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AIの工具診断や異常検知、CNCで、日本の熟練技術者たちの知恵を後世へ継承せよ

AIの工具診断や異常検知、CNCで、日本の熟練技術者たちの知恵を後世へ継承せよ

三菱電機株式会社
FA システム事業本部 産業メカトロニクス事業部 事業部長 田代 勝 氏

掲載企業三菱電機株式会社

従業員数

14万 9655人(連結)

年間売上高
5兆 36億 940万円(連結)

三菱電機の最新 CNC

 三菱電機株式会社の放電加工機やレーザ加工機、金属3Dプリンターなど全製品のキーコンポーネンツは自社内製である。自社開発により品質を担保したレーザ発振器や数値制御装置(CNC)を自社の機械に組み込めるなど総合電機メーカーとしての強みを存分に発揮する。

 2022年に発表したC N C「M800V/M80Vシリーズ」(以降M8Vシリーズ)は、加工時間短縮と高精度化を両立する「OMR-CC」(最適機械応答軌跡制御)と、優れた切削負荷制御といった特色を有する。高性能なCNCを搭載することで高精度な加工を実現し、特に「M8Vシ リ ー ズ を 搭 載 し た 型 彫 放 電 加工機『SV12P』は半導体チップ製造で活躍します」とFAシステム事業本部 産業メカトロニクス事業部 事業部長の田代勝氏は述べる。

DED金属3Dプリンターで金型補修の高速化

 2022年には、三菱電機が開発した金属3Dプリンター「AZ600」を発売。この製品が採用する指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition:DED)を応用した「ワイヤ・レーザDED方式」は、金属のワイヤを少しずつ溶解させながら積層していく方式である。粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion:PBF)より造形時間は短く、材料ロスも出にくい。また人体への安全性も比較的高く、防爆の観点においても優位である。(金属材料同士の相性にもよるが)異種の金属や既存ワークの上からの造形ができ、肉盛り方向になる金型補修にも適する。「AZ600は特に自動車業界からの引き合いが多く、既に10台ほど納品。今後も海外市場も視野に入れつつ事業展開していく予定です」と田代氏は言う。

PC1 台で工具診断・異常検知を導入

 2017年から三菱電機独自開発のAI技術「Maisart」を展開し、同社加工機にも実装している。それ以前から、製品に搭載することを前提としたAIのコンパクト化、AIの学習高効率化、ビッグデータの分析スピードの高速化といった技術開発に取り組んできた。「高精度化がますます要求される一方、技術伝承や働き手不足への対処も課題となり、勘とコツ頼りの仕事からの脱却が求められる中、MaisartのAI技術がお役に立てると考えています」(田代氏)。

 2024年9月、新たにAI加工・工具診断ツール「NC MachiningAID」をリリースした。AIが加工の異常や工具の適切な交換時期を予知して通知する機能などを提供した。「工作機械を使う現場の方々向けに、導入がなるべく簡便な仕組みを開発しています。PC1台で、AIによる寿命管理システムが扱えます」と田代氏は説明する。

電気使用量削減や粉塵の削減

 電気使用量削減や粉塵の削減といった耐環境というテーマも三菱電機におけるゆるぎない開発コンセプトである。こうした技術で、日本の優秀な技術者たちがこれまで育んだ知恵を後世へ着々と伝えていく。

製品情報

  • 超高精度ワイヤ・形彫放電加工機のフルラインアップ化

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