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「革新的発想」と「最適化」で研削盤の常識を覆す―「限りなきゼロ」を追いかけるナガセインテグレックス

「革新的発想」と「最適化」で研削盤の常識を覆す―「限りなきゼロ」を追いかけるナガセインテグレックス

株式会社ナガセインテグレックス

掲載企業株式会社ナガセインテグレックス

主要3品目
  • 各種成形・平面研削盤

  • 超精密門型研削盤

  • 超2精密微細加工機

超精密研削をすべての人へ―ナノレベルの精度で加工の安定性を実現

 1950年個人創業、1958年に「長瀬鉄工所」として岐阜県で創立された株式会社ナガセインテグレックス。1980年代初頭、海外メーカーとの競合を機に「超精密」マシン開発へと舵を切った同社は、約10年間の基礎研究と20年間の製品開発の後、2000年に当時の業界標準の約10分の1という驚異的な精度を誇る10nm精度の超精密研削盤の開発に成功。2年後の2002年にはさらに精度を1桁向上させ、1nmの分解能を持つ微細加工機の開発を現実のものとした。他を圧倒する精度を誇る同社の超精密研削盤だが、これらは「特定の顧客のニーズに合わせて専用に仕立てる」専用機だったため、生産台数は1-2台/年と限られたものだった。

 そこで2008年に「より多くの人に超精密研削盤を」というコンセプトのもと開発されたのが「SGC-630α」だ。ハイエンド微細加工機で培った静圧案内システムや超精密リニアモータといった要素技術を詰め込んだ同機は、スペック上ではサブミクロン(0.1μm)の精度ながら、実際にはさらに1桁上の10nmの分解能を持つ。

 ナノレベルの精度を誇る同機だが、その性能は決してハイエンド加工のためだけではない。「仕様よりも1桁上のポテンシャルを持つことで、高い位置決め再現性を持つことができます」と常務取締役 新藤氏は説明する。実際には仕様よりも高い分解能を持つことで、何度加工を繰り返してもサブミクロンの精度を維持できる。この加工安定性こそが、ナノレベルの精度が持つ真価である。同社が「最高傑作」と称する同機はこれまでに数百台が出荷され、販売開始から15年以上経つ現在でもその魅力は色褪せない。

最適設計で導入コストを削減―IGTARPデザインの核心

 ナガセインテグレックスは近年「IGTARPデザイン」という設計手法を取り入れている。これは「革新的な発想」「重心最適化」「トポロジー最適化」「高度な解析」「ロバスト最適化」「生産最適化」の頭文字を取ったもので、人間の「発想」とコンピュータの「最適化」を組み合わせた革新的な手法だ。

 この「IGTARPデザイン」を初めて取り入れた小型超精密成形平面研削盤「SGi-520α」(2018年)は、研削精度に直結する動剛性を従来機比300%向上させた。続く「SGDシリーズ(門型研削盤)」では、チャックサイズ2mの中型機から4mの大型機まで全てのラインナップでフロアスペースを約5割以上削減、筐体をほぼ分解せずトレーラーで輸送することが可能になった。これにより現地での再組立や精度調整が不要となり、リードタイムと導入コストの大幅な低減を実現した。筐体をこれほど小型化したにもかかわらず、静剛性と動剛性を従来機比200%向上させ、面粗度は8nmRaを実現、性能面でも他社を圧倒する。これらSGi-520αとSGDシリーズの開発において精密工学会 技術賞を受賞した。

 2022年のJIMTOFで発表され、IGTARPデザイン第6弾となる「SGXシリーズ」の特徴は従来の研削盤の常識を覆す3点支持構造だ。設置面積が従来機比で約半分となった同機の筐体は、100回以上の構造解析を繰り返し実現した。3点支持構造の恩恵は省スペース化だけではない。「足」が3点となったことで作業者の足元スペースが広がり寄り付き性が向上したほか、設置環境から受ける影響も大幅に減少した。従来の高精度研削盤では設置にあたって床の改造や縁切りなど建物に手を加えるケースが多かったが、同機では厚さ40mmの防振パッドを敷くだけで周辺の振動や騒音にほぼ影響を受けることなく安定した加工が可能となった。これにより、あらゆる工場に対し高精度研削盤の導入可能性をもたらした。

脱「最低5年」ー高精度のマシンとAIで目指す新時代の研削加工

 「研削盤を使いこなすには最低5年かかる」と言われるが、人手不足が深刻化する昨今の製造業でこの問題は工場の存続にも関わる深刻なものだ。ナガセインテグレックスは10年以上前からこの課題に様々なソリューションを提案してきた。2015年に発表した「スマートアングルアップ」では、従来人間の手によって行っていた直角出しを自動化した。ワーク側面の傾きを高精度で機上測定し、それに対して直角となるよう上面を斜めに研削を行うというこの仕組みは、ナノレベルの分解能によってもたらされる「高い加工安定性」によって実現したものだ。同社の技術が誇るナノレベルの精度は人手不足の解消にも間接的に寄与する。

 AI時代への対応にも積極的だ。同社はJIMTOF2024で「AI研削盤」を発表した。これは砥石主軸にかかる力を検出するセンサーを組み込んだ「NPXスピンドル」で​​加工​​状態をモニタリング、予め収集した教師データをもとに加工中に加工条件を最適化していくというものだ。「従来では加工がすべて終わってからワークを計測し善し悪しを判断していましたが、このソリューションでは加工中にどれだけの精度を出せているかリアルタイムで把握できるため、手戻りを減らすことができます」と企画室 係長 安澤氏。同社では「加工システム推奨」「加工条件最適化」「熟練者知見示唆」の3つを軸に、今後様々なAI活用ソリューションを展開し研削のスキルレス化を進めていく。

 今後の展開について新藤氏は「φ550mm対応の連続創成歯車研削盤や、φ1200mm対応のロータリー大型マルチ研削盤を開発中です。歯車研削盤は欧州メーカーが強い分野ですが、環境負荷を低減する水溶性クーラントの採用など独自技術で対抗します」と意気込む。

 「限りなきゼロ」を追求するナガセインテグレックス。同社の技術開発に終わりはない。

掲載会社情報

株式会社ナガセインテグレックス

株式会社ナガセインテグレックス

所在地
〒501-2697 岐阜県関市武芸川町跡部1333-1
TEL
0575-46-2323
FAX
0575-46-2325

製品情報

  • 超2精密微細加工機 NIC-74

  • 自由曲面への微細溝入れ加工(同時6軸0.1ナノ制御)

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