業界特集
株式会社三井ハイテック
工作機事業部 営業部長 松井 孝幸 氏 (左)/工作機事業部長 竹井 雅彦 氏 (右)
掲載企業株式会社三井ハイテック
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従業員数
4,864人
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年間売上高
- 1959億円
マザーマシン開発から導き出す超精密加工のDNA
株式会社三井ハイテックは、超精密加工技術を武器に、ICリードフレームやモーターコアの金型・製品を手掛ける開発型ものづくり企業である。現在、売り上げの53%はモーターコア、40%はリードフレームが占める。同社の製品は自動車や航空機、家電などさまざまな業界で使用され、特にEV自動車用モーターコアは大きく成長している。
三井ハイテックは良質な製品を製造するため、自社で金型のみならず、金型を作り上げる工作機械までをも自社開発・製造しているのだ。同社はもともと、金型の製造販売業からスタートし、1950年代には平面研削機を自社開発。その後も金型と工作機械の開発製造を行ってきた。「『品質保証というのは、頭から終わりまでしっかりやる』という会長(故・三井孝昭氏)の思いがあります。それをするためには何をすればいいのか、現場は常にそう考えながら仕事に向かっています」と工作機事業部長の竹井雅彦氏。良質な製品を作るための金型、そしてその金型を作り上げるための工作機械と、ものづくりの全ての工程に実直に向き合ってきたという自負とプライドが、同社には脈々と受け継がれているのだ。
熟練技能を再現した全自動精密6面加工機
三井ハイテックがJIMTOF2024に出展するのは6面加工機だ。これまで熟練作業者に依存していた工程をセンサとロボットを活用することで仕上げ工程の完全自動化を実現した。これにより生産性向上と工程間の移動ロスの削減、安全性の向上といったさまざまな効果が期待できる。パレットチェンジャーも接続可能で、これまで人手をかけなければならなかった精密6面加工を完全自動化することが可能となった。
同製品において、特に同社がこだわったのは、ワークをわずかに揺らした振動で異物を検知する技術だ。従来の技術ではミクロン単位の微細な切粉などは検知することができなかった。ワークが少しでも傾いていては直交精度が保てず、超高精密微細加工においては寸法不良の原因となるためだ。この工程がネックとなり、これまで自動化を行うことができなかったのだ。熟練作業者はワークをテーブルに接地させる際、微細な切粉などがかみこんでいないかどうかを指先の感覚で感じ取る。同社の技術は、熟練作業者の繊細な動作をセンサとロボットにより再現することに成功。さらに微細切粉を完全に除去するための洗浄技術を開発したことにより、「職人の技能を先端技術で実現」したのだ。わずか1~2ミクロンという加工精度を実現する技術を新規開発。労働者の確保が喫緊の課題となっている製造業において、これは大きなブレークスルーとなる。
現在ではワークサイズは100mm角ほどを想定している。対応サイズについて竹井氏は「例えば、これまで取り回しが難しいとされてきたような、より大きくて重量のあるワークのニーズがあるかもしれない。 JIMTOFに来場されるお客様の反応を見ながら、今後の動きを決めていきたい」と話す。「センサ1つ取っても、振動や音、さらに光の透過などさまざまな現象が感知できるようになってきました。今年はセンサの他にもさまざまな基幹技術が数多く出てくるのではないかと考えています。それにより、今までできなかったことができるようになれば、新しい需要も生まれてくるかもしれない。この6面加工機がエポックメーカーになれれば、と期待しています」。このシステムは既存の三井ハイテック製機械にも追加可能だ。
部門を越えた課題解決によりイノベーションを実現する
三井ハイテックでは、専用CAMによって簡単操作で形状加工から精密研削まで行える5軸NC研削盤『MSG-S500-R’』、省スペースなレイアウトに貢献しながらも超精密加工を実現する小型多機能NC研削盤HPR-PCNCF-R’、さらに北米で根強い人気を誇る手動タイプ研削盤MSG-200Mなど、現場のニーズに寄り添った製品展開の幅広さが強みだ。同社では毎月部門間での技術交流会があり、金型の開発と機械の開発を両輪で進めている。「自社内にこれほどまでの規模で加工現場を持っている工作機メーカーは他にないと思います。社内の加工現場としっかりコミュニケーションを取りながらじっくりと機械の開発に取り組める。これが当社の強みです」と竹井氏は胸を張る。しかし社内現場のニーズから生み出だされた機械が、果たして業界全体にマッチするのかまでは分からない。そこでJIMTOFなどの展示会に訪れる多数の来場者の声を聞きながら、より多くの顧客に届けるためのアクションを模索しているのだ。「社是である『世界の人々に役立つ製品をつくる』という言葉が好きですね」と微笑む営業部長 松井孝幸氏の姿には、日本の製造業の明るい未来が見える。