDコーティング加工の主力のひとつが「BALINIT®コーティング」だ。同シリーズはアルミクロム(AlCrN)ベースとチタン(TiAlN)ベースに大別され、基材や用途、コストに応じて約30種類の膜種を提供する。「例えば乾式で切削を行う工具の場合は耐熱性に優れた膜種とするなど、工具の用途や条件に応じて最適な膜種をご提案します」と寺原氏は説明する。どの膜種を利用すればよいか分からないユーザーに対しても同社は手厚いサポートを提供する。

 さらに同社は歯車メーカー向けに「PrimeGear」という表面処理サービスを展開。これはホブ盤(歯切り盤)の刃を再研磨後にコーティングする際、前処理としてバリ取りや刃先の調整から行うというものだ。これによりコーティングの密着性が高まり、刃物ごとの切削能力のばらつきを減らすことができる。コーティングの受託加工で培った技術を活かし、歯車製造の効率向上にも貢献している。 

 昨年にはBALINIT®コーティングシリーズに「BALINIT® ALCRONA EVO」という新たなバリエーションが登場した。これはコーティングを多層にすることで従来に比べて耐久性を約3割向上させたものだ。エリコンバルザースの創業から80余年、同社はこれからも最先端のコーティング技術で製造業を支え続ける。 

バルザース事業本部 営業本部 ツール事業部

プロダクトマネージャー カッティングツール

寺原 泰治氏

製品情報

  • 鉄金属の加工向け次世代カーボンベースコーティング BALINIT MAYURA

  • ステンレス鋼など高温合金の加工用コーティング BALIQ TISINOSPRO(ティシノスプロ)

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