業界特集
西部電機株式会社
精密機械事業部 副事業部長 兼 生産部長 光安 隆氏
掲載企業西部電機株式会社
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主要3品目
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精密加工向け工作機械
自動倉庫等搬送機械・システム
バルブアクチュエータ・水門等産業機械
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従業員数
535名(連結591名)
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年間売上高
- 284億7800万円
福岡発の大手機械メーカーである西部電機株式会社は、搬送機械と産業機械、精密機械の3本柱で事業を展開する。同社精密機械事業によるワイヤ放電加工機は業界トップクラスの加工精度をうたい、半導体のリードフレームやコネクターなどの精密加工を始めとし、モバイル端末、自動車、光学、航空宇宙といった幅広い業種・分野で活躍する。
独自の自動化技術で顧客作業を劇的に改善
西部電機は1972年に、安川電機と共に世界初となるCNCワイヤ放電加工機を開発。以後も改良や機能拡充に取り組み、2003年には高生産性・高精密ワイヤ放電加工機「Mシリーズ」として刷新した。「当社の精密機械事業は、約20年前には結構苦戦していたが、この14~15年ほどで盛り返した」と精密機械事業部 副事業部長 兼 生産部長の光安 隆氏。この間には、多岐にわたる機種ラインアップの見直しもはかりつつ、同社が強いワイヤ放電加工にフォーカス。中でもプレス順送金型のプレート加工で顧客に高く評価されてきたピッチ精度のさらなる向上に集中した。国内拠点生産にこだわり高精度・高品質のものづくりに取り組んだ。この地道ともいえる努力が実を結んで国内認知が広まり、それがブランドイメージとなって海外にまで波及した。
同社では、昔からプリント基板のスルーホール向け金型における打ち抜き加工の自動化機能の実装に力を入れてきた。そこで培った自動化の知見も西部電機の特色だ。今、特に同社が得意とするのが「ワイヤ線を自動でつなぐ」、断線点供給だ。「HP/UPシリーズ」では、アニール電流で熱を加えて引っ張る動作を繰り返すことで断線点での確実な自動結線が行えるという。顧客の困りごとがきっかけで開発された、同社特許技術の「コア・ステッチ」は、任意の場所で中子を溶着できる。溶着された中子は軽くたたくと取れる。それにより切り落とし工程が大幅削減できるという。「お客さまの現場では、この手作業で悩まされており、100個ぐらいのプレートの作業であれば500分くらいかかっていた。それが自動かつ十数分ほどで終わるようになった。劇的な削減効果だ」(光安氏)という。
ピッチ精度が自慢のSeibuは世界へ
現在の同社海外市場において中国が8割を占め、とりわけ電気自動車(EV)や自動運転関連部品向けが伸びている。モバイル端末関連についてはベトナムやインドが好調だ。「いわゆるチャイナリスクは考慮しており、東南アジアでの新拠点設立も計画している」(光安氏)。
中国と言えば気になるのが、新型コロナ問題の影響であるが、「当社については、苦しまずに済んだ」と光安氏は話す。現地にいる代理店が据え付けや保守、サポートなど一貫して取り組める体制にしていたからだ。このような販売代理店と協調する万全な販売体制が、西部電機のビジネスにおける強みである。
米国についてはEVや半導体関連の需要が大きく、航空分野と医療分野も少しずつ伸び始めている。2024年には兼松ケージーケイとの合弁で米国現地販売代理店であるSeibu America Corporationを設立して売り上げ拡大を狙う。
国内においては、本社工場敷地内にワイヤ放電加工機の新工場を建設中で、2024年9月に竣工予定だ。生産能力は「これまで月産80台であったところ、120台ペースになる見込み」(光安氏)だという。
同社では国内外ともに、EVと半導体に関して引き続き今後の需要拡大に期待しているという。ヨーロッパにおいては今後、医療分野を中心とした需要創出を目指し、精密加工技術のさらなる向上と販売体制の強化も視野に入れる。